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36.閑話:ミアの悩み

「ごめんなさい」「考える時間をください」って言って逃げだしたのがさっき。


寮に帰ってきて布団に入ったけど、さっきジルに言われた言葉が頭の中を回ってて眠れない。


「ミア、これから先もずっと一緒にいてくれない?」

「ミアの全部が好きなんだ。だからずっとそばにいてほしい」


ジルの言葉は本当に嬉しかった。

薄々好意を持たれているとは思ってた。

そりゃそうでしょ。

愛おしそうに見つめてきたり、意味ありげな蕩けそうな笑みを浮かべてきたり、よくよく思い返せばスキンシップが増えてるし……。


思い出せば出すほど、恥ずかしくて布団の中で悶えた。

同室のルイちゃんに睡眠スリープかかっててよかった。絶対起きてきて問い詰めてくるもん!


出会った時は、乙女ゲーのヒロインと攻略対象者みたいな感覚でワクワクしたけど、好き(like)であって好き(love)じゃなかった。

そうだ、初対面なのに額にキスされたんだった……。


家庭教師になってもらって、一緒に過ごしているのは楽しかった。

懐かしく感じるスイーツを2人で食べて感想を言い合ったり、他にどんなものが食べたいとか話したっけ。

初めて治癒術を使って倒れた時、膝枕してもらったなぁ……。


ジルに成長期?思春期?が訪れて、避けられている間は寂しくて悔しくて会いたくて辛かった。

会いに行ってみれば、変な人に絡まれて魔力の暴走しちゃって……。魔力の暴走を起こすような女の子は嫌われてもおかしくないのに、ジルは怒らなかった。怒るどころか心配してくれて、謝ってくれた。

暴走を抑えるのに人前で思いっきり抱きしめられたんだっけ……。


それから、誕生日のお祝いに涙型の魔石付きのイヤーカフをもらって、毎日念波でお話するようになった。

私のは碧色の魔石、ジルのは紅色の魔石で色違いでお揃いっていうのがすごく嬉しかった。

どっちもお互いの瞳の色っていうのもよかったなぁ……。


卒業後の進路を聞いたら、「世界中を旅する」って言ってた。

それはジルらしいなぁと思うと同時にいなくなっちゃうんだって心に穴が開いた気がした。

ジルに言われてそれが寂しいってことだって再認識させられたんだっけ。

ジルがいなくなるのも置いていかれるのもすごく嫌だと思った。

あ、ミルクレープをあーんって食べさせられて恥ずかしいけど嬉しかったなぁ……。


先月のカーマイン王太子殿下の結婚披露宴では、ジルが他の人とダンスを踊っているのにショックを受けたっけ。あんなに終始ニコニコとしているジルを見るのは初めてだったし、私以外の人と踊っている姿を見るのも初めてだったし……。

見ているのが嫌で目を逸らしたかったけど、逸らすのも悔しくて、ムッとした顔にならないように必死で自分を抑えてるしかなかった。あれはどう考えたって嫉妬だった。

披露宴のテラスの時って、壁ドンに近かったようなぁ……。


ジルはいつも私とだけ踊ってくれていたんだ。他の人に取られるなんて考えたことなかったんだ。一番近くにいて、ずっとそばにいるのは私だと思ったんだ。


思い出しては悶えてを繰り返していた時、あ!っと思った。


ジルから何をされても嫌だなって思ったことないや。

むしろ、心地よいような。もっと触れて欲しい時さえあったような。


ああそっか、私もジルのこと好きなんだ。


好きだと自覚してから、さっき言われた言葉を思い返すとくすっと笑ってしまった。


ジルの気持ちが私に向いてるとわかって嬉しい。

ずっと一緒にいたいって思ってくれてるのが嬉しい。

そばにいたいって言ってくれるのが嬉しい。


思い出して嬉しい気持ちでいっぱいになったのに、あれれ?と思った。


卒業したら、世界中を旅したいって言ってたよね。

私が魔法学院に入って卒業するまで、どうするんだろう?

2年間離れるのかな。そばにいてくれないじゃない。いつでも念波があるからって安心していいの?もし待っている間に、旅先でいい人に出会ったりしないのかな。


恋人になった後のことを考え出したら、悪いことばかり思いついて……そんなことをぐるぐる考えていたら、熱が出た。



結局、3日間も熱を出して寝込んでしまった。

魔力熱というやつで魔力が不安定になって熱が出るというもの。治癒ヒールは効かないらしく、ゆっくり寝ているように言われた。

魔力を安定させるために、言われた通り大人しく寝ているとかつまらない。


寝ているだけなのも暇だから、念波を送ろうとしたけど送れなかった。

イヤーカフに魔力を込めようとしてもうまくいかず、熱を発してくれないには驚いた。

もしかしたら、受信もできてなかったのかもしれない……。


ジルは私のこと諦めたりして?ごめんなさいって言ったから断られたと思っていたりして?

否定的な考えがたくさん出てきたけど、それを遠くに追いやって3日ぶりに念波を送った。

イヤーカフが熱を持って熱くなる。


【ジル?聞こえますか?】

【ミア!?聞こえるよ!魔石が壊れたかと思ってたよ】

【実は、3日ほど熱を出して寝込んでまして……】

【えええ!?今はもう大丈夫なの?】

【うん、大丈夫。なんか魔力熱ってもので魔力が不安定になるんだって。だから念波が送れなかったみたい】

【そうなのか。こっちからも送ってたけど、届いてなかったみたいだね】


久々のジルの声に安心と同時にニヤついてしまった。

その後、告白の件には一切触れず、他愛もない話をして終わった。

私の方から言い出さない限りは待ってくれるということかな。



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