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24.謝罪の意味も込めてプレゼントしました

翌週、ミア嬢と会うのはなぜだか緊張した。

いや、なぜかはわかっている。

初めてプレゼントを用意したからだ。


ミア嬢からはクッキーやマドレーヌ、スコーンといったお菓子を毎週もらっていたけれど、ボクは今まで一度もプレゼントをしたことがなかった。

気に入ってもらえるか喜んでもらえるかを考えたら、緊張してしまったのだ。


ドキドキしながら、いつものティールームで紅茶を飲んでいるといつものようにミア嬢が現れた。

そして、いつものように追加の紅茶とスイーツを頼んだ。


あ、そうだ。


「ねぇ、ミアの誕生日っていつ?」

「え?えーっと……」


なぜかミアは少し顔を赤くして黙った。

誕生日って聞いたらマズイことだっけ?と動揺するボクがいた。

内心焦りながらも、少し首を傾けて続きを待っているとミア嬢は言いづらそうにしながら言った。


「あの……明日なんです」

「なんだとー!」


ついつい突っ込みを入れてしまった。

いつもは心の中で突っ込みを入れて済ませているのに!

いやいやそれよりも、これってすごいタイムリーじゃないか!

驚いたけれど、ちょうどプレゼントを用意している自分を褒めたくなった。


「それなら、ちょうどよかったかな?これ、この間のお詫びも兼ねて……」


そう言ってポケットから小さな箱を取り出して渡した。

ミア嬢は目を見開いて驚いている。

おそるおそるといった感じで、テーブルの上に置いた小さな箱に触れた。

箱のリボンをほどき、開けるとそこには碧色の涙型の魔石がついたイヤーカフが入っている。


「可愛い!」


ミア嬢が真っ先にそう言ってくれた。


「ああ、よかった。それ実は普通のイヤーカフじゃないんだ」

「え?」


ボクはポケットからもう1つのイヤーカフを取り出した。

もちろん、ミア嬢の瞳の色と同じ紅色の涙型の魔石がついたものだ。


「こっち紅色のとミア嬢の持ってる碧色で、通話っぽいことができるんだ」

「えええ!?」

「つけてあげる」


ミア嬢の手のひらから、碧色の涙型の魔石がぷらんと下がったイヤーカフを取った。

左耳にかかった髪を避け、そっち耳の上のほうにはめる。

同じようにボクの左耳にも、紅色の魔石がついたイヤーカフをつける。


そして、心の中で念じた。

念じると少しだけ、耳についたイヤーカフが熱を持つ。


【聞こえる?】

「え?」

「心の中で、ボクに話しかけようとしてみて?」


ミア嬢はボクの顔をじっと見ながら、伝えてきた。


【聞こえますか?】

【うん、聞こえるよ】

【これすごいですね!ありがとうございます!】

【気に入ってもらえたかな】

【もちろんですよ。こんなすごい物をくださるなんて】

【ねぇ、ミア】

【はい?】

【誰にも聞こえないから、素で話していいんだよ?】

【ぁぅ……】

【ね?】

【わかりました…じゃない。わかったぁ!涙型のアクセサリー大好きなの。ジルってばセンス良すぎ~!】

【よく身に着けてるもんね】

【うん!ジルは私のことよく見てるんだね】

【もちろんだよ】


ティールームで2人で向かい合ってただ、無言で見つめ合ってる。

ように見えて、心と心で会話してるなんて、誰も気づかないだろうなぁ。

ついつい、ニヤついてしまった。


そのままずっと、ティールームで雑談をしていた。

アクセサリー型の魔道具の存在をミア嬢も知らなかったようで、熱心に聞いてきた。

実はツヤツヤ魔法のアクセサリーがたくさん売ってたって話したら、今度連れて行ってと言われてしまった。

本当に、ミア嬢にはそんな魔法いらないと思うんだけどなぁ。



そしてその日の夜から、日課ができた。


ボクは魔法学院の寄宿舎の自室のベッドの上に寝転んだ。

たぶん、王立学院の寮ではもう就寝時間になる頃だ。


【ミア、聞こえる?】

【聞こえるよ~。離れてても聞こえるんだね~】

【そうみたいだね。ちょっと不安だったんだ。よかった】

【ジルも不安になることってあるんだ】

【ボクだって普通の13歳の少年だよ?】

【あはは。私ももうすぐ11歳の少女だよ】

【……毎日さ、こうやって眠る前に話ができたらいいな】

【いいね!おやすみって言えるのいい】

【もう就寝時間だよね。寝なきゃだね】

【そうなの。部屋も廊下も真っ暗なんだよ~】

【朝も早いし、そろそろ切るよ】

【……うん】

【おやすみ、ミア】

【おやすみなさい、ジル】


イヤーカフの熱がすっかり冷めて、念波が切れたことがわかる。

毎日、こうやってミア嬢の……ミアの声を聴いてから眠れるなんて!

ニヤニヤしてしまうのは仕方がない。

ここには誰もいないし、布団を抱えながら存分にニヤついた。



そして、翌日の朝、起きてすぐ忙しいとは思ってはいたが、念波を送った。


【ミア、おはよう】

【おはようございます~】

【まだ、眠そうだね】

【寝起きです~】

【ミーア、お誕生日おめでとう!】

【あ、ありがとうございます~!】

【一番に伝えられたかな?】

【うん、一番です!】


えへへと笑っているミアの顔を思い出した。

きっと、すごく照れているに違いない。


【今日はいつもよりもいいことがありそう!】

【ボクもそう思うよ。忙しい時にごめんね】

【大丈夫!】

【また、夜にね?】

【うん!】


念波を切って、ニヤけ顔が直らないまま、食堂へと向かった。



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