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35.思い通りにはいかないようです

冬の休暇が終わり、年が変わった。

マイン兄の結婚披露宴以来、ミアとは会えていない。と言っても、毎夜の念波は欠かしていないけど。

ミアの父であるスウィーニー侯爵が護衛と称した監視をつけて、ボクと会えないようにしているようだ。

きっと、授業が始まってしまえば会えるだろうけど。


と思っていたのだが、授業が始まってもなかなか会えないでいた。

念波を送り確認したところ、休息日に出かけようとすると王立学院の門前で護衛が待ち構えており、出られないと。

試しに出てみたら、無理矢理馬車に乗せられて王都のスウィーニー侯爵別宅に監禁されたらしい。休息日が終わる日の夜に解放されて、寮へ戻されるのだそうだ。


思い当たることといえば、侯爵の目の前でダンスに誘ったことだろう。

アレ本気だったんだなぁ。

だけれど、ボクだって本気なのだ。



休息日初日の夜、王立学院の就寝時間が過ぎた頃にミアの部屋を訪れた。

と言っても、真正面からではない。

3階の窓の外から、大人しめの音でノックをすると内側から窓が開いた。


【同室の子はぐっすり?】

【うん、睡眠スリープかけておいたから、しばらく起きないよ】

【それじゃ、行こうか】


そう言って、窓際に立つミアの手を取った。

ふわりと宙に浮くとミアがボクの腰にしがみついた。


【聞いてはいたけど、やっぱり怖いよ!】

【あとで教えてあげるから、少しだけ頑張って】


ミアの恐怖を和らげるためにも、膝裏をすくい抱き上げた。


【これならどう?】

【お、お姫様抱っこも怖いからぁぁ!】


ミアはボクの首にしがみついた。

育ってきた柔らかな胸が当たるとか柑橘系の甘い香りがするとか黙っておこう。


ゆっくりと屋根の上まで飛んで止まった。


【本当に空を飛べるんだね】


ミアは落ち着いてきたようでしがみついている腕を緩ませて屋根の上に降り立った。


前にミアとステータスの見せ合いっこをした時に、スキルの数が異様に増えていることに気付いた。それの原因を探った結果、職業:転生者は、鑑定・隠蔽・創造・ラーニングに特化しているようで、存在しないスキルや魔法を創り出すことと覚えたいスキルや魔法を即座に覚えることが可能なようだ。

存在しているスキルや魔法は創れないし、覚えられない。


先日、マイン兄の結婚披露宴で竜人の飛行スキルを見て覚えたので、空も飛べるようになったという。

そのことを話したら、ぜひ覚えたいということで夜の密会となった。


【ステータス表示の隠蔽を解除するから、ボクのステータス見てね】

【うん、わかった】


ミアのためにステータス表示の隠蔽を解いてしばらく待った。


【覚えられた?】

【えっと……覚えられた!】


ミアは嬉しそうに笑い、すぐにその場で試し始めた。初めての飛行は慣れるまでふらふらとした動きになる。

何度も、頭一つ分くらい浮いては降りるを繰り返していると、ミアのほうから手をつないできた。


【怖いから繋いでいてね!】


そういうとふわりとボクの腰くらいまで浮いた。

それに合わせてボクもふわりと浮かび、夜空の散歩を開始した。


王立学院の寮の屋根の上から、貴族街へ。貴族街から平民街の商業区へ。商業区から城門へ。

そうしてそのまま王都の外へ出て、くるりと振り返り高高度から王都を一望した。


街の明かりが幻想的でとても綺麗だ。

ミアも同じことを思っているのかもしれない。

キラキラとした目で景色を見ている。

2人とも言葉もなしに景色を眺めていた。


あ、今ってチャンスなんじゃないかな。

ふと、思った。

ボクの気持ちを言葉にするチャンスなのだと。

ここには誰もいないし、誰にも聞かれることもない。

そう考え始めたら、心臓の音が大きくなった。


「ミア」

「ん?なぁに?」


ミアはボクの顔を見て、小首を傾げた。先ほどまで嬉しそうに景色を眺めていたその目がボクを見ている。

もう片方の手もつなぎ向かい合わせになって言った。


「ミア、これから先もずっと一緒にいてくれない?」


つないだ手に力を込めた。


「え?」

「ミアの全部が好きなんだ。だからずっとそばにいてほしい」


そう言い切ったのだが、ミアは真顔のまま身動き一つしなかった。きっと、驚いたんだと思う。

沈黙している時間は短かったはずだが、とてもとても長く感じた。時が止まったのかとさえ思った。


「ごめんなさい」


今度はボクが驚く番だった。驚きすぎて、声を出すことができなかった。


「……考える時間をください」


ミアはそういうと、つないだ手を解き1人で逃げるように帰っていった。

ボクはその場から動くことができなかった。



あと7話くらいで2章終わります。

最後までお付き合いよろしくお願いします!

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