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13.騎士団は紳士の集まりですよね

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今日は、騎士団の訓練場へお邪魔して、治癒術の練習をさせてもらうことにした。

孤児院みたいにいきなり行っても、中には入れてもられないだろうと思い、事前に王宮へ連絡して許可証をもらっておいた。


騎士団本部は王都の中央に近い場所にある。

騎士団本部の訓練場は、騎士団学校の訓練場と比較にならないくらい広かった。


入口にある受付に声をかける。


「こんにちは。治癒術の練習にきたミアと付き添いのジルです」

「ああ、話は聞いてるよ。確認のため、許可証を見せてもらってもいいかな?」


許可証を見せるとすんなりと通してくれた。

案内役のお兄さんが走ってきた。


お互いに軽く挨拶を交わすとすぐに案内してくれた。


「ここが騎士団本部の救護室です」


案内が終わると訓練があるのでってまたすぐに戻っていった。


救護室には、治癒師が1人薬師が3人いた。

普段は治癒師3人と薬師10人がローテーションで怪我の面倒を見ているそうだ。

非常時は街の診療所の治癒師や薬師を呼んで対応するとのこと。

戦争なんて長くしてないし、王都の外にも魔物がいないこの国で、非常時ってのは珍しいみたいだね。


そう、この世界は王都の外、街と街をつなぐ街道を歩いてても、魔物に襲われることがない。

襲ってくるとしたら、狼や熊、猿などの獣か盗賊くらいだそうだ。


じゃあ、魔物がいないのかっていうとそうではなくて、ダンジョンの中に出現するのが魔物なんだそうだ。

ダンジョンの中の魔物は倒すと必ず大きさに違いはあるけれど、魔石を落とすので、魔物を倒す人たちのことを魔石ハンターと呼ぶそうだ。


騎士団の人たちは、魔物と戦う職ではなく、警察や消防、陸海空軍みたいなものだと考えたらわかりやすいだろう。



救護室で、怪我人を待っているとすぐに現れた。

訓練中に木刀を吹っ飛ばし、それがあたったらしい。

右腕が赤く腫れ上がっている。


まずは、治癒師が怪我の具合を見た。

腫れている部分を軽く触ると首を横に振り、隣の薬師に声をかけた。

次に薬師が薬を塗った布…湿布のようなものを貼って、剥がれないように包帯で巻いた。


それで終わりのようで、患者はお礼を言って出ていった。


って、治癒術は使わないの!?

ボクとミア嬢は2人で顔を見合わせた。


「あの、すみません。治癒術ってあまり使わないんですか?」

「命に関わる時や後遺症が残りそうなひどい怪我の時は使うけど、さっきみたいなかすり傷には使わないね」

「本来、人には自己回復能力が備わっているんだ。それをほんの少しだけ後押しすれば、すぐ治るんだ」

「何でもかんでも治癒術に頼っているとちょっとした傷も自分じゃ治せない体になっていくんだってさ」

「「……」」


つまり、この間の孤児たちに治癒術をかけたことって、あまり良くないことってことか。

またしても、ボクとミア嬢は顔を見合わせた。


「いろいろ理由付けたけど、結局はすべての患者に治癒術できるほど、魔力があるわけじゃないから、温存してるだけだがな」


ガハハと治癒師が笑って言った。


「温存しておいてもらわないとひどい怪我人がきた時、私たち薬師では役に立ちませんから」

「適材適所ってやつですよ」


薬師たちも笑っていた。


これでは、治癒術の練習にはならない。

でも、ミア嬢は目をキラキラさせて、薬師たちを見ていた。



また怪我人がきた。

今度は切り傷のようだ。パックリと切れた部分を布で抑えていて、見ていて痛々しい。

また治癒師が傷を見て、今度は大きく頷いた。


「治癒術かけるけど、やるかい?」


治癒師は、ミア嬢にそう聞いてきた。


「はい、ぜひ」


ミア嬢は、患者の真正面に立ち、怪我の具合を確認すると、怪我の部分に手を添えて言った。


「……清潔クリーン……治癒ヒール


傷口の周りの血や汚れ、雑菌がキレイになった後、怪我の部分が淡く光るとあっという間に、出血が止まり肉と肉がくっつき、元の皮膚の状態に戻った。


「まだ痛みがありますか?他に怪我はありませんか?」


怪我をしていた騎士は傷の部分を何度も確認して、驚いた表情を浮かべていた。


「な、ない……です」


騎士は20歳すぎくらいなのだろう。

ミア嬢の顔を見て、顔を真っ赤にして俯くと、慌ててミア嬢の手を取り言った。


「あ、あ、ありがとうございます!」


お礼を言うのに手を取る必要はないんじゃないか。

ミア嬢が微笑むと元怪我人は、一礼して出ていった。



それからが大変だった。

普段なら多少の擦り傷では救護室に来ない騎士たちがこぞって来たのだ。

救護室の外は長蛇の列になっていたが、治癒師は1人1人診察して、治癒術が必要な者はミア嬢に任せ、そうでない者は薬師に任すというように振り分けていった。

ちょっとした怪我で来ているものばかりなので、ほとんど薬師たちに回ってきて大変だった。

ボクも薬師たちに混じって湿布を貼ったり、薬を塗ったりと手伝っていた。



薬師に治療をしてもらった騎士が帰りがけにミア嬢に握手を求めている姿を何度も見た。

ミア嬢が担当するほどひどい怪我人はあまりいなかったのだが、多少はいた。

そのうちの1人は、ミア嬢が治癒術をかけ終わると求婚をしてきて大変だった。


ボクが割って入って、止めなければミア嬢はあっという間に連れ去られていたんじゃないかと思う。

こんな目に合うなら、次から来ませんってミア嬢が言ったもんだから、騎士たちは平謝りしていた。


後日、騎士団内ではミア嬢のことを天使と呼ぶようになったらしい。




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