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03 ウェポン

「今日は『RNW2』のプレイヤーが集まるここ、大門に来ています~!」


 ミライは朝ごはんを食べながら朝のニュース番組を見ていた、目的は勿論『RNW2』。つまりミライ達のプレイしているゲームだ。

 正式名称『Read New World 2』とそのままで、逆にタイトルのシンプルさも売りとなっているらしい。


「今話題のRNW2についてお話しを聞きたいのですが」

「ああ、全然いいですよ!」


 アナウンサーが一般人にマイクを向けてインタビューをし始める。


「何といっても本当に殺されそうなスリル、現実で戦っている様な爽快感が最高ですね!」

「なるほど。では最近もイベントがあったそうですが、どうでしたか?」

「あれは本当にすごかったですよ!データのはずのエネミーに本当に登っている人がいたんですよ、ゴーグルを外してみてもモンスターが消えなかったし。新しいアップデートでしょうか?」


 思わず食べていたパンを吹き出した。

 次の瞬間映ったVTR、そこにはモンスターによじ登るセトとミライが映っていた。


「ヤバいヤバい…っ!」


 次第に青ざめるミライ、こんなことがニュースになっているということはかなりマズい状況だ。外に出た瞬間記者ばかりだったりして、などと考える。


「母さん行ってきます!」


 急いで準備を済まし外へと出る。


「誰もいないな?」


 扉を開け確認する、どうやらまだ誰も居ないようだ。


「さっさと遊びに行こう」


 急いで目的の場所に向かうミライ、勿論ゴーグルなどは常備している。



 ◆ ― 倉庫群 ― ◆


 人が集まる中、目的の場所へと急ぐ。


「信号で足止めを喰らうなんて」


 ここまでの道のりで信号がいくつもあり、足止めをかなり喰らってしまったのだ。


「バトルタイムはまだだな」


 モニターを表示し時間を確認する。

 バトルタイムというのは既定の場所にエネミーが出現する時間のことである。勿論のこと安全には配慮されており、バトルエリアは時間内封鎖され車や自転車が通れないようになる。ゲームの戦闘タイプもエンカウントにしなかったのはこの為だ。


