15.またしても……ですか
少し短いです
「あのさ、ジェイク。確認なんだけど、領主が仕事を放棄する前に何かなかったか?」
ジェイクはボクに言われた言葉を吟味するかのようにゆっくりとだけれど、半年以上前のことを思い出そうとしていた。
「たしか……旅の商人が訪れて、父上と商談をしていたような。数日連続して父上の元へ訪れていたと思います」
「そいつが領主に『ジオラマ』を教えたんじゃないのか?」
「『じおらま』ですか?」
ボクがジオラマについて説明するとすぐに目の前にある領主が作り出したものそのものだというのを理解した。
「その商人が教えたかはわかりませんが、商人がいなくなってすぐに作り始めたと思います」
それ、どう考えてもその商人が怪しいだろうよ。とは思ったけれど、口には出さず大きくため息をついた。
「とりあえず、状況はわかった。詳しいことは領主本人に聞こう」
そう言った後、領主の近くまで歩いていこうとしたらテトラに腕を引っ張られて止められた。テトラは首を横にぶんぶんと振っている。
「近くにいってはダメですよー」
「テトラの言うとおりでございます、ジルクス様」
テトラだけでなく、ヘキサまでボクを止めるような発言だ。どういうことだろうか。さっきよりも詳しく周りを鑑定してみると、領主の近くにある筆から強力な呪いが溢れるように放たれていた。
呪いのスキルを込めた魔道具といったところか。
「どうかしたんですか?さっきも空気が悪いとおっしゃっていましたが」
ジェイクはボクとテトラたちのやり取りを見て怪訝な顔をしている。どう答えようか悩んでいたら、ミアが話しだした。
「実は領主様呪われてるんです」
ちょっとー!ミアさん!?またしてもおいしいところを持っていっちゃって、ひどいじゃないですか!?
ミアはボクの唖然とした顔には気付かずにどんどん説明していく。
「しかも、領主様の近くに呪いの発生源があるみたいで近づいちゃダメっていう話なんですよ」
「そうだったんですか! 呪いって解除できるんですか?」
「できます」
そうきっぱりと答えるミアにジェイクは少しだけ頬を染めて嬉しそうな顔をした。男前過ぎるミアに惚れる人間が続出しそうで怖い。いや、ジェイクには結婚を控えた婚約者がいたはずだから、だ、大丈夫。
ミアが領主に近づこうとしたら、今度はリザベラがミアの腕を掴んだ。
「いけません、お嬢様!」
「大丈夫、呪いを解くだけだから」
「なりません!」
リザベラが止めてくれて本当によかった。
「ボクがやるから、ミアはリザベラと一緒にいてね」
「でも、ジルになにかあったら」
「ミアになにかあったら、そっちのほうが困る。それに呪いに関してはボクの方が詳しいから」
言っててちょっと悲しくなったけれど、すぐに気を取り直して領主の近くへ向かおうとした。
「だからー、主様も近くに行っちゃダメだってばー」
「全く……ジルクス様にはお仕置きが必要ですね……フフフ」
「ここは、手を離すところだろう!?」
今度はヘキサまで腕を取られた。二人して離してくれないんじゃ近づけないじゃないか。
それよりも、ヘキサのお仕置きってなんなんだ!