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周りには松明が壁に設置され、適度な明るさを保つ洞窟内。横幅は五十メートル程、縦は先が見えない長さである。そして、とある看板の近くには無数の武器となる物が整然と並んでいる。


何が起きたか分からずにいるリリアの傍で中年男性は勝ち誇ったような表情をし、一人奇妙な笑い声をあげる。その声に彼女は顔色が蒼くなるのを感じた。


未だに離して貰えない片方の手を必死に振り解こうとするも、もう片方の手で両腕の自由が奪われている状態である為、抵抗が出来ずにいた。それに加え、引き篭もりで全く運動をしていない女性ともなると、やはり男の力には敵わなかった。

最終手段である男性の股間を蹴るという行為も、彼が背後にいるせいで実行出来ずにいる。そんな状況下でも最善の手は何かとひたすら考える彼女。


「金髪美少女のオパーイ(胸)はどうなってるのかな? それにしても貴女のオパーイは美乳だなぁ!」


彼はゆっくりと胸に手を伸ばす。その気を抜いた瞬間を彼女は逃さなかった。

彼女は体重を後ろに掛け、その勢いで壁に近づくと後頭部で頭突きをする。すると、彼の頭部は壁に打ち付けられ、その衝撃で意識を失い、うつ伏せに倒れた。


彼女はやっと自由になったことで、一緒に魂も漏れていそうなほど大きなため息を吐く。

そして彼に近づき、一度ひっくり返して仰向けにする。そのうえ、反応を伺いながら恐る恐る彼のポケットから不思議な雰囲気を放つライターを取り出してみる彼女。怪しいと分かっていても試さずにはいられない彼女はライターをつけようとすると、ライターの側面には一から九までの番号が書かれていることに気づく。どうやらボタン式になっているようで、鍵が掛かっていた。


「どうにでもなれ!」


そう叫び、ライターを中年男性の顔に投げつけた。やがて少し落ち着いた彼女は、今になってようやくじっくりと周りを見渡した。

まずは最初から気になっていた看板を読む彼女。


『あなたはダンジョンの一階に居ます。武器を選んで生き延びて下さい』


「え、ここってダンジョンなの?」


英語で書かれている看板を一通り読み終えるとそう呟く。


「それに武器って」


試しに看板の周りを見渡すと、バラエティに富んだ武器がずらりと並べられている。剣、槍、斧、杖、盾、ペンダント、自転車など。"武器"という名目で置かれている。その中で、彼女は真っ先に紅く輝くペンダントに目を奪われた。紅いペンダントの他にも数種類の色があるのにもかかわらず。

一度ペンダントを身につけた彼女は法悦の笑みを浮かべる。


「誰かが私の為に用意したのかな? 」


そして、自転車の存在に気づいた。


「あ、自転車がある……」


注意深く自転車を観察し、怪しいかどうかを判断する。車体の色は赤で、高級そうな自転車という雰囲気を醸し出している。その高級感が気に入ったのか、自転車に乗り、前へ進むべく漕ぎ出した。


両側の壁に設置された松明以外驚く程何もない空間をひたすら突き進んだ彼女だが、とある標識を見た瞬間、彼女はスピードを落とし、自転車が完全に停止してから降りた。


その標識とは……




「トイレのマークがあるんだけど、何これ? ダンジョンでトイレがあるなんて気になるじゃない!」


彼女は何の躊躇なく扉を開ける。だが、トイレ自体は彼女が期待していたものとは違った。


「呆れる程何もないのね。何か損した気分だわ。私の期待を返せ!」


扉を開けると数メートル先には洗面台と鏡があり、横には申し訳程度に便器が備え付けられていた。しかし、次の瞬間ーー


「一メートル下に美少女を発見しました。繰り返します。一メートル下に美少女を発見しました!」


明らかに天井の方から声が聞こえたので、恐る恐る彼女は天井を見上げる。すると、そこには青い液体が天井に貼り付いていた。


「ーーえ?」


「しまった。気づかれてしまったぞ、紳士ども! 急いであの美少女に張り付くんだ!」


その声を聞いたからなのか、便器からものすごい勢いで青い液体が溢れ、床を這うように彼女に向かって移動する。


あまりもの驚きで少しの間、立っていただけだった彼女は自分の身を守る為に、いち早くその場から離れようとした。するとーー


「我らスライムたちは美少女に触れることに成功した。だから安心するがいい、少女よ。きっと君にとって良いひと時を過ごすことになるであろう」


いつの間にか天井に貼り付いていた液体が、今度は彼女の肩にあり、低い声で話しかけた。


「これから気持ちいいことするからな!」


その声からスライムが興奮している様子が十分に伝わった。そんなことは構わず、彼女はその場を去る為、迅速に扉を開ける。


「おやおや、無視は良くないよ。君の後ろにもスライムたちが待ってるのに」


そう言われ、扉を開いたと同時に振り返り、スライムたちが彼女のすぐ側まで来ていたことに気づく。


「うるさい!」


トイレから出た彼女は力強く扉を閉め、自転車に乗る。そして、可能な限り速度を上げた。


「あら、怒る顔も可愛いよ。大丈夫、気持ちいいだけだから安心しーー」


風力で肩に乗っていたスライムは吹き飛ばされ、地面に落ちた。彼女はそのことをペチャッという音で気づく。その後は速度を少し落とし、行き止まり地点に到達するまで彼女は止まることなく進んだ。行き止まり地点とはすなわち、二階に続く階段を発見したことになる。

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