ちょちょぷりあん 大掃除編
私の家は……家というか私は二階建てアパートの一室に住んでいるが……今は軽いゴミ屋敷になっている。リビングにプラスチックのゴミ袋のピラミッドになっており、ペットボトルのビル群が床から伸びており、新聞紙や牛乳パック等の壁が出来上がっていた。なんか見覚えがある感じだなと思うことがあったがこれは私の好きなSF映画のワンシーンだと気付くのに一週間かかった。
何故ここまでゴミが増えているか……言い訳ではない。もちろん、この状況が良いわけでもない。ここの自治体のゴミ収集の時間は七時と早く、プラスチックや紙ゴミ等の資源ゴミは更に別の場所にあり、歩いて十分ぐらいのところにある公民館前のゴミ置き場にまで行かないといけない。
うん、なんと面倒なところなんだ。別に同じところでゴミ捨てさせたって良いじゃないか⁉︎ 家賃五万と安く、道後にも近いため、良いとこれ以上の場所はない! と思っていたがゴミ収集のことまでは考えていなかった。諸君も家を探す時はその辺も考慮するべきだと思う。
そもそも、『燃える』ゴミというのはなんだ? ゴミは燃やそうと思ったら燃えるじゃないか一兆度の火球ならゴミなんかすぐ消し飛ぶぞ。それは『燃えない』ゴミにも言えることだ。変な区別の仕方をするものだな……。特に分からないのは『粗大』ゴミだ。大きいだけでこれも『燃える』だろ?
そんなことばかり考えてはゴミを出すことが億劫になっていたためここまでゴミを溜め込んでしまった。これはなんとかしないと友人を呼んでの麻雀が出来ないため今日は大掃除をすることにした。
幸い、ゴミの分別は完璧だったため、もうゴミ置き場に持っていくことだけで良かったが私一人ではこんな量のゴミを捨てることは出来ない。幸い、大家さんに聞くと私の左隣の二○五号室に住む人が手伝ってくれると言うのでその人に頼むことにした。
私は手伝ってくれる人に挨拶をしようと二○五号室のインターホンを押すと部屋にチャイムが響いた。ドアが開いたと思うと強烈な物が見えた。私以上のゴミ屋敷だった。ゴミ袋のピラミッドとかペットボトルのビル群だとかそんなレベルではない、もう洞窟と言って良かった。
えぇ……もしかして、この人のゴミ屋敷を手伝うと勘違いされたのか……と思っていると私の頭上に何か落ちてきた。頭に音と痛みが駆け巡ると更にそれは鈍い金属音を鳴らして、床に転がった。金盥だった。
なんで金盥が……と思って、ふと上を見ると三十センチメートルの藍色のビー玉のような体と下の方に雑草のような足が十本生えている奇妙な姿をしている生命体がいた。『ちょちょぷりあん』だ。何故ここにちょちょぷりあんが……。すると、ちょちょぷりあんからテレパシーが来た。
「さぁ、ゴミ屋敷掃除しようか……」
なんでこいつが偉そうなんだと思ったがここは『お隣さん』ということで『助け合おう』じゃないか。こうして、ちょちょぷりあんと私の大掃除が始まった。時間は午後八時を回っており、明日の朝七時のプラスチックのゴミ収集時間に間に合うように進めることにした。
さて、この部屋も私の部屋と同じ2DKでリビング8帖、洋室6帖、和室6帖だ。リビングにはペットボトルやプラスチックゴミが中心にあり、きちんと仕分けしてあるのが幸いして、外に運ぶだけで良かったが洋室のゴミが酷かった。坊ちゃん団子の容器や何故か焼き鳥の串が多く、燃えるゴミとプラスチックゴミを分かる必要があった。
すると、またちょちょぷりあんからテレパシーが来た。
「明日、坊ちゃん団子と焼き鳥のぼんじり奢ってや」
……なんでこいつ偉そうなんだ? なんか勘違いしてないか? というかこれもしかして全部焼き鳥のぼんじりか?
更にちょちょぷりあんからテレパシーが来た。
「和室にはゴミないから開けんでえぇで、開けたら金盥や」
……面倒だから開けないよ、かくして、二人の大掃除は深夜三時まで続いた。ちょちょぷりあんではゴミ袋を持つことが難しいので私が持っていくことにした。一往復で三袋ぐらい持っていき、捨てていった。
全て持っていくと既に七時を過ぎていた。なんとか終わった……。さて、戦友のちょちょぷりあんはどうしてるかなと部屋に入るとちょちょぷりあんはいなかった。風呂かなと思って、浴室を見たがいない。トイレにもいない。洋室にもいなかった。もしやと思い和室を開くとそこには布団と仏壇があった。仏壇にはちょちょぷりあんの写真と線香をあげた跡があった。そうか……そうことだったんだな……。
私は近くのコンビニで坊ちゃん団子を買い、仏壇に坊ちゃん団子を供え、線香をあげた。小さい鐘ーりんだったり、磬とも言うが宗派や形等によって違うためここでは鐘とするーを鳴らすと頭に音と痛みが駆け巡った。
ふと、上を見るとちょちょぷりあんがいた。更にすぐにテレパシーが来た。
「いや、勝手に殺すな、和室は開けるな言うたやろ」
……私の早とちりだったか。そう思い、坊ちゃん団子の真ん中を食べてからちょちょぷりあんに渡してやるとまた金盥が私の頭上に落ちてきた。