2話
何を話したのか覚えていない通話を入れて10分。クレジット払いということだけは覚えている。そして、商品を購入したという事も。普通であれば後悔しかないのだが不思議と後悔はなかった。
「さて、いつ来るのか」
そう言うと唐突にチャイムが鳴った。誰か来るほど友人がいるわけでもない。
「誰だ?」
扉を開ける。扉を開けると誰も居なかった。君が悪いと思いながらも足元を見るとそこには箱があった。
「箱?」
箱を見てみると自分あての住所とヘルネット中田の文字。
「まじかよ」
たった10分。それだけの間に届けられた荷物を見てより気味の悪さを感じた。外を覗き込むが誰も居ない。誰も居ないが受け取らなければ呪われそうな雰囲気に俺は箱を持って部屋に戻る。そして、深く息を吸って吐いた。
「すぅーはぁー。よし。とりあえず開けるか」
意を決して箱を開けると中身は木箱だった。割れないように梱包材が敷き詰められていてそれを開けて木箱を開封する。中にはテレビで見た壺がそのまま入っていた。大きさはそこそこ。手に持ってみると見た目相応の重さが伝わる。壺を持ち上げた時に中でカラカラと乾いた音がした。中を覗き込むが中は真っ暗で何も見えない。
「なんだ? 中に何か貼っているのか?」
恐る恐る壺の中に手を入れてみる。手を入れると中には何も入っていない。壺をそのまま振ってみると確かに何かが入っている音がした。
「やっぱり気味が悪いな。手を突っ込んでみても何も入っていない。なのに振ったら音がする」
それは乾いた音だった。そして固そうだ。それでも通販の出来事を思い出して願いを言ってみることにする。
「どんな願いにするか……。そうだな。一生働かなくてもいいくらいの大金が欲しい」
手を合わせて願いを言ってみた。しかし、何も起こった様子はない。
「やっぱり詐欺だったか。クーリングオフ使えるのか?」
返品の事を考えながら壺を手にひっくり返すと紙が落ちてくる。
「なんだ? ゴミか?」
紙切れをよく見るとそれは宝くじだった。正確には数字を入れるタイプのくじの申込用紙だ。約40個の数字から7つの数字を選ぶという代物である。
「っは。これで当てろってか? 」
皮肉気に笑ってから拾い上げる。抽選日を見るとそこには昨日の日付。俺は慌ててスマホを開くと抽選のページにとんだ。
「えっと。……○・×・△・▽・*・φ・ε。おい。おいおい。おいおいおい。マジかよ。マジかよ」
驚愕。呆れ。喜び。そして、恐怖。多くの感情がないまぜにした声が混ざり合う。くじの数字が全て一致していた。
「と、とにかく一旦落ち着け。まずは調べないと」
手を震わせながら俺はパソコンを開き高額当選の手続きの方法を調べた。