02.国境にある領地は遠いです
説明回っぽいです
陳情書を送ってきた村は、国境近くのロックハンド領のはずれにある。ロックハンド領はロングフィールド領とは真逆の北東に位置し、領地の大半を岩山で占めているらしい。
ボクとミアは派遣要請を受けたその日の夕方、準備を整えて王都を出発した。国境と言うだけあって、荷物を積んだ馬車だと5日はかかるんだって。命が関わっているのだから、早く行きたいということですぐの出発になったってわけ。
本当は瞬間移動のスキルでパパっと行きたかったのだけれど、行ったことのある場所にしか瞬間移動はできないんだよ。領地巡りの旅をして、瞬間移動できる場所を増やしていかないとだね。
今回の旅のメンバーは前回一緒だった者たちで、ボクとミア、ミアの侍女であるリザベラ、護衛と御者の5名だ。そこに王族専用の通称『影』たちがついてきているのだけれど、数に入れていない。あとはヘキサとテトラはいつでも呼び出せる。
早く着かないとならないため、強行軍での移動となったのだけれど、御者も護衛もなぜだか大喜びだった。
「伝説の魔法アイテムバックが見られるとは!」
「惜しげもなく私たちや馬たちに治癒術を施してくださるなんて!」
アイテムバックって伝説の魔法だったんだねぇ。知らずに使って見せてしまったけれど、荷物を減らして、馬たちの苦労を軽減するためだったので、仕方ないってことで。
御者と護衛とリザベラには吹聴しないようにと言っておいた。
治癒術に関しては、ボクがかけるよりもミアがかけたほうが効果が高いので、お任せした。想像力の違いなのかなぁ。職業:聖女(隠蔽)は伊達ではないってことかなぁ。
そんな感じで予定よりも2日も早くロックハンド領の領都へついた。ついたといってもかなり夜遅かったため、領都で一泊して明日の朝、村へいくことになった。
宿に併設している食堂で、かなり遅めの夕食を食べていると酒を飲んだ男たちが大声で話し始めた。
「また税金が上がるってよ!今度は6割だって」
領地で集める税というのは1割が国に治める分、残りが領地の運営に使う分となっていて、領主の判断で最大7割まで上げることが可能だ。7割まで上げる場合というのも戦争が絡んだ時だけで、それを除けば最大5割、平均3割といったところだ。
このロックハンド領の税が6割というのは1割が国に治める分、残り5割が領地の取り分ということになる。5割も取るのであればきちんとした政策を施さないとおかしい。道路整備だけで5割なんてやってたら、領民の反感を買う。
そもそもしっかりと還元されないのに、稼ぎの半分以上を取られたら生活できないんじゃないか?
「先月は2割まで下がっただろ。領主様どうしちゃったんだろ」
「先々月は4割まで上がっただろうが。領主様がご病気だって噂は本当かねぇ」
えーっと、6割になる前が2割でその前は4割だった?たしか、資料にはロックハンド領の税金は3割だったはずだ。そんなころころと税金が変わったら、領館に勤めている補佐官たちが困るんじゃないのか。
税金の問題だけじゃない。領主が病気というのは本当だろうか。病気中なのに、税金が変わる?誰が発令しているんだろうか。
「俺ら、どうなっちまうんだろうな」
男のその言葉は、この領地にいるものすべての代表者のセリフのようだ。もっと耳を澄ませてきいてみれば、税金の上がり下がりだけでなく、政策を発表したり取りやめたりしているらしい。
これはガサ入れしないとダメなんじゃないかな?とは思ったけれど、今はまず神獣の治療が先だ。
食事を済ませて、早めに眠りについた。
ロックハンド領の税金は、もともと3割(1割が国、2割が領)