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1.今度はボクが祝われる番です

2章と3章の間のお話です

春、このたびボクは15歳になった。この世界でいう成人になったのだ。

マイン兄の時と同じくらいの規模の成人の祝いを行ってもらった。


成人の祝いという名の夜会はそれはそれは煌びやかで豪華なものだ。


檀上での国王()の挨拶も終わり、いつものようにダンスの音楽が流れ始めた。

これもまたいつものように父は誰とも踊らない。

となると、最初に踊るべきなのはマイン兄とミリア義姉の王太子夫妻か、本日の主役であるボクか……。


檀上でちらっと二人を見やれば、同時にニコッとした笑顔を向けられた。

ボクが踊れっていう意味ですか。

本日の主役だしね。いいでしょう!


ボクは壇上からフロアへ降りて、一直線にミアの元へ向かった。


「ミア」

「はい」


名前を呼んで、手を差し出しただけでミアはにっこりと微笑んで躊躇なく手を預けてくれる。

そのことが嬉しくて、同じようににっこりと微笑んだ。


ミアの傍にはスウィーニー侯爵がいた。ちらりと視線を向ければ、渋い顔をしていた。

渋い顔ではあるが少しだけ満足気なような誇らし気でもあるように思えた。


もう片方の手をミアの腰に回し、ゆっくりとダンスフロアの中央へと進む。


曲に合わせて踊り出せば、自然とお互いにくすくすと笑いあった。


だって、いつも踊りきれないあの曲だったんだよ。

今日は途中で抜けられないし、踊り切らなきゃいけないとはわかってるけど、笑っちゃうのは仕方ないよ。


「ジル」

「ん?」

「踊り終わったら、テラスへ行こう?」


ミアから誘ってくるのも珍しい。


「もちろん。他の誰とも踊る気はないからね」


ボクの言葉でミアの頰が薄っすら赤く染まった。


踊りきってダンスフロアを離れると、入れ違うようにマイン兄とミリア義姉が仲睦まじい姿を見せつけつつ進んでいった。

他にもダンス好きな紳士淑女がダンスフロアへ進んでいく。


ボクはミアの手を取りながら、テラスへ向かったのだが先客がいたため、庭へ降りた。

庭には、月明かりと建物から漏れる明かりだけだったが、意外に明るかった。


「大木の下でいいかな?」

「うん」


庭の端にある大木の真下で、ミアと二人で両手を繋ぎあって言った。


「「……隔離(アイソレーション)!……閉鎖(シャットダウン)!」


範囲は大木の下、その範囲に邪魔者が入れないよう隔離して、さらに空間を切り離す。

一見すると、その場にいるように見えるが見えない壁で中に入ることはできないし、会話も聞こえない。


今までは、ボクかミアが魔法を使っても隔離も閉鎖もできなかった。

お互いに作用させる魔法は転生者同士だとかけられないのだと思っていたのだけれど、ある時、手を繋いで同時にかけるとかかるということに気付いた。

何度か試してみた結果、片手でもかかるが両手を繋いだ方が効率が良いことがわかった。


というわけで、ボクとミアは庭ではあるが二人だけの空間に身を置いた。


どうしてそんなことをしたかというと……。


「庭まで出たのにいっぱいいるね」

「ボクはミアと婚約してるっていうのに……」


ボク狙いの令嬢たちが庭まで追いかけて来たのだ。

休憩にきましたのよ……なんて言ってそうな令嬢が10人近く庭にいるとか異様としか言えない。


そんな場所でゆっくりと言葉を選ばずに会話をするのに、隔離も閉鎖も必要なのだ。

まぁ、日本語で話すか、念波使うんでもいいんだけどね。


「それで、今日は珍しくミアからのお誘いだったけど?」

「あ!お誕生日おめでとう!コレ、プレゼント!」


ミアは服のポケットに手を入れると、ポケットには入りきらないサイズの箱を出した。

といっても、手のひらサイズではある。


ボクをテラスへと誘ったのは、プレゼントを渡すためだと知って、蕩けるような笑みを浮かべてしまった。

嬉しくてたまらないのだから、仕方ない。


「ありがとう!ここで開けてもいい?」

「うん」


丁寧にリボンを解き、箱の蓋を取る。そこにはつなぎ目のない金色のブレスレットが入っていた。


それは、先日ミアと出かけた時に気になっていた一点物の商品で、次に見かけた時には売れてしまったようで無くなっていた。


「珍しく欲しそうにしてた物だったから、買っておいたの」


ミアが買ったから、売れて無くなっていたということか。


「売れてたって嘆いてたから、ちょっとだけごめんねって思ったけど……サプライズになったでしょ?」

「なったけど、悔しいけど嬉しい!」


さっそくミアからもらったブレスレットを左手首に通した。

すると、つなぎ目のないブレスレットが急に動き出した。


「「え!?」」


ミアと同時に声を上げて、その様子を見ていた。

ブレスレットはシュルシュルという音を立てながら、ボクの手首にちょうどあった大きさへと変化した。

腕をぶんぶん振っても、ブレスレットは外れないようだ。


あまりにも驚いたので、ブレスレットを鑑定してみたのだが、名前:金環、効果:持ち主に合ったサイズに変わる。特におかしい感じはしない。


「サイズぴったりでなくすこともないし、とても素晴らしい細工だし、本当にありがとう!」


お礼の言葉とともにミアを引き寄せて額にキスをした。

もうボクの身長はミアよりもうんと高くなって、一般男性の平均よりも少し高いくらいだ。

ミアと並ぶと頭一つ分ちょっと高いといった感じだ。


マイン兄の成人の祝いでは身長が伸びないんじゃないかと心配していたのが懐かしい。


「春とはいえ、夜は冷えるね。戻ろうか」

「……うん」


ミアはなんだか不満そうな表情を浮かべていた。

庭からフロアへ戻れば、ボクは令嬢たちに囲まれて、流し目を送られたり豊満な胸をちらつかせられたりする。

見せつけるだけでなく、側室にしてほしいと言いよってくる者もいる。


婚約者であるミアが横にいても構わずそういったことをされるのだ。

戻りたくないと思うのは当たり前だ。


「どうしたのかな?」


つい、いたずら心が湧いてきてミアに尋ねてみた。


「……もっと二人でいたいなって」


ミアの一言で篭絡されるボクってちょろいなぁと思いつつも、好きなんだから仕方ないかとニヤニヤした。


「そうだね。ずっと二人でいたいね」


髪の毛をすくってキスを落とし、その髪を耳にかけるとミアの耳が赤くなった。


隔離と閉鎖をしていると、見えない壁で近づくことはできないし、会話も聞こえない。

だけれど、中の様子を見ることはできるのだ。


ボクは庭で休憩中の令嬢たちに見せつけるように、ミアを抱きしめた。

さらに髪を撫で、額にキスをした。

横目でちらりと見れば、一人また一人と庭から去っていった。

令嬢全員がいなくなったのを確認して、ミアから離れた。


ミアはほっぺたをぷぅっと膨らませて赤くなっていた。

少しやりすぎたけど、可愛い顔が見られたからいいやぁなんて思っていたら


「お返しです!」


ミアがボクの腕を引っ張って、頰にキスをした。


顔が一気に熱くなるのがわかった。

これじゃあ、戻れないよ!



続編は、不定期投稿の予定です


タイトルを呪われると読んだ人、挙手!ノ(笑

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