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22.簡単な魔法も練習しましょう

約束通り、次の休息日からミア嬢の家庭教師を再開した。

治癒術はもう十分だろうと思い、他の魔法を教えることにした。

まずは基礎からの話になるので、いつものティールームでお茶をしながら説明した。


「治癒術以外で覚えたい魔法ってあったよね?」

「木の上に引っかかった帽子が取れるような魔法や、お花を植える時に小さく土に穴を空けるような魔法のことですね」

「今日はその魔法について説明するよ」


ミア嬢はいつになく真剣な表情でボクの話を聞いている。


「ミア嬢が覚えたいと思っている魔法は、この世界では魔術…つまり、攻撃魔法に分類されるんだ」

「え?」

「他人を傷つけるような魔法は使いたくないと言っていたけど、ミア嬢の願いを叶えると覚えてしまう。使えるようになってしまうということは念頭に入れておいてほしい」

「……はい」


しょぼんという言葉が似合うくらいにミア嬢が沈んでいった。


「傷つけるような使い方をしなければいい話だから、ね?」


沈んでいた顔が浮上していく様を見ているとボクまで浮上してしまう。

もっと喜んだ顔が見たいなぁ。


「わかりました」

「あと注意点として、この世界の常識では、『魔術は攻撃する魔法』だから」

「?」


意味がわからないだろうと思って話しているけれど、ミア嬢の不思議そうな顔が見れたからヨシ!


「攻撃以外の用途に使えるって、誰も思ってないみたいなんだ。だから、他人に見られると奇異な目で見られるから、それは覚悟して?」

「はい」


そこから初級魔法の突風と土凹を教えた。

突風ガストオブウインドは、対象者に強い風を当て転ばせる魔法。

土凹グラウンドコンケイブは、対象者の足元に小さな窪みを作り転ばせる魔法。

どちらも好きな子ほどいじめたい男の子が考え出したと言われている。


「この2つを威力を弱めて、対象者って部分を対象物に変えれば使えるはずだよ」

「試してみたいですね」

「そうだね。試してみようか」


ボクとミア嬢は店を出た。

出てから、10歩くらい離れて振り返った。


「それじゃ、ティールームの建物の上にある風見鶏を動かしてみるね」

「はい」


風見鶏が優しくくるくると回る様を想像しながら唱えた。


「……突風ガストオブウインド


ふわっと風が吹き、くるりくるりと風見鶏が回った。


「回りましたね!」

「思ったよりも少しゆっくりだったけどね。力を入れすぎると風見鶏壊れちゃうから。はい、ミアもやってみて」

「はーい」


間延びした返事が可愛らしい。

いつもよりも可愛らしく感じて仕方ない。


「……突風ガストオブウインド)


ぶわっと風が吹くと風見鶏が勢いよく回転した。

もう少し力を入れていたら、吹き飛んでいたかもしれない。


「ち、力入りすぎちゃいました!」

「壊れてないから、大丈夫だよ」


にっこり笑いながら、ミア嬢の頭を撫でると頰が赤くなった

どうしてだろう。前よりももっと触れたくなる。


「また移動して、試そうね」


そう言って、しれっとミア嬢の手を取って歩いた。

嫌がられてないし、いいよね。


少し歩くと公園のような場所がある。

そこならば、土凹を使っても目立たないだろう。


ベンチにハンカチを敷き、ミア嬢を座らせた。すぐ隣にボクも座る。


「ボクがここに作るから、見ていてね」

「はーい」


種を植えるなら、人差し指程度の大きさで第二関節くらいの深さでいいだろう。

あとで埋めるのだから、穴の横には掘り出した土があるべきだ。


「……土凹グラウンドコンケイブ


しっかりと想像したのもあって、想像通りの穴がベンチから30センチくらい離れた場所にできた。


ミア嬢は令嬢らしからぬ仕草でその穴の近くでしゃがみ、指を入れた。


「これです!この深さなら、ちょうどいいです。さすがジル!」


周りに人がいないのもあって、愛称を呼び捨てにしてくれる。

それがすごくくすぐったく感じた。


「さぁ、ミアもやってみて?」


ミア嬢はコクリと頷くと、ベンチに座りなおしてボクと同じように唱えた。


「……土凹グラウンドコンケイブ


ボクが作った穴の約10センチ隣に同じような穴が出来た。

先ほどのミア嬢のように今度はボクがしゃがみこみ、穴の深さを図ろうと人差し指を入れたら入らなかった。

ほんのわずかだが、小さいのだ。

代わりに小指を入れて見ればすんなりと入った。


「ねぇ、ミア?手を貸して?」

「はい?」


ボクがそう言うとミア嬢は何の疑いもなく右手を差し出してきた。

その右手にボクの左手を合わせる。


「やっぱり、結構違うんだね」

「あ、手の大きさですか」

「ボクの小指がミアの人差し指と同じくらいかな」


2人で手を見比べあった。


「あとは個人的に練習するくらいかな。他にも覚えたい魔法があれば、聞いてね」

「はい。ありがとうございます」


今日はいつもよりも早く終わってしまった。

ここで解散にしてもいいのだけれど、まだミア嬢といたい気持ちもある。

だけれど、行きたい場所がまだ行ったことのない魔道具屋だからなぁ。

できれば、エスコートして歩きたいし、今回は一人で行くことにしよう。


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