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勇者ならば

第六路

~脱走~


「でも……。」


「でもでも言ってる場合かっ!

とにかく俺に付いてこい。」


迷ってる暇はない。

それにやつらには段々腹が立ってきた。

これだけ良くしてもらったうえで気が引けるがあいつらがやってることは絶対に間違ってる。

なんとしてもティナは助ける。

とはいえ持っている物は兵士から奪い取った防人服と槍一本。

そしてレベルは……5。

対して相手は数十名、おそらく皆、武装済み。

この状況をどう打破すればいんだろうか。


「……どう考えても無理だろーー。

こんなもんE○ドリンクいくら有っても足りねーよ。」


「吸気口……。」


少女が言った。


「吸気口?」


見ると少女が閉じ込められていた檻の中には空気を地下に送るための大人一人分がぎりぎり通れるくらいの吸気口があった。

しかし脱走防止の為の金網が取り付けられていた。


「無理だ。

俺にはあの吸気口を壊せるほどの怪力はないんだ。槍で壊すのも流石に無理がある。」


「大丈夫……任せて。」


するとティナは金網をボ○・サップ顔負けの怪力でいとも容易くはずして見せた。

見た目とのギャップがありすぎるだろ。

でもこれで突破口は開けた。


「よしでかした、行くぞティナ!」


俺はティナに優しく手を差し伸べた。

ティナはなにも言わずに俺の手を握り立ち上がった。

まずは俺が吸気口に入り込む。

そのあとティナの手を引っ張りティナを吸気口の中に引き上げる。

吸気口の中は真っ暗で何も見えないが這ってとにかく前を目指す。

しばらくすると月明かりが射し込む。

幸い、外側には金網はないようだった。

そしてなんとか俺たちは外へ出ることができた。

出た先はどうやらこの小屋の裏に出たようだった。


「このままあの先の森の中を抜けてこの次の村に行こう。」


仮に追いかけてきても領土権があるから簡単には村に入れないだろう。

今夜は森でやり過ごして早朝に森を出て次の村に向かおうと俺は考えた。


「ティナ、来いっ!」


約束通り俺は足を怪我したティナをおぶって森に向かって走りだした。

小屋の反対側では村長が叫んでいる。


「旅人よ。

今から突入するぞ。

もう命の保証は出来んからのう。」


「……。」


「突撃じゃーーー。」


俺たちはなんとか森の中に逃げたがいくら子供とはいえ女の子一人おぶって走り続けるのは限界がある。

追いつかれるのも時間の問題だ。

どこか隠れられる場所を見つけなきゃならない。


「ティナ、この辺りの地形は分かるか?」


ティナは首を横に振る。


向こう側では何やら叫び声が聞こえてくる。


「村長、逃げられましたー。」


「何?!さては森の中に逃げ込みよったな?

森の中を捜索するのじゃー。」


「了解。」


やはりばれているようだ。


「クソっ!とにかく奥に逃げるしかない。」


その時、ティナが俺に語りかける。


「名前……名前は?」


「名前?俺の名前か?

