3話
後日、午前中に銀行で鑑定してもらい宝くじは有効であの券だけが1等当選。当選番号は1口のみ。しかも、キャリーオーバー。つまり、8億という莫大なお金が転がり込んできたのだ。喜ばない訳がない。時間はかかったが当日はとりあえず20万を手に入れて夕方に自宅に戻って来る。
「まさか、これが本物なんてな」
自宅に戻ってきて財布を開き手元にある20万を眺めてから開いている方の手で机に置きっぱなしだった壺を掴んで持ち上げる。相変わらず中から乾いた音がするが手を突っ込んでも中には何もない。そんな壺を眺めてから、再度財布の中身を見て現実離れした出来事がじわじわと実感する。
「ああ……。マジだ。マジでついてる」
俺は恍惚としながらこれからの事を考える。大学を卒業まではうまくいっていたが就活に失敗してからバイトの掛け持ちでなんとか稼いでいた。が、これからはそんなことしなくても暮らしていける金が入ってくる。そうなれば俺は思うままに生きていける。とりあえず怪しまれない様にきりのいいところまではバイトを続けるが、バラ色の人生が待っていると思うと全く気にならない。
良く金で買えないものがあるといった言葉をたまに耳にするがそれは金を持っていて将来困る事のない奴らのセリフ。経験など時間などが買えないと言うが、まず経験を得るためには金がかかる。時間は増やすことはできないがも移動の時間とかは金を使って余分な時間は短縮できるし金を掛けるだけでしなくてもいいことは短縮できる。また、愛も金で買えないだろうがその後の生活を保障してくれない。まぁ、結婚などする気はさらさらないのだが。
元々生活がギリギリで金も時間も余裕のない生活を送ってる俺らには縁のない言葉だ。いや、俺もその仲間に入るからそれは間違いか? そんなどうでもいい妄想にふけるとふとあることを思い出す。
「そう言えば一生働かないで暮らせる金額ってどれくらいだ?」
自分で願ったこととはいえ正確にどれくらいあれば一生働かなくてもいいのだろうか? ふとそんなことを考える。8億。普通のサラリーマンの生涯年収は確か2億から3億。倍近くかるく上回っているはずだ。それだけあればあれば働かずにこの人生を謳歌するには問題ないと思う。
しかし、同時にこうも考える。このお金はこれで打ち止めだ。何もしなければこれ以上はお金が入ってくることはない。ならば投資に手を出すか? いや。素人の俺が手を出したところで成功する未来は見えない。そんな想像に暗澹とした気分になってため息をついた。
「はぁ。まぁ、今は当選した喜びだけを考えよう。どこかに食べに行くか」
気が滅入りそうな考えを頭から振り払うために俺は外に出る準備をする。
「さて。どこに行こうか?」
頭の隅に不安な事を追いやって晩飯の事を考える。当然ながらいつもより値段が高くて旨そうな店でちょっと贅沢した。
結末はありますがその時の気分で更新しているため期間が空きます。それ以上に少し頭のまわるろくでなしの思考がこれでいいのか考えて書いていると時間が掛かる。