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「これって、もやし……じゃくてもしや、二階への階段? うんうん、それっぽい」


次に彼女は自転車を持ち上げ、ゆっくりと慎重に階段を上っていく。それほど段数も多くない為、息を少し乱す程度の疲れで済んだ。


二階は別の景色になっているだろうと思っていた彼女だが、一階と同じく先が見えない程長い道のりを見ると、苦い顔をする。


「何か面倒くさい感じがしてたまらない。私の期待を裏切らないでって言っても無駄だろうけどね。あー、もやし食べたい」


自転車に乗り、ついさっきのように止まることなく進む彼女。退屈からなのか、運転しながら何度もあくびをする。そんな中、再び例のものが彼女の目に止まってしまう。




「またトイレあるの? これって各階層にあるとか? 一階と同じようなことが起きるのは勘弁だけど、好奇心が……ああ、好奇心には勝てない」


彼女は見ず知らずのうちにトイレの扉のノブに手を掛けていた。引き下がるのはもう遅いと思ったのか、勢いよく扉を開けたことにより、天井で待ち構えていた例のモンスターが地面にポツリと落ちる。


「おいみんな、美少女が……」


彼女はすぐに扉を閉め、何も見なかったことにした。


◆ ◇ ◆



それからは特に何もなく、順調に三階、四階へと進み、彼女が十階の階段へとのしかかろうとした時、ついに状況が変わる。

彼女の前に現れたのは、大剣を手に持ち、緑色の肌や鼻、耳が大きく酷いものなどが特徴的である五メートルを超える巨大な身体を持つモンスター。因みに薄っすらと髪の毛が生えている。ゲームでは【トロール】と呼ばれるもの。


「嘘……でしょ? こんなの勝ち目がない気しかしない。髪型が少し面白いけど、笑える雰囲気じゃないよ」


トロールは彼女のことを敵として認識し、早速大剣を振り回す。彼女はその動きをしっかり見切り、回避した。トロールの大剣が直撃した場所から砂埃が舞い、それが視界を悪くしていた。

二回目の攻撃も同様に大剣が地面に当たり、砂埃が舞っていたことからトロールの一種の作戦だと彼女は捉えた。実際、三回目は視界が悪いのが原因で危うく彼女が真っ二つになる寸前だった。


その後もトロールは大剣を振り回し、彼女はそれを避けるの繰り返しで、流石に彼女にも疲労が溜まり始める。そんな中、手に違和感を覚える彼女だが、トロールはそのことを察していない様子であった。


「ーーあっ!」


途端に彼女の手から炎の球が複数放たれ、その内の一つがトロールの髪の毛に直撃し、トロールは彼の頭上から出ている煙で勘付く。


「髪があぁぁぁぁぁぁあ。髪があぁぁぁ!」


トロールの叫び声が洞窟内に響き渡り、震える手で頭の安否を確認した。そして、ツルツルの頭を触ることにより、髪の毛が全て燃え尽きていたことを悟る。次の瞬間には口を大きく開き、ゆっくりと前向きに倒れた。

一言で表すならば、髪の毛が無くなったことが原因のショック死だろう。


「た、倒しちゃったよ⁈ うぅ」


トロールが倒れたことによる影響で少しばかり地面が揺れる。彼女は危うく転倒しそうになるが、何とか耐えることに成功した。


「それにしてもさっきの何? 魔法使えてたよ⁉︎ もう訳分かんないからいいや」


一度物事が落ち着いた後、何事もなかったように自転車を走らせ、階段前に着くと自転車を持ち上げて階段を駆け上がる。


十階へと近づけば近づく程明かりが段々と薄くなっていく様子に彼女は疑問を抱き始めた。


「はぁ、はぁ。何か……怖いんだけど。嫌な予感がする」


やがて十階にたどり着いた彼女は、暗さのあまり、辺りが何も見えない状態だった。


「これは、お化け屋敷感が否めない。何か物音がするし。こういうの苦手だからそこは配慮して欲しいところ」


今回は十階もどうせ同じだろうと思っていた彼女を良い意味で裏切る形となった。

今回は少し短めです。

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