4 魂の価値を
「くそっ、青3号みたいなことを言いやがって!」
と、は言え出来ないと進まなそうだ。
考えず、感じる、考えず、感じる──。
「ん? んんっ!?」
な、何か見える? いや見えると言うか……。
「これは……数字? んー、きゅ、9、か? 95──の、9、5……」
「ふむふむ、君は数字で見えるタイプか」
つまりこれが『ボーナスポイント』とやらか。
「95/95……、うん、全然わからん」
魂の量が数値化されたのはありがたいが、一人当たりの総量がまったくわからん。一体、どんだけ振れば良いんだ?
「ちなみ一人当たりの魂の数値は、いったいどれくらいなんだ?」
「──、君のとこにあるのが95だったよね? と、いうことは……。君の世界の一般平凡な高校生で4から7ってところかなあ」
最大で7としよう。今、自分と合わせて五人分……、平均基本値19っ!?
「約2,5倍以上もあるじゃないか!」
「だからボーナスって言ったじゃないか。どうだい? 少しはボクのありがたみがわかったんじゃないかい?」
数値の高さが何を現しているのかはわからない。だが、ボーナスと言うくらいだ、良いことがあるはず! たぶん! たぶんね!
「数値に出たならやりやすいでしょ? その虎っ娘にどれだけの魂を注ぐかは君次第さ」
「ちなみに、同い年の最大級はどれくらいなんだ?」
折角だから聞いておこう。分け与える指針は多ければ良い。
ヤツは腕を組んで考えつつ答えてくる。
「うーん、君と同い年で最大だと……、まあ38……位かなあ」
ダメだ余計わからなくなった。いきなり5倍とか、数値のルールがまったくわからん。38を5倍で190、ボーナスもらっても半分って。
「どんな生まれ方したらそんなチート数値になるんだよ!」
「……生まれ方には殆ど関係が無いかな。まだ、意識すらないからね。まあ、強いて言うなら──」
ヤツはニヤリと笑いながらポツリと呟いた。
「試練さ」
「──試練?」
そう言えば、ここに来る前にも言っていたな。
『新たな試練と共に──』と。
「生きるとは選択である。生きとし生きるものが尊くも容易く、しかし、難しくも軽んじてすらいること。そのすべてに試練が重なる」
ヤツの琴線に触れたのか恍惚とした笑みすらこぼし、テンションが上がっていく。
「嗚呼、素晴らしきかな試練。多くの不条理に神の仕業と嘆いては、更なる輝きをもって挑みゆく輝き。全てのものに与えられる試練は、大凡全てがランダムに未計画に不条理に、だが、それ故にその進む姿が新たな魂への選択であり、全なる1たるボクが、ボクたちが求めるのは結果ではなく、それにより複雑化していく多種多様な生命の在りよう。運命? 未来? そんなものボクらが知る訳ない。そんなつまらない事象、存在するならボクらに感情なんて産まれやしない」
なんか、聴くだけでもヤバい感じだ。と、言うか、薄々は感じて──、いや、ガッツリ思ってたけど、やっぱりコイツ、神様的なアレなんだろうな。テンション上がりすぎたのか、まだ何やら喋り続けているが、もはやこっちの存在すら忘れてしまっているようだ。
「──だからこそ、君らのみならず全てに関わりたい。そのうち殆どが低レベルな魂のまま天寿をまっとうするほどに世界は丸く、そして流されるようになった。なってしまった……」
どうやら落ち着いてきたのか、ゆっくりとこちらを見つめて話し始めた。
「だからこそ、新たな君の人生を観戦させてもらうよ。魂の数値、わかりやすく言うならレベルだと考えれば良い」
腕を組み、立派な双丘を乗せるように腕を組み、こちらの返事を待つ。
「レベル、か。モンスターを倒して経験値貯めて上がるアレ……、とはまた違うんだろ?」
平和な日本でレベル7に上がった魂を持つ同級生は殺人者、と言うのは正直キツイ。ならば、レベル38まで上げた奴はテロリストのエースかもしれなくなる。動物でも良いならば食肉製造業や牧場、漁師など、最早無限1UPの領域で経験値を貯めている者がいるはず。
つまり、経験値はそこには無い。
『選択』たぶんヤツが言っていたそれが経験とレベルの正体。そして『結果ではなく……』と、言う様に選択したことによるものではなく、『流されず』『選択したこと』こそが魂に与えられる貴重な経験値。そして、選択に至るまでの問いこそが『試練』である、と、いうことなのだろう。
「なら、数値が高ければ高いほど良いのは自明の理。とりあえず、この娘には『25』与えることにするよ」
「へえ、均等なら19になるのに、何故高めなんだい?」
不思議そうに、だが嬉しそうにヤツは問う。
とは言え、あまり深く考えてはいない。
「創った順番にはそれなりの上位制を与えたい。そして、数値が上変動のみなら、まだまだ自分のレベルを上げる機会はある。いや、必ず上がるはずさ」
「ふーん。どうしてだい?」
言うまでもなく解っているのだろう。ニヤついた顔で先を促す。
思わず顔が弛むのを止められず、答えてやった。
「耐えられない程の試練が迫る、異世界なんだろ?」
聞いた言葉に破顔一笑し、腕組み姿から、くるりと回ってこちらを向くと、ビシッと音が鳴りそうな位に指を差し言った。
「素晴らしい! まったくその通りだ! そこまでボクに言い切ったんだ。魅せてくれなきゃ恨んでしまうよ?」
腕を回し、首を左右に揺らしてストレッチをしてから『虎っ娘』を正面に見据え、両頬を叩いて気合いを入れた。
「さてっ! 待たせたなレディー? 一緒にこの世界を遊び回ってもらおうか!」