42.卒業そして………
長いです
魔法学院の卒業式は、あっさりしたものだった。
結局ずっと首席だったので、卒業生の挨拶もやった。
ミアも王立学院を卒業して、魔法学院に首席合格している。
ボクが約2年間家庭教師していただけあって、ミアの魔法知識と能力は半端ない。
特に治癒術に対する理解力がずば抜けてすごい。
ある意味想定内だけれどね。
実は前世で言うところの院生になったので、もう2年間魔法学院には居座る。
寄宿舎も借りたままだし、研究三昧する予定だ。
ミアが魔法学院に入学してくれば、学院内でも顔を合わせることができるというわけだ。
それはそれで楽しみだ。
ボクとミアの卒業式が済んで2週間後、婚約披露宴を行なった。
婚約披露宴は、婚約しましたってことを広めて相手にこれ以上虫がつかないようにするっていう意味が強い。
ボクは王族で外見もそこそこだし、ミアも侯爵令嬢で美少女だし、家格を考えても外見を見ても引く手数多なわけだ。
これで自称婚約者候補が減ってくれればいいんだけれど。
マイン兄の婚約披露宴はそれはもう盛大にやってたけれど、ボクの場合は普段の夜会と同程度のものにしてもらった。
会場は、王宮内だし貴族のほとんどが参加しているけれど、小規模なハズだ。
普段の夜会と違うところといえば、今日はずっとミアと一緒にいられるということ。
社交の場であるため、夜会では婚約者であっても夫婦であっても途中からバラバラに動く。
婚約披露宴と結婚披露宴に限り、パートナーとずっと一緒にいられるのだ。
まずは、父へ挨拶へ向かう。
壇上の椅子に父は座っていた。横の正妃の椅子は空いていて……少しだけ胸が苦しくなった。
「ジルクス、よくきた」
「はい。このたび婚約者を得られたので報告させていただきます」
もうすでに顔合わせてるし、書類も送ってあるし、わかっているけれど、こういった場ではきちんとやり取りしなければならない。面倒くさい!
「ほう、名は?」
「ミア・フォン・スウィーニーと申します」
ミアは貴族らしく、スカートの端をつまみ深々と礼をした。
「良い名だな。今後も誠心誠意お互いに尽くすように」
「「はい、ありがたきお言葉感謝いたします」」
ボクとミアがそう答えると父は、くくくと笑った。
「ほれ、厄介なやつがこちらを睨んでおる。挨拶に行くがいい」
小声でそう言って、目線で示した場所にはスウィーニー侯爵が立っている。
ボクとミアは互いに見つめ合い小さく苦笑した。
父に促されたのもあって、すぐにスウィーニー侯爵へと挨拶に伺った。
「スウィーニー侯爵、この度は……」
「むう」
この人諦めが悪いなぁ。公の場で王族の会話を遮るとは、いや、唸っただけだからセーフ?
「婚約を許していただき……」
「むうう」
溺愛してる娘だし唸っても仕方ないけどね?
「ありがとうございます」
「と・う・さ・ま!」
「う、うむ」
ミアの声掛けでスウィーニー侯爵の唸り声は止まったが、眉間のシワはどうにもならなそうだ。
「スウィーニー侯爵以上に大事にしますので、安心してください」
「う、む……」
まともな会話は出来ないだろうと判断して、早々に離れることにした。
まぁ、一応挨拶したしいいかな。いいよね。
ミアを連れて、周囲にいた他の貴族たちに声をかけ、おめでとうと言わせて歩いた。
こういう時は社交辞令だとしても祝いの言葉を述べないとならない。
普通の貴族に生まれたとしても面倒くさそうだ……。
貴族たちの間から、目立つ2人を見つけた。
マイン兄とミリア義姉の新婚夫婦だ。
2人はボクとミア以上にベッタリで甘々だという噂だ。
自称側室候補が出現しても2人のラブラブに当てられて退散するという。ある意味、恐ろしい。
「ジルクス、婚約おめでとう」
「ジルクスく…殿下、おめでとうございます」
ミリア義姉は普段はボクのことくん付けだから、こういう場でもつい出そうになるんだなぁ。
「ありがとうございます。改めて紹介させてください。婚約者のミアです」
「ミア・フォン・スウィーニーでございます。お二人のような仲睦まじい関係を目指しております。ぜひ秘訣などございましたら、ご教授願えれば、と」
み、ミアさんとんでもないこと言いましたね。
この後の展開が想像できてしまったため、ボクは黙ってしまった。
ミアの言葉で目がキラキラと輝きだしたミリア義姉は、小声で言った。
「では、本日は王宮に泊まっていただかないとね」
