15.閑話:シルルとミア
本編とたぶん無関係なので、読み飛ばしていただいても大丈夫です
ある日、シルル姫はミア嬢に代行便を送りました。
『お話があるの。中庭のテラスで待っているわ』
ミア嬢は、手紙の内容に恐怖を感じたけれど、すぐに中庭のテラスへ向かいました。
そこには、シルル姫と取り巻きの女性たちが楽しそうに話している姿がありました。
気後れしながら近づいていくと、近づいてきたミア嬢に気が付いたシルル姫は言いました。
「私の名前は、シルル・ローズフォード・セリーヌ。あなたの名前をお伺いしてもいいかしら?」
「私の名前は、ミア・フォン・スウィーニーと申します」
ミア嬢はシルル姫に対して、淑女の礼をとりました。
それを見たシルル姫は、大きく頷くと言いました。
「顔を上げてちょうだい。私はあなたとお話してみたいと思っていましたの」
シルル姫は、ミア嬢に空いている席に座るように勧めました。
ミア嬢は勧められた通り、椅子に座るとシルル姫をじっと見つめていました。
「何から話そうかしら……」
シルル姫は少し考えた後、可愛らしい笑顔を浮かべて話し始めました。
「先日行われた夜会で、ジル兄様とあなたが踊られたって噂を聞いたのだけれど、それは本当のことですの?」
「はい。ジル様に誘われて、ダンスフロアで踊り始めたのですが、途中で……その私の様子がおかしいことに気付いたジル様がテラスへと連れ出してくださいまして、一曲踊り切れてはおりません」
「ジル様……ね」
シルル姫はミア嬢の言葉に聞いて、反芻するかのように答えました。
「それでは、はっきりと聞くわ。あなたとジル兄様の関係はなんなのかしら?」
ミア嬢は、シルル姫の言葉に少し悩んだあとこう答えました。
「友達でしょうか。今は先生と生徒……でしょうか」
言っている本人もわかっていないようなそんなことを答えました。
シルル姫が目を瞬かせて驚くのも無理はありません。
そこは、「恋人です」といった返事がくるものだと思っていたのですから。
「恋人ではありませんの?」
「はい、恋人ではありません。ジル様とは……なんといえばいいのでしょうか。共通の趣味がございまして、その縁で仲良くさせていただいているのです」
そう言ったミア嬢は、ほんの少しだけ頬を赤く染めました。
それに気づいた途端、シルル姫は一気にまくしたてるように話し出しました。
「まあ、あなたも恋人ではないのですか。やっとジル兄様に春が訪れたと思ったのに!でも、共通の趣味があるのであれば、この先、恋人になる可能性もありますわね。是非ともあなたには、私が会長をしている『ジルクス王子の恋を応援する会』に入っていただきたいのですわ。この会に所属している者は、ジル兄様の恋を応援しているの。会員がジル兄様の恋人になるのも応援の一つとしているわ。そういうわけで、あなたには是非とも……いいえ、絶対に会に所属してほしいの。おわかりになります?」
ミア嬢はシルル姫の言葉を聞いて、ただ「はぁ」とだけ答えました。
その言葉を肯定の意味で捉えたシルル姫は、にこやかに笑いながら大きく頷きました。
「それでは、今日からあなたも『ジルクス王子の恋を応援する会』の会員として、しっかり、ジル兄様にアプローチしてくださいね」
それからしばらくして、ミア嬢がジルクス王子への態度が変わったとか変わらなかったとか。
たまにはこういうのもー入れたいなって!