10.戦い方に悩みました
騎士団長たちとの話し合いで、結局、ボクが前に出て戦うのは向いていないと言い切られた。
小さい頃から魔法の勉強は頑張ってきたけれど、剣術に関しては貴族の嗜み程度しかやっていない。体力づくりだって人並み程度だ。そんなボクが西の騎士団長の速さについていけるわけがない。
ここはもう後衛職だって割り切るしかないんだろうなぁ。
「やはり、護衛を雇っていただいて、殿下にはサポート役に徹していただくのが良いのではないでしょうか?」
「その護衛に隙を作らせて、殿下が魔術でとどめを刺すというものアリだな!」
「護衛を雇うのもいいが、殿下であればゴーレムを作り出して戦うのもいいのではないか?」
「ゴーレムは毎度作り出すもんだから、いざって時困るんじゃねぇか?」
ゴーレムを作りだすかぁ。どこぞの空中の城にいるゴーレムっぽい兵器とかダンジョンの中をのしのしと歩いている背中が畑になってるやつとかを思い出して、くすりと笑ってしまった。
毎度作り出すと言っているから、戦闘前に作り出して終わったら土くれに戻すのだろうか。
兵器っぽいゴーレムが土くれに戻る姿を想像して、なんだか悲しい気分になった。
ゴーレムを作り出すのはやめよう……。
「いっそ、召喚獣を呼びだして護衛させるっつーのはどうよ」
「宮廷魔術師団長お得意のアレかぁ」
召喚獣といったら、バハムートとかリヴァイアサンとかイフリートとかかな! 獣分類なんだろうか?
いや、そもそもこの世界にそういった生き物が存在しているかどうかもわからない。
異世界から召喚するなんてことだったりするのだろうか。
「では、殿下は宮廷魔術師団長のもとで召喚獣を呼びだして護衛として契約してきてください」
ボクが口を挟まないでいた所為で、勝手に召喚獣を呼びだすことに決まったようだ。
いや、別に文句がなかったから何も言わなかったんだけど……でも、なんか……まぁいいか。
「契約できたら、また来る」
「はい、お待ちしております。その時にはもう一度試験をして、その後に連携の練習をしましょう」
「おう、それいいな。次も当たりくじ引くからな!」
「何を言ってるんですか。あなた以外でくじ引きするに決まってるでしょう」
見なかったことにしていたけれど、ボクの試験ってくじ引きで担当を決めたんだな……。
こうしてこの日の訓練というか試験というか話し合いは終わった。
その翌日、ボクは宮廷魔術師団の師団長の元を訪れていた。
「召喚とは、魔術の中でも亜種といいますか……」
師団長の説明によると、召喚獣を呼びだして契約を結ぶには、召喚獣に気に入られる必要があるのだそうだ。そのために、好みの餌または贄を用意したり、気に入るような契約の証を用意したり、場合によっては召喚獣のための住居を用意したりするそうだ。
あとは、呼びだす際は広い場所で行うようにとのこと。なんでも、狭い部屋で大きな獣を呼びだしてしまった場合、部屋が壊れる場合もあるのだそうだ。
たぶん、過去に建物を壊したことがあるのかもしれない。
聞いた感じだと、召喚できるのはこの世界にいる生き物だけだそうだ。だいたいが獣を呼びだすのだが、時々妖精だか精霊だかを誤って呼びだしてひどい目にあう者がいるらしい。
あとは、自分の魔力に見合った獣を召喚しないと、襲ってきたり逃げられたりするので注意するようにだって。逃げたら探して返還しないといけないんだってさ。それは面倒くさいなぁ。
いくつかの注意点や事前準備をして、宮廷魔術師団の広場で召喚を試してみた。
「……召喚!」
事前詠唱をしっかり唱えた後、発動言語を唱えたのだが何も召喚されなかった。
「……何も呼び出されていませんね……」
師団長が不思議そうな顔をしている。ボクはといえば、驚いて開いた口が塞がらなかった。
だって、今まで一度も魔術を失敗したことがなかったんだ。驚いても仕方がないだろう。
「も、もう一度試してみますね」
「……はい」
「……召喚!」
シーン って擬音語が出てくるくらいに、何も起こらない。広場にはボクのため息だけが聞こえた。
「……その……日を改められた方がよいかもしれませんね」
「そう、します……」
何も召喚できずに自室へ戻った。
作者も悩みました……




