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40.外堀から埋めました

父に頼んだものが数日後に届いた。

それを携えて、ミアと共にスウィーニー侯爵家へと向かった。


執事やメイドたちは快く家に入れてくれて、すぐに応接室へ案内してくれた。

態度も丁寧だし、なおかついい動きもしている。さすが侯爵家の者だと思えるほどだ。


紅茶と茶菓子を出されて、紅茶が冷めるまで待ったがなかなかスウィーニー侯爵は現れない。

あまりに遅いので、3人掛けのソファーで片方の腕はミアの腰へと回し、もう片方の手は恋人つなぎでしっかりとつなぎ、向かい合ってみた。

ミアは照れながらも嬉しそうに笑った。


【ねぇミア気付いてる?】


念波を送るとミアにしては珍しくにんまりと笑った。


【もちろん!】

【あれで隠れている振りなのかな】


実は応接室へ案内された後、紅茶が運ばれるときにカートに隠れるようにしてスウィーニー侯爵は部屋の中に入ってきたのだ。

それをボクとミアは気づかないふりしている。

腰に腕を回したり、手を繋いだりするたびに、ガサガサ動いていて笑いを堪えるのが大変すぎる!


ボクは繋いだ手を引き寄せ、抱きしめようとした。


「それ以上はならん!!」


スウィーニー侯爵はそう言って、カートの影から飛び出してきた。


【ミアのお父さんって変わってるね】

【私が絡むといつもおかしくなっちゃうのよね】


見つめ合ったまま笑いあっていると、ごほんという咳払いが聞こえた。

仕方なく繋いだ手を離し、挨拶をした。


「お久しぶりです、スウィーニー侯爵。話があって伺わせてもらいました」


そう言うとスウィーニー侯爵の額に青筋が浮かんだ。この先の言葉が分かっているのかもしれない。


「先日ミアさんと恋人になりまして……」

「許さん!」


本題の前で止められてしまった。

本来であれば、王族の話を遮るとか問題になるのだけれど、こういう場であれば大目に見るものだろう。


「私がジルのこと好きなんです。父様許して?」


ミアが上目遣いにスウィーニー侯爵を見れば、苦いものを噛み締めたような顔になった。


「いや、だが」

「好きな人と離れ離れにするようなことを父様はおっしゃったりしませんよね?」

「いや、そのな」

「まさか、おっしゃるんですか?そんな父様は嫌いです」

「いやいや!そうは言っていない。……言ってはいないが、王子の嫁になったらかわいいミアが苦労するのだよ。大変なんだぞ?」


ミアとスウィーニー侯爵との力関係はミアの方が上のようだ。


「ボクは王太子ではないですし、王弟になる予定はありますがミアにそんな大変な思いはさせませんよ」

「お前には聞いていない」

「父様、不敬罪ですよ!」

「むう」


スウィーニー侯爵は不機嫌そうな顔で黙っていた。

普通に説得は、もう面倒だしいいかなぁと思って、王宮から届いた書状を渡した。


スウィーニー侯爵は嫌そうな顔をして書状を受け取り、封蝋を見てさらに唸った。


「むう!!」


封蝋の紋章は、国王陛下のものだからだ。

王家の紋章ではなく、国王個人の紋章……つまり、国王個人絡みの内容か国王直々のお願いかそれに近いものだ。


ぶっちゃけ直々のお願い(・・・)というか脅しというか。


父に頼んだのは、スウィーニー侯爵にミアをボクの婚約者として推薦するという内容のもの。

断れば、反逆罪に問われかねない代物だった。


ボクはミアのことを諦めるつもりはないし、ミアとずっと一緒にいるためならなんだって利用する。

ずるいと言われても譲れない。



スウィーニー侯爵は目を伏せて長く沈黙していたが、大きく息を吐き言った。


「ミアの気持ちを優先する。ミアのためだ。決してお前のためでもないし、許してもいないからな!」

「父様、ありがとう!」

「ミアの気持ちを教えておくれ」

「私はジルクス殿下と婚約したいと思っています。ゆくゆくは結婚もしてずっと一緒にいたいです」


ミアの言葉のぐっときてしまった。

スウィーニー侯爵も感慨深げにミアを見ていた。


「スウィーニー侯爵。ミア嬢との婚約させていただきたい」


姿勢を正してそう伝えれば、スウィーニー侯爵は心底嫌そうな顔をしつつも答えた。


「世界で一番かわいい娘をどうかよろしく頼む」


こうして、スウィーニー侯爵の許可も得られたので、王宮へ婚約の書類を提出することができた。


「婚約披露宴はミアが王立学院を卒業してからにしてくれ」


スウィーニー侯爵がそう願ったので、その通りに行う予定だ。





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