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21.暴走少女を止められるのはボクだけのようです

(3/3)

ちょうど授業が終わって校舎から寄宿舎へ移動する途中だった。

中庭が騒がしいなって思ったら、聞き覚えのある声がした。


「その制服、王立学院の学生だよね?」

「見学に来たのかな?」

「案内しようか?」

「……」


この3人は、学院内で3バカと言われていてよく面倒ごとを起こしている。

どうも3バカに誰かが絡まれているようだ。

いや、ただのお節介にも聞こえるし、どうなんだ。


「怖がらせちゃったかなー?」

「何もしないよ。案内だけだよ」

「その言い方もっと怖がるんじゃねーの」

「……」


声をかけられている人物は3人に阻まれて見えない。

何やらブツブツ言っているようには感じるけど、聞き取れない。


「おい、聞いてんのか?」

「怖がらすなってー」

「どうしたのかな?」

「……」


声をかけられている人物から怒気が感じられるような気がするんだけど、大丈夫かな。


「え?なんて言ったのー?」

「何か言ってるけど、よく聞こえないな」

「もうちょっと大きな声で言ってよ」


何だろう。嫌な予感がする。


「……見学じゃない…」


あれ?3バカよりももっと聞き覚えのある声が聞こえるよ!

驚いて声の主に近づこうとしたら、空気の流れが変わるのを感じた。

いや、これは空気じゃなくて魔力の流れかも。


「じゃあ何しに来たんだ?」

「ジル様に会いに来たの!邪魔しないで!」


慌てて近づいたけれど、間に合わなかった。

ミア嬢は大声で叫んだ。

叫ぶと同時に暴風が吹き荒れ、3バカが転がった。

遠くから野次馬として見ていた他の生徒の声が上がった。


「魔力の暴走だ!」

「誰か束縛の魔法を!」

「……束縛バインド!!」


野次馬だった男が束縛の魔法を使ったのだが、ピシャっという音とともに弾かれた。

たしか、上級魔法が使える生徒だったはず。

弾かれたことに物凄く驚くと同時に地面にへたり込んだ。

状態異常:驚愕、衝撃になっていた。

プライド折れちゃったってやつかな。

他にも何人かが同じように束縛の魔法をかけていたけれど弾かれた。


魔力の暴走を起こすほど、ミア嬢は怒っているということだろう。

とにかく今は、止めなくては……。

ボクも同じように束縛の魔法をかけた。


「……束縛バインド!!」


弾かれはしなかったけれど、効果はほとんど出ていないようだ。

少しだけ風が大人しくなっただけで、止められなかった。

暴風の中心にいるミア嬢は、自分でも止められないようで恐慌状態に陥っているように見えた。


ボクは覚悟を決めた。


「……全防御オールガード


今までより低くなった声で防御の魔法をかけた。

そして、暴風の中心へ突っ込んだ。


一歩一歩が重かったけれど、何とか吹っ飛ばされずにミア嬢を抱きしめた。

前よりもミア嬢の頭が低く感じる。


「ミア」


頭を肩に寄せて、耳元で声をかけると強張っていた体から少しだけ力が抜けた。


「……え?ジル?声が違う?」


聞き返されると何だか気恥ずかしかった。


「まずは落ち着いて……深呼吸」


ミア嬢に促しつつ、ボクも深呼吸した。

すーっはーっといった呼吸音がゆっくりと聞こえてきてくすぐったい。

気分が落ち着いてきたようで、暴風がおさまってきた。


「ミア、ごめんね」


そう声をかけると完全に風が止んだ。


周りの声が聞こえる中、ボクはミア嬢を抱きしめたままだ。

少し強めに、でも優しくギュッと抱きしめた後、離れた。


「ジ、ジルのばかぁっ!」


ミア嬢はボクの胸をポコポコと叩いた。

魔力の暴走の後で力が入らないのだろう。

全く痛みを感じなかった。


「心配したんだからぁっ!」

「ごめんってば」


叩いてくる手を両手で引き寄せてまたギュッと抱きしめた。

ミア嬢は離れようとモゾモゾ動いていたけれど、ボクは離さなかった。


「は、離してください!私、怒ってるんですよ!」


怒ってるっていうより拗ねた感じのミア嬢の声が、可愛らしく感じてしまう。

顔を綻ばせたら、力が抜けてしまった。

その隙にミア嬢は、ボクの腕からするりと離れた。


「ど、どうして、会えなかったんですか!?」

「えっと……」

「家庭教師するの嫌になったんですか!?」

「なってないよ。そうじゃなくて」


成長痛で怠かったとか、声変わりして違和感があって恥ずかしかったとか、あんな夢見ちゃったからだとか、答えはいくつもあるけれど、全部は話せない。


「声変わりして、恥ずかしかったんだよっ」

「そんなこと気になりませんよ!」

「ボクが気になるんだよ。違和感あってすごく変な感じなんだよっ」

「どんなジルでも、私は会いたかったんです!」


ミア嬢の言葉に、一瞬ドキリとしてしまった。

これって告白か?と勘違いしそうになる。

ミア嬢は拗ねているようだけれど、照れている感じはない。

さっきの言葉は、そういう意図じゃないってことか……。残念。


「次の休息日からはちゃんと行くから……ごめんね」

「ちゃんと魔法を教えてくれるなら、それでいいです!」


ミア嬢は、フンっと鼻息荒く言った。

そんな姿も可愛いなぁなんて思った。




気になる人だとは思っていたけれど、前よりも可愛いなぁなんて思ったり、ドキドキしてくるのは、夢を見たせいだろうか。


ちなみに3バカは、ミア嬢に対して親切心しか持ってません(笑

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