意味が理解できていないようでミアはキョトンとした顔を一瞬した。すぐに元の微笑に戻って念波を送ってきた。
【どういう意味!?】
【そのままの意味だよ。別名女子会】
【女子会か!楽しそう!】
ミアは女子会楽しめる派だったか。前世のボクは楽しめない派だったので、思い出すだけでも顔が引きつる。
特にミリア義姉の女子会は、シェライラ様やシルル、女官長とかメンバーが濃いしなぁ。
こういう時、男で良かった!ってすごく思う。
その後も兄夫婦としばらく話をしていたのだが、横から声をかけられた。
「ジルクス兄様!ミア義姉様!!」
横から入ってこれるツワモノは、シルルだった。そのシルルの背後には、王立学院で取り巻きをしていた男女が付いてきている。もちろん、サイラスもいる……。バカなやつめ。
ネエサマと呼ばれたことでミアの顔が赤くなった。
あ、デジャヴ。
「婚約おめでとうございます!」
「ありがとうございます、シルル殿下」
ミアとシルルはボクの知らないうちに知り合いになっていて、結構仲が良かったりする。婚約披露宴の前に個別で報告した時には、ボクがいたにも関わらず、ミアとシルルが手を取り合って喜んでいた。
「シルルちゃんも今夜はゆっくりお話ししましょうね」
ミリア義姉が小声でそういうとすぐに理解できたようで、シルルはニヤッとして頷いた。
ボクはチラッとサイラスの顔を盗み見た。
サイラスは来月から、新米近衛兵として王宮で働くことになっているそうだ。
新米近衛兵は夜会の警備を担当するようになり、ほとんど社交の場に出れなくなる。
言い換えれば、出会いの場がなくなるんだから今夜のうちにシルル以外にも目を向けたほうがいいと思うんだけどなぁ。
一生独身でも貫くのだろうか。
大方挨拶が済んだところで、ミアの腰を取りダンスフロアへ進んだ。
ゆったりとした曲……ミアと初めて踊った時の曲が流れた。
『ミア、覚えてる?初めて踊った曲だよ』
『そうだったっけ?』
『ゴスロリに驚いて最後まで踊れなかった曲だよ』
『ああ〜その後テラスへ行ったんだっけ』
『そうそう。隔離も閉鎖も掛けれないから、こうやって日本語で話してたよね』
2人で笑い合いながら、思い出話に花を咲かせる。付き合いが長いんだなぁって実感する瞬間でもある。
ふと、思いついた。
『……あのさ、いきなりなんだけど』
『はい?』
ミアも察したようで、笑いを堪えつつ答えてくれた。
『ミア嬢さえよければ、友達になってくれないかな?』
『で、殿下と友達ですか!?』
あの時のセリフを一字一句違えずに言えば、同じように答えてくれる。
『あ、恋人の方がよかった?』
『お嫁さんがいいです!』
まさか、そうくるとは思わなくて、吹き出してしまった。
ミアも笑いを堪えられずに下を向いて肩を震わせている。
今回もこの曲は踊りきれないようで、輪から外れてテラスへ向かった。
『そうくるとは思わなかったよ!』
素直に伝えれば、ミアはにっこり笑いながら言った。
『あの時の仕返しできてよかったー!』
『仕返しだったのか。じゃあ仕方ないな』
これからもこうやって笑い合いつつ楽しく過ごせていけたらいいなぁ。
これにて2章終わりです
一旦、完結とさせていただきました
毎日更新って非常に辛かったです
ストック無くなりそうになるとお腹下すし、精神的にヤバイっす
毎日更新してる作家さんすげぇって尊敬と感謝の日々でした
気が向いたら、1章の修正とか3章書いたりとかしたいです
ですが!今は体調整えたいと思います(苦笑
活動報告にちょっとしたアンケートもどきがあります
よかったたら、答えてほしいです
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!
感想くださった方、どんな内容でも励みになりました!
悪く書かれても、自分じゃ気付けないことを指摘されて驚くこともあったし、凹むこともあったし、むかつくー!ってなったこともありました
良く書かれても、嬉しいんだか恥ずかしいんだかわけがわからないまま、部屋でクネクネ踊ってました
毎日のアクセス数もポイント数も驚きすぎておかしくなりかけました
いや、数日おかしかったです………
本当に皆さんのおかげで良い経験ができました
心から、ありがとう! です
最後に、
最初から最後まで助言をくれた貴方に多大な感謝を!
貴方がいなかったら、途中で書くの辞めてたと思うよ!!
ありがとうね!!