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異世界転生太平記  作者: クマはんたー
一章
12/32

12 ダイナさん覚醒す


22/30


守護ガーディアン

家事ハウスワーク


 あっ、3上がって、8も減ってる。

 これ、アレだな、クリエに報告だな。


「クリエ、ダイナさんスキル2つも獲得してる」

「うっそ! マジで!」

「ええっ! ワタシにスキルが!?」


 怯えていたり、ワクワクしたりしながら奥を見ていた2人は、オレの言葉にこっちを見るだけには留まらず、凄い勢いで近づいてきた。


「ワタ、ワタシに、スキルがぁっ? スキルがぁっ?」

「なに、なに、なに! 何のスキル! どんなスキル! なんてスキルっ!」

「うん、取り敢えず落ち着こう。てか、落ち着け」


 にじりよる様に近づく2人が怖い。

 取り敢えず皆でドア付近のテーブルまで移動し、着席してからオレはダイナに説明を始めた。


「ダイナに付いたスキルは『守護ガーディアン』って言うのと、『家事ハウスワーク』の2つだ。オレが与えた魂も総量は何故か増えてるけど、スキル取得のせいか、元より少し減ってる」


 家事ハウスワークはそのままの内容と思われるが、守護ガーディアンは?


家事ハウスワークは家事の種類関係なく一通り出来るってスキルじゃないかな。記憶はあっても知識の無いダイナちゃんが異世界の食べ物で、そもそもガスコンロすらない台所で前にいた世界と遜色無い料理が作れたのはスキルの能力だと思う。掃除洗濯なんかもそつなくこなすんじゃないかな」

「ああ、そう言えば塩焼きとか味噌汁とか……、違和感なく食べちゃったけど、調味料は結構あるのか?」

「あれ? そう言えば調味料は普通にありました。塩に砂糖に味の素」

「味の素!?」


 今更ながらに不思議がるダイナ、オレはクリエと顔を合わせ、互いに首を捻りつつ台所へと向かうことにした。


  ───────────────────


 さて、問題の台所に着いた。何て言うか、土間? って言うんだったか。時代劇でしか見ないような景色だ。

 とてもじゃないが、味の素どころか塩や砂糖すら怪しく感じる。

 

「あの、ダイナさん。マジで味の素があるの?」


 しかし、オレに問われたダイナは不思議そうな顔をして調理台? と思われる平らな場所に手を伸ばしてこちらを向いた。


「これですが?」


 手には馴染みのある味の素、パンダバージョン。


「待て、今何処から出した?」


 首を傾げながら、また不思議そうな顔をして台に手を伸ばして持ちかえる動作をしたあと振り返ると。


「そこにだいたいの調味料は並んでますけど……」


 今度は別の、白い粉と小匙の入った四角いケースを持っていた。


 怪訝な様子のダイナと、ワクワクが止まらないクリエ。オレはゆっくりとダイナに現状を伝えねばならない。


「ダイナが手に持つまで、まったく見えなかった。てか、味の素は最早見えない」

「……えっ? あはは、そんな、はじめ様。あんなに堂々と置いてあるのに見えないとか……」


 何かの冗談だとでも思ったのか、苦笑いで返すダイナ。

 うーん、どう説明をするべきか。

 まったくもって難しい。ダイナからすれば、見えないのがおかしい状況なのだろう。


 そんな中、今まで黙っていたクリエに気付いて横を見ると、頬を紅潮させ爛々と輝かせながらも妙に潤んでいる瞳をしていた。

 にへらと口がだらしない笑みに歪み、息も荒く興奮状態と言えるだろう。

 美少女でこのような表情なら、どこぞの大人のマンガ? と聞きたくなるかと思っていたが、実際に見ると、ただただドン引き、完全な変態である。


「やばい、やばいよ、はじめちゃん! こんなスキル見たことも聞いたこともない!」


 そんな言葉を放つと、クリエは辛抱たまらなくなったのか、つかつかと早歩きでダイナが調味料があると言っていた場所に近付くと、台に触れるか触れないかのギリギリを、音が出そうな勢いで真一文字に腕を振った。


「クリエ様っ! なに……を?」


 オレから見れば何も無い空間に腕を振っただけに見えたのだが、ダイナからは違うようで、空間を凝視し、驚く。

 そこへすかさずクリエはダイナへと食いついた。


「ダイナちゃん! どう? どうなった? 塩は! 砂糖は!! 味の素はっ!!」


 クリエの言葉にダイナはもう一度台を見つめ、ゆっくりと応える。


「……クリエ様の手が間違いなく当たった筈ですが、まったく動いていません」

「うんうん、そうなるかい。とは言え物理法則の通じないボクでは充分とは言えない。はじめちゃん、今ボクがやったことと同じことをしてくれないかい?」


 平静さが戻ったように見せかけて、まったく戻ってない。ダイナにバレない様に、急いでこちらに振りかえるが、その表情は相変わらず酷いものだった。

 しかし、検証は大事だ。

 オレはダイナの横に行き、問う。


「まあ、まったく見えないのはクリエと同じなんだが、この辺りにあるってことで良いのか?」


 ダイナは一つだけ頷いて台を凝視した。

 では、やってみますか。


 オレは肩をぐるりと回し、台の高さに平行になるように腕を合わせ、クリエとは違い、ゆっくりと手を、何度か振ってみた。


 まあ、予想通り何にも無い。あると想定して掴んでみたりもしたが、まったく掴めない。


 ならばこれはダイナのスキルによるものだ。

 スキル『家事ハウスワーク』恐るべし。

 待てよ? 調味料だけか?


「ダイナ、ちなみにオレたち二人には時代劇の土間にしか見えないんだが、ダイナにはどう見えてる?」


 ダイナはオレの言葉に更に驚くと、訝しげに回りを見渡し、自信無さげにポツリと呟いた。


「そこそこのシステムキッチンに見えています……」


 異世界にシステムキッチンは違和感があるが、『そのレベルの文明ではない』と現状では証明することが出来ない。

 三人で内覧してたとき、誰も指摘しなかったしな。

 それゆえにダイナは違和感がわかなかった?


「ワタシも最初は土間にしか見えなかったのですが、お二人ともこちらを見ても特に気にしている様子もありませんでしたので、てっきりはじめ様が『工作クラフトワーク』で拵えたものかと……」


 ああ、そう来たか。


「うん、最早工作じゃなくてリフォームだね。それは流石に無理かなぁ……、あれ? 無理だよな?」


 あれ? 部分部分で少しずつやればイケるか?

 小屋自体のリフォーム……、粗方見て、欲しいものはあるし、試しにやってみるか。


 その後、台所には『見えない』ガスコンロにオーブンレンジ、食器に冷蔵庫まであるようだ。

 試しに器に入れた水を冷凍庫に入れてもらったが、オレから見ればダイナが木棚に仕舞っている様にしか見えないから不思議だ。


 台所見学後、クリエの部屋についての説明会としたかったが、夜もふけて眠いので明日にすることにした。

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