19.ついにボクにもきてしまったようです
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R15かな?たぶん。
新しい魔法を編み出した夜から、眠る時に膝が疼くようになった。
呻くほどの痛みが数分続くと治まる。またしばらくすると痛みが……。
そんな状態になれば、自分自身で治癒術を使うだろう。
でも、なぜか効かなかった。そして、そんな夜が数日続いた。
申し訳ないとは思ったが、気怠さに負けてその週の家庭教師はお休みって連絡を入れた。
魔法学院にも救護室はあって、治癒師に相談しに行った。
「夜寝る時に膝が痛くなる……と?」
「はい、呻くくらい痛くなって寝苦しくなります」
「それはしばらくすると治まる?」
「治まったと思うとしばらくしてまた痛みがくる時もあります」
「ふむ」
治癒師は考え込むような仕草になった。
「あと、治癒術をかけても効かないんです」
ボクのその一言で治癒師は掌に拳をポンと当てて言った。
「ああ!それ、成長痛だねー」
「!?」
治癒師のその一言にボクは目を瞬かせた。
言われてみれば、そうだ。
この症状は成長痛だ。
「不思議なものでね、成長痛には治癒術が効かないんだよー。痛みを抑えると成長が止まるとも言われているし、我慢するしかないねー」
なんだとー!成長が止まるのは困る。
普通の人より遅いような気がしないでもないが、ボクにもついに成長痛がきた。
つまり、身長が伸びるってことだ。
心の底から喜んだ……。
そして、その次の週の家庭教師もお休みって連絡を入れることになってしまった。
最初は咳が出て、風邪か?と思って治癒術を使ったけれど効かなかった。
咳が治まらないまま、ガラガラ声に変わった。
また魔法学院の治癒師に相談しに行った。
「咳が出て、声が枯れ始めた……と?」
「はい……ゴホッゴホッ」
「この間きたときとはたしかに違うねー」
話すのが辛くて、うんうんと頷いた。
「もしや、今度も治癒術が効かなかった?」
うんうんと頷くと、治癒師も同じようにうんうんと頷いた。
「今度は声変わりのようだねー」
なんだってー!成長が一気にきたようじゃないか。
さすがに前世で体験していないことだったので、驚いた。
「しばらくすると声が出なくなって、出るようになったら違う声になってるよー」
そう言われた翌日、本当に声が出なくなった。
数日すると声が出るようになったけれど、自分の声だとは思えない音がした。
なんか話しても自分の声じゃない感じがして、違和感のおかげで話したくない。
声を出さないと慣れないのに、戸惑って話す気になれない。
そんな日々が続いた。
またしても、ミア嬢の家庭教師をお休みって連絡を入れた。
さらに、アレがきてしまった。
知識としては知っていたけれど、まさか……。
それは夜のことだった。
成長痛も声変わりも終わって、安心して眠った。
そろそろミア嬢の家庭教師を再開しないとなーなんて思いながら眠った。
ミア嬢のことを考えながら眠ったのがいけなかったのだろうか……。
とても幸せで甘くてヤバイ夢を見た。
自分の中の何かが弾けるようなそんな夢だ。
夢の中のミア嬢は妖艶な色気があって、そんなミア嬢を本能のままに……。
そして、目が覚めれば何とも言えない気持ち良さと気持ち悪さが……。
もう前世どうこう言っていられない。
ボクは男になったんだと、はっきりと自覚した。
そんなことがあったのもあって、ミア嬢に会うのは気が引けた。
別に実際に何かしたわけじゃないけれど、申し訳ない気持ちになった。
そしてまた、その週の家庭教師をお休みすると連絡した。
約一か月近く、家庭教師をお休みすれば、ミア嬢だって心配になるってこのときは考えてなかった。
内容的にそんなの書かなくてもいいって思う方もいるかもしれませんが、ジルが自分を男だって自覚するための話として入れました。
不快に思われた方がいましたら、すいません…。




