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異世界転生太平記  作者: クマはんたー
一章
24/32

24 戦後処理は速やかに

 不穏な話が出るなか、サシャさんは顎に手をやり考えるように首を捻り呟いた。


「戦の準備……、アテは聞いて無いス」

「……そうか。まあ、戦なんてもの準備しているならヒャウ様がふらふらしてる時点でおかしいよな。なあ、おっさん」

「へ、へえ! なんでしょうか!?」


 びくりとオレに反応するおっさん。まあ、刀をまだ抜いてるし仕方がない。

 気にせず聞くことにしよう。


「ちなみに、いつ頃から徴収ははじまったんだ?」

「えと、ひい、ふう……。かれこれ30回は陽を迎えたかと」


 日を迎えた? ああ、30回朝が来たってことか! つまり、約1ヶ月位か。つまり最低でも5回は来て……、あれ?


「明日は徴収の日じゃないのか?」


 ふと、思った疑問。

 

「へっ? 明日?」


 間抜けな声を出したおっさん。それにあわせるかの様にまわりがガヤガヤし始めた。

 明日も来るのか? とか、今からじゃ間に合わないとか、不穏としか思えない言葉が飛び交っている。


「サシャさん、この人たちの村って……」

「恐らく、竹前村ちくぜんむらの人たちっス。備蓄するのが仕事だから、何度かアテの村から収穫物の移送で行ったことがあるっス」


 ふむ、サシャさんは行ったことがあると。

 では、聞こう。


「こっからどれくらい?」


 すると、ふむぅ、と声を漏らして顎に手をかけ、応えた。


「たぶん、2日……、いや、3日はかかるっスかね」

「ああ! 村には女子供か、老人しかいねぇ!」


 途端に騒ぎだすおっさんたち。

 これあれか?


「ここまでが、『あいつ』の計画ってことか。それなら戦も……」


 高ノ宮館の主が戦闘狂で狙ったこと?

 いや、相手にわざと狙わせたか?

 情報が足らないし、そもそも盛大に巻き込まれてるのも解せぬ。と、は言え、家にも愛着あるし……。ともかく、先ずは村人か。


「おっさん。慌ててるところ悪いんだけど……」

「えっ? へえ、なんでしょう?」

「徴収物は、薪とかもオッケー?」

「へえ、おっけいはわからんですが、薪なども徴収の対象です」


 オレの言葉におっさんは訝しげに首を傾げつつ、肯定した。

 はあ、ため息が止まらない。

 だが、致し方あるまい。


「斬った木を、今すぐ薪にするから急いで持って帰れ。ヒャウ様もいないし、徴収も来るんだからそれしかないだろ?」


 巻き込まれて、そんなトラブルだらけの村まで行きたくない。さっさと工作クラフトワークでやっちまおう。


「それじゃ、すぐに用意するから、あっちの子供たちのところに全員集めておいて。サシャさん誘導よろしく」

「はいっス。全員こっち来るっス」


 サシャさんの誘導でわらわらと動く集団。

 皆一縷に不安な様子でこちらを一瞥してから離れていく。

 ある程度離れたし、はじめますか!

 倒れた木を次々に薪へと変換。一部は背負子などに変える。落ちた木の実は護衛二人組によると食えるらしいので、後で集めよう。


工作クラフトワーク発動っと」


 次々に薪へと変えつつ、更に一部を背負子に変える。

 ……疲れるってほどでもないが、繰り返しの作業が続くと飽きるな。正直もう面倒臭い。

 そんなオレのストレスを知ってか知らないでか、陽にその体を反射させる様にキラキラしたダイナが駆けてきた。


「お疲れ様です、はじめ様! 何かお手伝いすることはございますか?」


 しゃがんで工作クラフトワークしていたオレに、前屈みに問うてくる。両手を膝に乗せ、心配するような表情で見つめる可愛い虎っ娘。

 何より、両方の二の腕の間から見えるそれは、オレのハートを掴んで離さない!

 眼福、眼福。


「ダイナ……、ありがとう!」


 思わずサムズアップ。


「い、いえっ! お忙しいはじめ様のお手伝いすることは、当たり前のことなのでっ!」


 ああ、そうじゃない、そうじゃないんだぁ!

 真面目なダイナの視線がイタイ!

 不純な感謝ですいません……、でもついつい視ちゃう。

 だってオトコノコだもん!


「と、馬鹿なこと考えてないで、さっさとやるか! ダイナ、足が速い順で村人並ばせて、そこの薪の塊持たせて帰らせて。──最悪怪我人と子供らは面倒みるしかないか」


 この辺りの治安とか、最低限村人でも知っていると言った常識を得るにも丁度良いだろう。

 ダイナに指示を与えると、ものの数分で列が出来た。さて、さっさと物資を持ってお帰り願おう。


「はい、どんどん持って行って! 後ろの方は、ただ待ってないで足元の木の実やら茸やらを拾って、薪を受けとる前に、ここにある籠に入れて下さーい」


 面倒事は帰せるし、食糧確保も楽。一石二鳥だ!

 

「はーい! ちゃっちゃかやってくださいねえ! 帰るの間に合わなくなっちゃいますよー! さて、ひいふうみー、そろそろ終わりか。それじゃあ──」


 煽る様に次々に持っていかせ、ほぼほぼ全員が薪を背負える分が出来たのを確認。

 残った木で更に底のある筒と、その蓋を次々に製作。小さいのでパシパシ完成していく。


「はい、じゃあ次はこれを持って井戸で水を積めたら村に帰ってくださーい! 最後の人は薪じゃなくて、こっちの籠をもってくださーい!」


 作ったのは水筒。水と食用木の実があれば大丈夫だろう。


「凄いっス! 襲われたのに至れり尽くせりス!」

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