少女
第四路
~出会い~
ソウレン村
「ここだな。
そう……だよな。
食わなきゃ生きていけないんだからこれは生きるためには必要なことなんだよ。
別に悪いことでもなんでもない。」
俺は多少の罪悪感を捨て去れないままソウレン村の入り口までやってきた。
入り口の前には門番らしき男が二人立っていた。
「あの~すみません。この村に入りたいんですがあ。」
「なんだ、見かけない顔だな。
商人って柄でもないよな。
この村になんのようだ?」
門番のうちの一人が俺に問う。
「いや、俺は旅をしてる者なんだこの村で休息をとりたくて。」
「そうか、なら銅貨10枚だな。」
「ええっ!金取るの?」
「なんだぁ、まさかただで入る気だったのかぁ?」
門番の一人は高圧的な態度で俺に話してくる。
「いや、その今はお金を持ってなくて。」
「お前本当にただの旅人か?」
「ヤバイ!ばれたか。」
「はっはっはあ、旅人で一文無し?
こりゃ傑作だな。」
もう一人の門番が口を開いた。
「まあいいよ。
通りなよ。
一文無しの旅人さん。」
「おいっ。」
「いいじゃないか。
こんなみすぼらし、武器すら持ってないやつに何ができるんだよ。」
「それはそうだが。」
「悪いな兄ちゃん、勇者様が魔物を討伐してからというもの人間の姿に化けて人間の村に入り込み悪事を働く魔物どももいてな。
一応の警戒はしなくちゃならないんだ。」
「なら、入れてくださるんですか?!」
「ああ。
ただし、村長に挨拶には行ってくれよ。
それがこの村のしきたりなんでな。」
「はい、ありがとうございますっ。」
こうして俺はなんなく村に入ることに成功したのだった。
なんて優しいんだろうか。
やっぱり人間が正義だよなあ。
俺は改めてやはり人間側の勇者になりたいと思った。
村長の家
「ごめんくださーい。」
「おーあんたが噂の一文無しの旅人さんかい。
話は門番の二人から聞いているよ。」
村長はいかにもという頭、つまりはあれだ、リー○21をした方がいい頭に、長く伸びた顎髭が特徴的な村長だ。
「まあ、一文無しなことに違いはないんですけどね……
これには色々と事情があるし。」
「ふぉっふぉ。
まあ旅人には色々あるでな。
わしの名はハーゲルじゃ。
よろしくな。」
「ハーゲルってかもうハゲてるけど……。」
と俺は心の中で言った。
「ここは田舎の村故、日が暮れるのも早い。
今日はここに泊まっていきなさい。」
「でも一銭も持ってなくてですね。」
「宿屋に無料で泊めてもらえるよう頼んでおくよ。」
「ええ!本当ですか?!」
「それに飯なら丁度いいタイミングじゃわい。
実は今宵は宴があるのじゃよ。」
「じゃあ食事も。」
「宴にはパーティー用の豪華な食事が用意されとる故、食べ放題じゃよ。
お主も宴に参加すればええ。」
「やったーー。
ところで宴ってなんの?まあ……いいか。」
「それから旅人よ、これを持っていくとええ。
塗るタイプの傷薬じゃ。
旅の道中にはぐれに襲われた時にでも使うとええ。」
そう言って村長は俺に傷薬を渡した。
宿まで用意してもらっておまけに傷薬まで。
至れり尽くせりだ。
俺の頭の中に、盗みを働こうなどという考えはとっくになくなっていた。
それどころか、こんな優しい人間たちを酷い目に遭わせた魔王派に怒りすら覚えていた。
宿屋
「あーあんたが噂の。
村長から聞いてるぜえ、これも何かの縁だ。
今日は泊まっていきな。」
ああ、何て優しい村なんだろうか。
「ありがとうございます。」
俺はそのまま部屋へ直行し、昨日の疲れもあってかすぐに眠ってしまった。
数時間後
ヒュ~ドカーン。
俺は大きな物音で目を覚ました。
「なんだ?」
窓越しに外を見ると、外には盛大に花火が打ち上がっていた。
「そうか、そう言えば今日は宴だって行ってたなあ。
はぁっ!飯だ飯ー。」
俺は早く飯にありつくため、駆け足で部屋を出て花火の打ち上がっている方へと向かった。
宴会場
「おおー、やっと来たかあ旅人。」
話しかけてくれたのは俺を快く通してくれた門番のうちの一人だった。
「なにしてたんだよお、遅えぞ。」
「すみません、ついつい寝てしまって。」
「相当疲れてたんだな。
ところでお前の名前まだ聞いてなかったな。」
「神童時文哉です。」
「神童時?文哉?
