32.卒業後の進路を伝えてみました
聖女様候補の騒動がひと段落して、気持ちに余裕ができたのでいつものティールームでミアと卒業後の進路について話した。
「ミアは王立学院を卒業したら、どうするの?」
「もちろん、魔法学院へ入ります!」
毎週、魔法を教えたり魔法についての雑談したりの日々だしね。そうだろうと思ってた。
「ステータス的にもそうだと思ったよ」
ミアとボクの場合、ステータスを隠蔽すると互いに全く見えなくなる。本人の意思で隠蔽を解除すれば、見せ合うことが可能なのを先日知った。
その時見たミアのステータスは、正直チートだと思った。いや、ボク自身もチートだけれど。
ミアは、職業:スウィーニー侯爵家長女・転生者・治癒師・聖女になっているのだ。
こんなものが教会の連中に見られたら、利用どころか祭り上げられて本拠地である聖地から一歩も出してもらえない可能性だってある。
ボクは、職業:セリーヌ王国第二王子・転生者・治癒師・魔術師・薬師・賢者になっていた。
いつの間にか賢者になってたよ。薬師は診療所や救護室で薬師の手伝いをしていたからだろう。
「ジルはどうするの?」
興味津々といった目で見つめられると少し恥ずかしくなった。
「ボクは世界中を旅しようと思ってる」
「え!?」
「まずは国内から見てまわるつもりだよ」
できれば、いや絶対にミアにもついてきてほしい。と、思ってはいるが言い出しづらかった。
ミアは、目をパチパチと瞬かせたまま無言になった。
そしてだんだんと怒っているような?いや、凹んでいるようなしょげているような?
「ミ、ミア~?」
声を掛けても無言だった。ミアの状態異常は隠蔽されていてわからない。
ミアの目線はテーブルの上を彷徨っているようであり、何もうつしていないようでもあった。
一体何を考えているんだろうか。
ここは余裕のある大人の対応をすべきところかな。
「どうしたの?」
そう言いつつも、ボクは食べかけのミルクレープを一口すくい、ミアの口元へ運んだ。
ミアは驚いてボクの顔を見た。
「食べて?」
にっこり微笑んで言えば、素直にあーんっと口を開けて食べた。
近くのテーブルの人たちがヒソヒソと何か言っている気がするが何もなかった聞いてない。
「おいしい?」
ミアは頬を赤らめながら、ゆっくりと小さく頷いた。
これで少しは落ち着いたかな。ボクの顔を見てくれるかな。
期待を膨らませて、にこにことしながらミアを見れば、ぷくーっと頬が膨らんだ。
「もう!誤魔化されないから!」
「誤魔化してなんかいないよ。こっちを向いてほしかっただけだから」
「ぁぅ……」
小さく呻く声が聞こえた気がするが何もなかった聞いてない。
「どうしたの?」
もう一度聞いてみれば、観念したかのように答えた。
「置いて行かれるの嫌だなって……」
その言葉を聞いて、ニヤニヤしないわけがない。ミアも一緒にいたいと思ってくれているのだから。
「2年早く生まれていたら、ジルと学校にも通えたのにって……」
ああもう、ミアってば可愛すぎるよ。
ここがティールームじゃなければ、頭や髪を撫でてるんだけどなぁ、残念。
「ボクはミアより少し早くに生まれたから、ミアの先生になれたんだって思ってるよ」
「そう、なんだけど……」
「まずは国内からだし、週末には必ず帰るようにするから。今までと同じくらいは会えるようにするよ」
「……うん」
「ボクたちには念波もあるから、いつでも連絡とれるよ」
「……うん」
「それでも寂しい?」
「……!」
ミアは驚いた顔をして、すぐ俯いた。寂しいと感じているって気付いていなかったのかな。
結局この日は、ミアを慰めて一日が終わった。
ごめんなさい………話の都合上、ミアが次女だとまとまらないので長女に変更しました。