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15 カタナ

「ゲームの世界に飲まれたんだよ」


 その言葉を聞いたセトの表情が青ざめる。

 そして、話の内容が理解できていなかったミライの背筋までもが凍った。


「……ネイティブ化したのか」

「私が試作品に近い状態のゲーム本体を渡してしまったが故に、起きてしまった最悪の事故だったよ」


 淡々と話を続けるが柏崎博士の表情は晴れてはいない、それどころかどんどん暗くなっている。


「あとはヨゾラについても話しておかなくては……」


 博士の口が止まる。

 セトは違和感を感じて博士から速やかに距離をとると、博士の身体がゆっくりと前のめりに倒れた。


「ネタバレし過ぎですよ博士ぇ!全く、駄目じゃないですかぁ?」


 そこには注射器とDWらしき物を手に握っているミウラの姿があった。

 ミウラはセト達の方を見ると、三日月のように口を歪めて笑い出す。その不気味さにセトとミライの動きが停止する。


「ひゃっはっはっはっはっ!君たちは遅すぎたんだよ、イベント失敗だなぁ!」

「何を言っている」

「俺の目的はこのDWだったんだよ、元よりお前たちはオマケでしか無かったのさ!」


 ミウラはその手に握っているDWを起動させた。


「見ろォ!この美しい姿をぉおおっ!!」


 緑色に輝く粒子が集まり形を成していく、その姿は西洋の剣のようであった。


「TestというCPUが使っていたとされる最強の武器、そいつをモデルに作成したものがこれだ!」


 剣を見つめるセトの表情が見る見るうちに青ざめてゆく、それもそのはず。実際に一度、セトはそのモデルとなった武器と一戦を交えているのだから。


「そうだなぁ、DW名は……『星屑(スターダスト)(ブレイド)』なんてどうかな?ふははっ」


 ミライは自らのDWの軌道スイッチに手をかけ、ミウラに斬りかかろうとした。が、それよりも早くミウラへと攻撃を仕掛けたセトが居た。


「おやおや血の気の多いことで」

「てめぇとTじゃあ天と地ほどの差があるんだよ、甚だしいにも程があるぞこの野郎!!」


 セトは今まで以上に刀を振るい、ミウラへと斬りかかった。


「馬鹿めっ!お前は俺に負けた、所詮その程度の強さなんだよ!」


 ミウラは剣を振り上げると身体を捻り、"突き"の体勢へと移った。

 そして剣よりも先にもう片方の手を出し、ミライへと隠し持っていたナイフを投げた。


「うぐっ!」


 ミライの腹部へと刃先が食い込む。

 僅かな呻き声を上げ、ミライはその場へと倒れた。


「ミライ!」


 ミライへと目を向けるセト。

 しかし、その一瞬の隙をミウラは見逃さなかった。


「ぐっ!?」


 セトの背中へと突き刺さる剣、その刃先はセトの胸を貫通していた。

 足元には大量の血が滴りセトの体温は急激に下がった。


「チェックメイトだぁ!……ん?」


 ミウラの突きさしていた剣が動く。

 セトはミウラの剣を握り、自らの身体から引き抜いた。


「起きろ、ミライ…っ!」



 ◆


(なんだ…?突然何かが…)


 ミライは自分の腹部を見た。

 そこには真っ赤に染まった服と、見覚えの無い鉄の物体が刺さっていた。


(ナイ…フ!?)


 痛みとショックが入り混じり、ミライの意識はどんどん遠のいていく。


(僕はここで死ぬのか…っ!?)


 そう思いかけた時、ミライの耳に一つの声が木霊した。


「起…ろ、…ライ…!」


 ミライは朦朧とした意識の中、力を振り絞って目を見開いた。


「ミライ……これが俺の最後の切り札であり秘伝の奥義だ、よく見てろよ…っ!」


 セトは刀を鞘に納めるような仕草をすると、それを一気に引き抜いた。

 一見、居合切りとも見えるその仕草。この一見が一瞬となったのにミウラは気づかなかった。


「フラッシュスタンスもどき……とも言えるな」


 ミウラが気づいた時には既にセトは刀を鞘へと納めていた。


「な、なんだこれはァ!?」


 ミウラの脇腹部分に赤いシミが浮き出る。

 シミはどんどん広がり、ミウラの服を赤く染めた。


「くそがぁっ!!回収班、回収班!!!」


 ミウラはその場に膝をついた。


「ミウラさん!」


 建物の奥から回収班が集まり、ミウラを抱えてヘリで飛び立っていった。

 ミライは身体中が痛みを訴える中、倒れているセトへと駆け寄るとセトの頭部を抱え起こした。


「セトさ、ん…しっかりしてください…っ!」


 するとセトはうっすらと瞼を上げ、ミライの方を見た。


「悪い、もう目もあまり見えないんだ…」

「出血が…」


 セトの心臓付近からは大量に血が流れている。


「ミライ、お前にこれをやる…。あとは任せた」


 セトは腰の刀型DWをミライに手渡し目を閉じた。

 そして、ミライが刀をしっかりと握った頃には既にセトの手は力なく地面へと落ちていた。


「セトさん…セトさあああんっ!!」


 ― セト 現実(リアル)死亡(ログアウト) ―

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