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34.もともと我慢するのは苦手です

(2/2)

招待客への挨拶も終わり、次は国内の貴族たちへの挨拶だ。


ここからは爵位に関わらず、気に入った人から話しかけてもいいだろう。いや、むしろいいってことにしよう。

というわけで、ミアだ、ミア!!


ミアは父であるスウィーニー侯爵と一緒にいた。

今日のミアは薄いピンク色の一見シンプルに見えるドレスを着ていた。細かな刺繍が大量にしてある。


「スウィーニー侯爵」

「ジルクス殿下、お久しぶりでございます。先日はありがとうございました」

「ありがとうございました」


侯爵とミアにお礼を言われたが、なんのことだかわからず首を傾けてしまった。


「教会の件ですよ。候補から外すように仰っていただけたようで」

「ああ、ボクとしても困るからね」


ミアが聖女になり、教会に利用されるなんて許せない。

侯爵の言葉ににこにこと答えた。

その後も侯爵と他愛のない話をしていたのだが、ミアがボクの顔を見てくれない。

少しムッとしているようにも感じる。

どうしても気になって、視線がミアのほうを向いてしまう。


「ミア嬢…ボクと踊っていただけませんか?」


こっちを見てほしくて、侯爵の前でダンスに誘った。

それには侯爵が驚いていた。以前から、ミアのこと誘ってるって知らなかったのかな。


「……喜んでお受けいたします」


ミアの返事が固く、よそよそしい感じがする。どうしちゃったんだ!?

焦る気持ちを見せないように、そっとミアの腰に手を回し、ダンスフロアへと向かう。

背後から


「……娘はやらんぞ」


という声が聞こえた気がしないでもない。


ちょうどゆったりとした曲が流れていたので、長く踊れそうだ。

じっと見つめながら踊っていると観念したのかミアも目を合わせてくれた。

だが、口がとがってる。怒ってるとか拗ねているとかそんな感じだ。


「ミーア、どうしたの?」


声をかけても返事をくれない。


『怒ってるの?ボク何か悪いことした?』


今度は日本語で話しかけてみるものの、やはり返事がない。

ボクは笑顔で踊っているのに、ミアは拗ねた表情のままだ。

大きくため息をついて、今度は念波を送った。


【ミア~、言わないと伝わらないよ~】

【……だって】

【だって?】

【ジルが楽しそうに他の人と踊ってるんだもん】


ミアの言葉でボクは一瞬、真顔になってしまった。酢を飲んだような顔ってやつだろうか。

これって、怒ってるんじゃない。拗ねてるというか……やきもちか!

理解できた途端、蕩けるような笑みを浮かべてしまった。


【ミア、かわいいなぁ】

【はぐらかさないでくださいー!】

【さっきまで踊っていたのは近隣の姫たちで、向こうから誘われて断れなかっただけ。ボクが誘ったのはミアだけだよ】


ミアのこの状態が嬉しくて、蕩けるような笑みをやめれなかった。

このまま抱きしめて連れて帰りたくなる。

そんなことはできないから、せめてこの後テラスで一緒に休憩くらいはさせてもらおう。


ミアはまだ目を泳がせて、ぎこちない笑みを浮かべていた。


踊り終わると、ミアの手を掴んだままダンスフロアからテラスへと直行した。

壁際にもたれるように立たせて並んだ。手は掴んだまま離さなかった。

顔を合わせずに念波で話しかける。


【ミアはかわいいね】

【かわいくなんか、ない】

【そんなことないよ。今日のドレス姿だって、可愛い】

【ドレスが可愛いだけだよ】

【フロアのどこにいたって可愛いミアのことは見つけられるよ】

【……】


そっとミアを見れば、耳を赤くして俯いていた。

月の光が反射していつもよりも艶やかに見える黒髪を撫でて梳いた。

何度も梳いているうちにおずおずとミアが顔を上げ、こちらを向いた。


【ジルだって、かっこいい。どこにいたって見つけられるよ】

【ありがとう】


そんなことを言うから可愛いんだってば。

少し潤んだ目が愛しくてたまらなくて、黒髪をすくってキスを落とした。

ミアはそれに驚いていたけれど、壁にもたれているから後ずさることはできない。


【そうやって驚いた顔も可愛いし、さっきの拗ねた顔も可愛いんだよ】

【……!】


拗ねてるってやきもち焼いてたって自覚してくれたかな。

少しでもボクのこと……想ってくれているって思ってもいいかな?


そのまま腕をミアの肩に回し、胸に引き寄せた。

ボクの心臓の音がきこえているかもしれない。伝わっても構わない。

ボクはミアが好きだから。

そーっとミアの額にキスをした。

体を硬直させているのがわかる。でも、抵抗しないし離れてもいかない。


あー我慢できないや。

反対の腕もミアの肩に回して、ぎゅっと抱きしめた。


【ごめんね。ミアが足りなくて、補充~】


しばらく抱きしめた後、離れた。

ミアはぼーっとした様子で呆けているような蕩けているような顔になった。


言葉にしていないけれど、ボクの気持ちがミアに伝わったハズ。たぶん、きっと……。




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