08.ボッチ気味のボクにも友達が出来ました
王立学院では、平等を謳っているため家名を名乗らない。教師たちは生徒のことを必ずさん付けで呼ぶように徹底している。
王族だからって様付けしてたら、示しがつかないもんね。
ボクは学院へ通う前に顔を合わせたことがなかったのもあって、王族とはバレずに生活している。
まぁ、先生たちは知ってるんだけど。
寮で同室になったのは、サイラス。ステータスを見れば、職業:クリューガ侯爵家嫡男だそうだ。
初めはチャラ男だと思ってたから、挨拶程度だったんだけど、女子に囲われてハーレムして帰ってくるとものすごく疲れるらしくって、ベッドに突っ伏すんだよね。
そんな姿を何度も……ほぼ毎日のように見ていたから、気になって聞いてみたんだ。
「そんなに毎日、女囲ってて楽しいの?」
状態:驚愕(隠蔽)になってたよ。
「男のロマンだろ? それより、お前って俺のこと興味ないんだと思ってた」
平気そうな顔をして言ってたけど、ボクにはバレバレだからね。
「友達になれるといいなくらいには興味を持ってるよ」
「な、なんだよ、気持ち悪いな。だが、そんなに友達になってほしいのなら、なってやってもかまわないぞ」
ボクの素直な言葉が効いたようで、その場ですぐ友達になれた。
ツンデレっていうのかな、なんかカワイイ。
侯爵家より上の貴族って少ないのもあって、ちょっと態度が上からなのは仕方ないかな。
毎日過ごすうちに、打ち解けるようになって、ついにサイラスの本音を聞くことができた。
学院に入る直前、父と王宮を訪れる機会があった。
ちょっと冒険心が疼いて父から離れると、すぐに迷子になってしまったらしい。
知らぬ間に薔薇が咲き誇る庭……王族専用のローズガーデンのことだろう……に紛れ込んでしまったのだが、そこで美しい少女に出会ったそうだ。
艶やかな黒髪に吸い込まれるような青い瞳、薄いピンクのふんわりとしたドレスを身にまとった少女は妖精のようだったと。一目惚れしてしまったと。
しばらく見つめていると少女の方が気づいて驚いたような表情をしていた。
「ここにいてはダメよ」
少女はにこにこしながらそう言って、廊下の向こうを指で示し、すぐに手を振り去っていった。
あの時、話しかけて名前を聞いておけばよかったと散々後悔しているそうだ。
その王宮で出会った少女ともう一度会いたくて、いろんな女子に話しかけて情報収集をしていたら、気づいたらチャラ男扱いされていたらしい。
女子には話しかけてはいるけれど、誰一人として手を出したことはないそうだ。
この話を聞いたときは、頭を押さえてしまった。
その王宮で出会った少女って…どう考えても異母妹のシルル王女のことだ。
シルルは、ボクの目から見ても本当に可愛い。
妖精のようだとか天使のようだとか思えるくらいふわっとした可愛らしい女の子だ。
一目惚れしないほうがおかしい。
できれば、友達ということで紹介してやりたいんだけども…さすがに王族を簡単に紹介するわけにもいかないし……。
そもそも王族だっていうのは隠してるわけだし、だからって黙っているのも悪い気がする。
なので、噂で聞いたことないか?っていう風を装って言ってみた。
「その少女ってさ、シルル王女じゃない? よく話で聞くシルル王女の外見に似てないか?」
サイラスの目がガッと見開いた。急速に理解しましたってところだろうか。
「そうか、俺が迷い込んだのは王族専用のローズガーデンだったのか! 見たことがないような美しい薔薇が咲き誇っててすごい庭だった。そんな庭の中にいたのに、シルル王女は輝いて見えた」
シルルはボクの1つ下なので、このままだと来年、王立学院へ入学する。
サイラスが今のチャラ男ハーレム野郎のまま過ごしていては問題があるんじゃないかな。
その日から、サイラスの態度が一変したのは言うまでもない。
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読んでくださってる方、本当にありがとうございますっ。
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