俺は文哉だ。神童時文哉。」


「文哉……。」


そう呟くとティナはにっこり笑った。

ようやく笑ってくれたのは嬉しいが今はそれどころではない。


「ティナ、今はそんなこと話てる場合じゃ。」


すると、ティナは立ち上がり奴等が追ってきている方に血が滲んでいる足で歩きだした。


「なにやってるんだティナ?!。」


「もう十分だよ。

ありがとう……文哉。」


ティナは泣きそうな顔で俺に笑ってみせた。

そのまま足を引きずりながら歩いて行く。


「……バカヤロー!」


ティナの足が止まる。

俺はティナに駆け寄った。


「いいかティナ、よく聞けよ。

お前は強い子だ。

俺なんかよりよっぽど強い子だ。

辛くても自分より人のことを考えられる優しい子だ。

でもなティナ、お前はまず一番に自分のことを考えろ。

俺はお前のことを助けたい。

だから俺の為に死んだら俺は凄く悲しい。

お前のことを大切に思ってくれてる奴の為に、お前が大切にしたい奴の為に、自分のことを一番大切にして欲しいんだ。」


「でも……私といたら……皆不幸になるよ……竜の子は悪い子だから、文哉も不幸になっちゃうよ。

……村の村長さんが言ってたよ……お前は生きてたら皆迷惑するんだって。

文哉は私に傷薬をくれたよ。文哉はいい人だよ。……迷惑かけたくないよ?」


ティナは涙ながらに俺に言う。


「迷惑なんかじゃない。悪い子なんかじゃない。

お前は人に迷惑かけるために生まれてきたんじゃない。

お前は人を幸せに出来る。お前も竜の一族ってやつも、幸せになっていんだよっ!

俺にはティナが必要だ。

だから、生きろ!」


ティナはぼろぼろ涙を流しながら俺に抱きつく。

人間の小さな女の子のように、屈託のない顔で。

その時だった。


「あそこに居たぞーーー。」


めらめらと暗闇の森に紛れて奴等の炬が光っている。


「ティナ、逃げるぞ。」


「……うん。」


俺が立ち上がった時。


パンッパンッ


銃声の音。

乾いた音と伴に俺の腹に激痛が走る。


「嘘だろ?!あいつら……銃なんか……持ってやがったのかよ。」


俺はそのまま倒れて込んでしまった。


「文哉っ!」


ティナが涙目で俺に駆け寄る。


「大丈夫だ……ティナ……走れるか?」


「私は大丈夫だよ、でも文哉がっ!」


「いいからっ!走るぞ。」


「……分かった。」


俺とティナは必死に走った。

走っていると洞窟らしき物が見えた。


「あそこだ、ティナ走れっ。」


俺たちはその洞窟に逃げ込んだ。

追手に見つからなければいいが。


「あの洞窟に逃げたぞー。」


「待てぃ。

あの洞窟は……退却するぞい。」


「いや、しかし。」


「退却じゃっ。

どのみち奴等は助かるまい。」


「はぁ……。」


どうやら敵は追ってはこないようだ。

俺たちはなんとか逃げ延びたらしい。


「でも手当てしねーと明日には冷たくなってんなこりゃ。」


「文哉、死んだら嫌だよ。」


「大丈夫……とも言えないな。

けど死にはしない。」


ザザッ


俺たちが洞窟の入り口の辺りで休んでいると洞窟の奥から物音がしてきた。


「なんだ?

こんな時に熊とかじゃないだろうな。

ティナ、離れるなよ。」


「うん。」


その音はこちら側に近付いてくる。

その嫌な予感は的中した。

奥から現れたのは。


グオーーーーグルル。


熊に一本の角が生えている化け物。

魔獣と呼ばれる類いだろう。

熊の化け物は住みかに入った侵入者(俺たち)にかなり苛立っている。

もはやここまでか。

せめてティナだけは逃がさなければ。


グオーーーー。


熊の魔獣は巨大な爪で襲い掛かってきた。


「文哉ーーー。」


「ティナーーー」


二人抱きしめ合って目を閉じる。


グギァグル~~~。


ズドーン


「なんだ?」


ゆっくり目を開けると魔獣は倒れている。

頭には矢が刺さっている。


「文哉?」


「どうなってんだ?」


「おいっ。」


俺たちの後ろから声が聞こえた。


「そこは今日から俺たちの住みかだ。

お前らは出て行け。」


後ろを振り返る。

そこには見た目は猪のような人間?の集団がいた。

本当に俺は無事明日の朝を迎えられるのだろうか。

























ということで第六路無事書き終わりました。

文哉のティナに対する言葉は本当にいい言葉だと個人的には思います。

というかティナがいい子過ぎます。

次回も新キャラ登場です。名前ちゃんとあります。

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