「だからランク上げとかはバトルタイム中にしかできないんだよな~」


 レベルは無いがランキング制のこのゲーム、プレイヤーを見たときに最も目につきやすいのがランク数である。


「セトさんはそこまでランクが高くなかったけど、強かったなあ」


 時間には少々遅刻したものの、何とか目的地へとたどり着くことが出来た。


「まだ噂にはなっていないみたいだな…」


 少しホッとするミライ、テレビに映っていたことはあまり広まっていないらしい。


「あのーすみません」


 突然声をかけられ思わずビクッとする。


「な、なんですか?」

「あのこれ…どうやって使うんでしょうか?」


 目の前に立つ自分と同い年と思われる少女、ミライに話しかけてきたのはこの子だ。


「どれどれ…」


 少女から手渡された無機質な長い棒を見る。


「ウォンド系か。インストール武器は?」

「インストール武器…?」

「初心者か…」


 少女の見やすいように棒を持ち上げ説明を始めるミライ。


「これはデータベースウェポン、通称DWと呼ばれることがあるんだ。この武器に蓄積されたデータの武器を使えるんだ、ここのスイッチを押すと…」


 DWの柄の部分についたスイッチを押して見せる。


「何も起きませんね」

「そのゴーグルをつけてみな」


 少女の持っていたオレンジ色のゴーグルを指さし言う。少女は言われた通りにゴーグルを装着し、もう一度武器を見た。


「うわぁ…!」


 目を見開く少女。武器の先からは大量の粒子が溢れだし地面へとぽろぽろと着地している、淡い緑色に光るその粒子は少女の瞳を輝かせた。


「これはロッド系武器、ウォンド系武器と少し似ているけどちょっと違うんだ。それについてはあとで教えるとして…」


 少女に武器を返して別の場所へと連れて行くミライ。


「ここが練習場所、イベント会場やバトル会場には必ず設置されるんだ。ここで練習をしてみるといいよ」


 そこには大量にマネキンのような物が並んでおり、ゴーグルをつけると忽ちエネミーの的へと姿を変えた。


「ロッド系やウォンド系のような杖系武器は大抵魔法を撃てるもの、つまり魔法使いになれるDWだね」

「えっとどうやって出せば…」

「もう一度DWを貸してくれるかな?」


 少女からもう一度DWを受け取り、側面のふたを開けるミライ。そこには二つの何かをはめるような穴が開いていた。


「このDWを買った時、チップがついてこなかったかい?」

「これですか?」

「そうそうこれこれ」


 一センチ程の大きさのチップを取り出す少女、ミライはDWの穴にチップを1つはめると少女に渡した。


「これで魔法が撃てるんですか?」

「いや撃てない」

「えぇっ!?」


『ピコン!』


 少女の声をかき消すように表示されるメッセージウィンドウ、そこには『まもなくバトルタイムをスタートします、皆さまエリアへお集まりください。』の文章。


「じゃあ魔法を覚えてみようか」

「え?」



 ◆ ― 倉庫群/中央広場 ― ◆


「それではバトル、レディ・ゴー!」


 司会者の声と共に始まるバトルタイム、ミライは少女を連れて走り出した。


「えっと、"アイン"?」


 少女の頭上の名前を読み上げる、思いのほかゲームキャラらしい名前をしている。


(そんなことより…!)


 ミライは手元を見た。


(勢いで手を握っちまったぁ!)


 連れ出す勢いでアインの手を握ってしまったミライ、その顔は耳から頬にかけて真っ赤になっていた。


「あ、あれから戦ってみなよ」


 目の前をゆっくりと歩くモンスター。名前はブルートと書いている、豚のような猪のような見た目をした超低級モンスターだ。


「それと経験値はあるけど、レベルなんてないから気にしなくていいよ。あくまでもランクアップの為の経験値ってだけだから」

「わ、わかった」

「まだアインの杖にはスキルが無いから、杖で殴る戦い方になるね」


 ミライの言う通り杖でブルートを殴るアイン。ブルートのHPゲージは対して減っていない、ロッド系武器は攻撃力が殆ど無いため攻撃のみで敵を倒すのは難しい。

 しかし、雑魚モンスターくらいならある程度は撃破できるだろう。


「えいっ!」


 結晶が崩れるようなエフェクトと共に消え去るブルート、先ほどまでそいつがいた場所にはコインの形をしたGPとディスクのような見た目をしたドロップ品が落ちていた。


「そのコインがGP、つまりこのゲームの通貨だ。そしてそのディスクが肝心」

「これですか?」


 コインやディスクにアインが近づくと吸い込まれるようにアインの身体へと入っていく、正確にはアインの身体に入るエフェクトだ。


「メニューを開いてアイテムパックを見てみ」


 アインがアイテムパックを開く。するとそこには現在のGP、所持品が表示されていた。


「そのディスクを使ってみ」


 緑色のディスクを取り出す。ケースに入ったそのディスクの大きさはCDやDVDというよりもフロッピーくらいの大きさだ。

 アインは「使用する」というコマンドを選択しディスクを使った。


『どのチップにセーブしますか?』

「え?え?」


 謎のウィンドウに慌てだすアイン、ミライはゆっくりと説明を始めた。


「つまりそのチップにディスク、もといスキルを登録するってこと。さっき入れたのは01チップだから、そこにスキルを登録できるよ」


 ミライの言うとおりにウィンドウを操作するアイン、そうして何とかスキルを習得することに成功した。


「やったー!」

「おめでとう」

「早速、使ってみたいと思います」


 すぐ近くにいたブルートに杖を向け、先ほど登録したスキルを放った。


(ん?確かディスクは色によって効果が見分けられて、緑のディスクは…あ!)


「ヒール!」


 ブルートの周りに緑色に輝く光が集まる、HPは減りもせず回復もしない。プラスマイナスゼロだ。


「あれ?倒せません」

「すまん、言い忘れていた。その"ヒール"ってスキルは回復スキルだ」

「え!?」

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