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13.黙っていられません

 応接室の中は、これでもかっていうくらいに贅を尽くした絨毯にソファー、壷や絵画などがあった。1つ1つは高いのかもしれないけれど、統一感がなくてただの派手な部屋にしか感じられない。


 ボクとミアがソファーに座り、その背後にリザベラたちが立つという形で屋敷の主人の到着を待った。


 ほとんど待たずに現れたのは、ごちゃごちゃに着飾って香水くさそうな細身のおばさんと目の下にクマを作った20代前半の男性だった。


「ようこそ、治癒術師殿。わたくしはロックハンド領領主夫人のアラベラ・フォン・ダルトリーでございます。こちらは息子のジェイク・フォン・ダルトリーですわ」


 領主夫人はにやりといった表情を浮かべながら、下位の者に対する軽い挨拶をしてきた。ここの領主は侯爵位を持っているので、自分たちよりも上の者にはあまり出会わないのだろう。ただし、侯爵位を持っているのは領主だけであって、夫人ではない。

 ああなんか、ボクとミアの背後に立っているリザベラたちから殺気だったものを感じる。


 逆に領主子息であるジェイクは紳士的な深々とした礼をしてきた。それを領主夫人が眉を寄せてみていた。下位の者になにちゃんとした挨拶しちゃってんの?とでも言いたそうな感じ。


「ボクの名前は、ジルクス・ローズフォード・セリーヌ。セリーヌ王国第二王子であり、治癒術師でもある。そしてこちらが」

「ミア・フォン・スウィーニーでございます。ジルクス殿下の婚約者でもあり、治癒術師でもありますの」


 ボクはミアと視線を合わせにっこりと微笑んだ後、領主夫人とジェイクには冷めた目を向けた。ミアはその場で淑女の礼を行った後、くすりと笑った。もしかして、ミアもイラッとしてる!?

 領主夫人とジェイクが目玉がこぼれるんじゃないかってくらい目を見開いて、ボクとミアの顔を見ていた。


「だ、第二王子殿下であるとは露知らず、あのような態度を取りましたこと深くお詫び申し上げます」


 そう言ったのはジェイクで、領主夫人はいまだに目を見開いたままだ。


「名を明かしていなかったのですから、気にせずに。それで、……領主が病気だということでしたが?」

「いえ、たいした病気ではございませんので、殿下のお手を煩わせる必要はございません!」


 領主夫人はあたふたとしながら、そんなことを言った。たいした病気じゃないってことはー。


「それならば、領主との面会も可能ですよね?」


 ボクの言葉で領主夫人の顔色が一気に悪くなった。ジェイクは苦虫を噛み潰したような顔をしている。


「いえ、あの……病気が殿下にうつってしまうかもしれませんので!」

「たいした病気でないのだったら、うつらないのでは?」

「いえ、万が一ということもございますので!」


 領主夫人はボクには目を合わせずに目線をキョロキョロとさせていた。それって嘘ついてますよーって言ってるようなものなんだけどねぇ。


「ボクたちは治癒術師でもあるからね。万が一病気がうつったとしても、自分自身に治癒術をかけることができる。そういった心配は無用ですよ」


 ボクが冷めた目線を送りながら、やんわりと断ると領主夫人は下を向いてしまった。

 もし本当に病気であれば、ボクとミアも領主の部屋に入るのに多少は躊躇するのだろうけれど、領主が病気じゃないことを知っているからねぇ。いくら何を言われても動じたりしないよね。


「……母上、もう諦めましょう」

「でも!」

「もう手遅れなんです。殿下、私が案内します」


 大きなため息とともにジェイクがそう言った。領主夫人は、一度だけボクとミアの顔を見て睨んだ後、また下を向いた。


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