04.宿屋の食事も美味しかったです
今夜の食事も宿屋の食堂で食べることにした。
この宿をおすすめしてくれた商人が言うには、日替わりのオススメを頼めばハズレがないということだった。
リザベラが注文して、すぐにオススメの料理が運ばれてきた。
「本日の日替わりオススメメニューのほろほろ鳥のブドウ煮です。熱いうちに召し上がってくださいね」
給仕の女性がボクに対してにっこりと微笑んだ後、ワンプレートの料理を置いていった。
美味しいそうな香りが漂っている。つい、生唾をごくりと飲んでしまった。
軽くだけど神に食前の祈りを捧げる。その後、両手を合わせて
「いただきます」
と言えば、ミアも同じように
「いただきます」
と言った。その様子を見たリザベラは怪訝なものを見るような目でこちらを見ていた。その様子を見て、ボクとミアはにやりと笑い合った。
プレートに乗っていたのは、ほろほろ鳥のブドウ煮とマッシュポテト、柔らかめの黒っぽいパンだった。
旬のブドウを使ってほろほろ鳥を煮るなんていう発想はなかったので、新鮮だった。食べてみれば、ほろっと崩れる肉にブドウの甘さが染みていて美味しい!
柔らかめの黒っぽいパンは黒パンではなく、ブドウの果汁を混ぜて作ったパンのようでほんのり甘くブドウの香りがした。
ボクとミアは普段出されることのない、珍しい料理に舌鼓をうちつつ明日の予定を話し合った。
「明日は朝から馬車で果樹園に向かおう」
「ブドウ狩りだね!」
「宿屋の人に聞いた話だと、『ブドウ狩り』っていうのはしてないらしいよ」
「えー!?楽しみだったのに……」
「できるかどうか頼んでみようね」
「うんうん!」
あっという間に食べ終わり、給仕の女性がお皿を下げに来たのだが、なんだか様子がおかしい。
「こちら、お下げしますね。ねぇ、旅のお兄さん? 私この後、時間があるんだけどお話しない?」
宿の人間なので、ボクとミアが商人の兄と妹でリザベラが世話係だと知っているのだろう。
給仕の女性は甘ったるい声でボクのことを誘ってきた。改めて見てみれば、垂れ目で親しみやすそうな女性だった。その女性が、ボクの顔を見て首を傾けながら、熱っぽい視線を送ってくるのだ。傍から見れば、色目を使って男心をくすぐって誘っているように見えるのだろう。だが、この給仕の女性がしているのはそれだけではない。魅了の魔法まで使っているようだ。
はっきり言って、転生者であるボクには同等以上の力を持っていない限り、そう言った魔法はかからない。
苦笑いを浮かべていると別の方向から強い視線を感じた。
「お兄様?」
声の主を見やれば、ムッとした表情を浮かべていた。ミアだけではない、リザベラもじとっとした目でこちらを見ている。そちらに対しても苦笑いを浮かべてしまった。
「悪いね。この後は妹と話をする約束をしているんだ」
給仕の女性に向き直り、そう答えると、魅了の力がぐっと増した。それでもボクには効かない。苦笑を通り越して、ニヤニヤとした笑いを浮かべてしまった。
「妹ちゃんより、私とのお話のが大事だと思うの。ねぇ、わかるでしょう?」
ボクがニヤニヤと笑い出したため、魅了が効いたと勘違いしたようだ。給仕の女性の声がさらに甘さを含んだような猫撫で声に変わった。
こんな旅の商人の男に手を出して、何がしたいんだろうなぁ。お金持ってそうだから、かな?
給仕の女性から視線を外し、ミアを見ればぶすっとした表情を浮かべている。そんな姿も可愛いとか言ったら怒るかな。
「もう少し、相手を選んで魅了の魔法を使った方がいいと思うよ?」
くすくすと笑って言うと給仕の女性は目を見開いて一瞬だけ驚いていたがすぐに素知らぬふりをした。
「何を言ってるんですか?私にそんなことできるわけないでしょ!」
給仕の女性はプリプリと怒った様子になって離れていった。
面倒くさいのがいなくなり、ため息をついているとミアがじっと見つめてきた。
「ボクはすでに大好きな人に魅了されているからね。魅了にかかるわけがないんだ」
真顔でそう伝えるとミアの顔がほんのり赤くなり、下を向いた。
こんな可愛い婚約者がいるのに他の女性に現を抜かすわけがないんだけどなぁ。
ミアの可愛い嫉妬した顔が見れたから、まぁいいか。
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って書いた勢いで即時投稿しちゃって、慌てて消しました……
ホント、ごめんなさい!!!