12.突撃隣の領主の屋敷
宿屋で貴族らしい服装に着替えた。着替えるためにヘキサとテトラを呼び出して手伝わせた。ボクの準備ではなくて、ミアの準備に人手がいるようだったのだ。
準備が整ったので、ミアの部屋の扉をノックし、声をかける。
「ミア~?準備できた?」
「はーい、どうぞ~」
部屋に入ると薄桃色のロングドレスを身にまとったミアがいた。髪はハーフアップにしてあり、見るからに貴族の令嬢をいった感じだ。
「ゴスロリ姿も可愛いけど、ロングドレス姿も可愛いね」
ポロリとそう言うとミアは両手を頬に当てて顔を真っ赤にした。
「ミアお嬢様が可愛らしいのは当たり前です! この薄桃色のレースをふんだんにあしらわれたデザインのドレスはミアお嬢様ただ一人にしか似合いません。他の方が着るだなんて、芋虫が着飾ったようなものです!」
リザベラが鼻血を出す勢いで褒めちぎっているのだけれど、芋虫と比較ってどうなのよ……。
「じ、ジルだってすごく素敵だよ?」
ミアはその姿のまま、顔をこてんと斜めにした。
両頬に手を当てて、顔こてんってこてんって!!うう、可愛すぎる!!
あまりの可愛さにリザベラやヘキサたちがいるのもお構いなしで、ミアの額に唇を当てた。
「……!」
ミアの無言の抗議があったけれど、あえて気付かないふりをした。
着替えた後、領主の屋敷へと向かった。馬車を降りれば、領主の屋敷の執事が慌てて現れた。
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか?」
執事は額に汗をかきながら、にこにことした表情でそう言った。事前連絡なしで現れたなら、普通は門前払いもいいところなんだけれど、ボクとミアが貴族らしい服装をして背後に護衛や侍女、執事などを連れていれば、高貴な身分の方かもしれない……くらいのことは察知するようだ。
「ボクたちは国王陛下からの勅命で派遣された治癒術師です。ロックハンド領の領主様がご病気ということで参りました」
そう言ってボクは襟元につけていた治癒術師の証であるピンバッチを見せた。今朝、着替えた時に短刀の鞘紐から襟元へと移動させておいたものだ。
「しょ、少々お待ちください!」
執事はボクたちを置いて、屋敷の中へ消えて行った。ただの治癒術師であれば、そう簡単に屋敷に入れないという判断はまぁ、妥当かなぁ。まだ国王がポイ捨てした紙も見てないし、ボクたちの身分も知らないのだから、仕方ない……かな。
なんてボクは考えていたのだけれど、リザベラは内心怒っているようだった。
ミア第一のリザベラだもんね。蔑ろにされたと思って怒っても当然か。
「主様を待たせるなんて、しんじらんなーい!天罰くらわせちゃおっかー!」
「テトラもたまにはいいことを言う。ジルクス様を蔑ろにする者には天罰……フフフ」
「えーっと、別の機会にね」
ボクの言葉にヘキサとテトラはあからさまにがっかりした表情になった。
そんな会話をしている間に執事は戻ってきて、屋敷の扉を開いた。
「応接室へご案内いたします」
ボクたちは執事に案内されて応接室へと足を運んだ。
このたび、PASH!ブックス(主婦と生活社)さんから書籍化されることになりました!
発売日はまだ未定です!
詳しいことがわかり次第、活動報告とあとがきにてお伝えしたいと思います。(あとTwitter?)
今後も楽しんでいただけるといいなぁ~!
っていうか、これからキャラ設定とかいろいろやることが待っている~ギャー!!