聞き馴染みのない名前だなあ。
異国の出身か?」
「まあ、そうですね。」
魔王派なことがばれれば良好な今の関係が台無しだ。
というか今の俺は完全に人間派だからね。
「なら異国のお前に言っておいてやろう。
この村も然り、ここら一帯の村は全て異世界からやって来た勇者様の一人、レーギャン様のおかげで魔物どもから守られてるんだぜ?
十三人の勇者様についてはさすがに知ってるだろ。」
「なんとなくは。」
「しかし勇者様に守られてない国は可哀想だよなあ。」
「十三の国以外にもまだ国ってあるんですか?!」
「ああ、勇者様が守っている国がこの世界の中心部なだけで他にも国は幾つかあるさ。
てか、お前だって異国の出身なんだろうが。」
「あーそうでしたそうでした。
なるほど、ヘルエクスもそのうちの一つなのか。」
「なんか言ったか?」
「いえ、なんでもないです。」
「勇者様に守られてない国は自衛で守るしかないからなあ。
魔王派の残党の奴等、どこに息を潜めてやがるのかねえ。」
「本当に……ねえ。」
俺は一瞬居場所を言ってあげたくなる気持ちになったが、依頼主の願いを叶えなければ帰れない。
依頼主が死んだらもともこもない。
悲しき宿命だ。
「まあ、それはそれとして。
お前酒はいける口か?」
「マジですか!飲んでいいんですか?」
俺は大学生で二十歳。
酒は飲めるし好きな方だ。
「おうよ。
今宵は宴だからなあ!」
そして俺はビール?なのかは分からないがビールのような酒をいただいた。
「かあー、ありがてぇー。
きんっきんに冷えてやがる。」
味もビールそっくりだった。
そして俺は、飯にビールのような物にとたらふく食らった。
「ところで、宴ってなんの宴なんですか?」
「そうか、異国のやつは知らないかもなあ。
それはだなあ。」
その時、酒のせいで突如猛烈な尿意に襲われた。
「すみませんっ、トイレー。」
「あ、トイレか。
トイレならあそこを右に曲がってその先を左。
そしてそのまま真っ直ぐ言って突き当たりを右に、そしてそこを左に曲がって行くとあるぞ。」
「どんだけ遠いんだよっ。
自分で探すからいいですよ。」
そして俺はそのまま走ったが……迷った。
行き着いた先に小さな小屋のような物があった。
トイレがあるかも知れないと俺はそのドアを開け中に入った。
しかしそこはトイレではなくなにやら倉庫のような場所で地下に続く階段が見えた。
「もしかしたらこの下にトイレがあるかもっ!」
俺はその地下に続く階段を下った。
下る道中の通路にはところどころ炬の灯りが灯っていた。
俺はなんとか迫る尿意に耐えながら地下についた。
そこには。
「なんだこれ?
牢屋が並んでる。
地下牢……なのか?こんな田舎に地下牢なんて作る必要あるのか?」
その空間には両サイドに牢屋が幾つか作られてある部屋だった。
不思議に思いながらもなんとなく俺は一番奥まで足を進めた。
一番奥の場所には幾つかある牢屋の中でもかなり厳重な牢屋があった。
今までの牢屋には誰も入っていなかったが、そこには謎の少女が入っていた。
その子の容姿は銀髪に赤い瞳という俺の世界では見たこともない容姿だった。
「なんで?こんな小さな女の子が……こんなところに閉じ込められてるんだ。」
その時、階段を下る足音が聴こえてきた。
というこで第四路でした。
やっとヒロインが顔出し程度に登場です。
しかし筆者的にはやっと物語が動いてきたなという感じです。
次回はヒロインが主役回です。
にしてもヒロインがまさか四回目にしてやっと主人公と出会うとは……