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11.教会からの呼び出しとか面倒くさい

長いです

翌週の休息日の初日、ミア嬢への家庭教師はお休みして2人で教会へ向かった。

教会の入口には太った司教と司祭のトラストさん、助祭とか知らない少女とか6人いた。


「まずは、祈りを捧げてから」


トラストさんが言ったので、言う通りにした。


この世界には、創造主たる神様がいて、祈りを捧げる対象はその神様だけ。他に神様はいないってことらしい。

郷に入っては郷に従えってことで、祈る時はこの神様に一応、祈ってる。

ボクの記憶にないだけで、もしかしたら転生する時に神様に会っているかもしれないし!?

なんてことを考えたりするから、祈ることに抵抗はないかな。


ボクとミア嬢を含めた8人で祈った後、教会の離れみたいな場所へ連れていかれた。

そこは、会議室みたいな場所だった。

上座に位置する場所に長いテーブルが2つとイスが4つ、対面の場所にイスだけ4つ並んでいた。

前世での会社面接の時を思い出すと似ているかもしれない。


長いテーブルがあるほうのイスに司教、司祭、助祭2人の4人が座り、対面のイスにボクとミアと少女2人が座った。


先週言ってた単語を考えれば、ボク以外の3人の少女がソレなんだろうなぁ。


「まずは自己紹介から始めるとしよう」


太った司教がそう話し始めた。

太った司教の名前はジャイル・フォン・ルートベルト。

名字を名乗ったから貴族だ。

ステータスを見えれば、ルートベルト子爵家次男。長男がルートベルト家を継いでいるから、次男は教会へ入ったってとこかな。状態異常:肥満だ。スキルは、偽善とか騙すとか誤魔化すとか得意そうな感じ。


司祭の名前はトラスト。平民だから、名字がないみたいだね。

孤児院の院長も兼任している。今のところ、状態異常は見られない。スキルは普通の人みたい。

助祭その1の名前はカナリア。女性で……普通の人。

助祭その2の名前はリゼット。女性でスキルは普通だけど、状態異常:痩身だ。大丈夫だろうか。


「次に、聖女様候補のアデラインさんとクリスティーナさん」


聖女様候補のアデラインは、錆びたような赤褐色の髪と瞳の少女で、釣り目でこちらというかミア嬢を睨んでいた。ステータス的におかしいと感じるものはなく、治癒術が上級まで使えるようだ。

もう一人の候補のクリスティーナは、白に近い灰色の髪とピンクに近い赤色の瞳の少女で、アデラインとは対照的に垂れ目だ。にっこりと微笑んでいる。ステータスは……隠蔽いっぱいだなぁ。治癒術は上級まで。


「それでは、2人も自己紹介をしたまえ」


ジャイルは偉そうな態度でそう言った。

最初は教会が腐敗してるのかなって疑ったけど、教会のことはよくわからない。

でも、こいつ自身が腐敗しているのは間違いなさそうだ。


「ボクの名前はジル。彼女の名前はミア」


簡潔にそれだけ言った。

フルネームを教えてやる義理はない。


ジャイルは、片方の眉がぴくっと動いていた。

ボクの態度にイラっとしたのだろう。怒るほどではないようだが。


「先日、ミアさんがヴェインや子供たちに治癒術を使ったのを聞いてだね、聖女様候補に決定した」


このおっさん何言ってるんだろう。

ボクとミア嬢がぽかんとしてしまっても仕方ない話だ。

治癒ヒール範囲治癒エリアヒールだけで、聖女様候補になれるんなら、魔法学院にいっぱいいると思うんだが。


「どうして、私が聖女様候補になったんでしょうか?」


ミア嬢が疑問に思うのも無理ない。

トラストさんが答えてくれた。


「ミアさんが使った治癒ヒールは、初級の治癒術であるのに、中級並の効果がありました。また、子供たちに範囲治癒エリアヒールを使ったとのことですが、怪我の状態が違う子供たちを一度に治してしまうのは、上級の範囲治癒術と同等かそれ以上の効果があると言えます。今後、信仰を深め、修業を積んでいけば、上級や最上級の治癒術も使える可能性があると判断しました」


ボクとミア嬢はお互いに顔を合わせて、目を瞬かせた。

そこまですごい治癒術を使ったとは、お互いに思っていなかったのだ。

よくよく考えてみれば、他の人が治癒術を使っているところって見たことがないかも……。


つまり、やらかしてしまった!ってことか。


「そういうわけで、明日からは教会に住んでいただき、毎日祈りを捧げてもらう」


ジャイルが締めくくりのようにそう言った。

そういうわけってどういうわけだよ。

教会に住めって、ミア嬢の事情も知らずに言っていいと思っているのだろうか。


「それは無理だな」


ミア嬢にはしゃべらせず、ボクが答えた。

ジャイルの片方の眉がまた、ぴくぴくと動いた。


「貴様には聞いていない」

「彼女は王立学院の学生なんですよ。意味わかりますか?」


王立学院の学生ということは、ミア嬢は貴族ですよってことを伝えたら、ジャイルの顔色が少し悪くなった。

貴族の子息令嬢は王立学院に必ず通うのだ。ほぼ義務と言ってもいい。

それを途中で辞めさせて、教会に入れるとなると犯罪者と思われかねない。


「で、では、授業が終わり次第、毎日通っていただいて祈りを捧げてもらう」

「それも無理だな」


ジャイルは今度は片方の眉と頬をぴくぴくさせた。

他にどこがぴくぴくするかな。


「貴様には聞いていない」

「あんたも通ってたんだからわかるだろう?授業の後に教会へ来ていたら、門限に間に合わないだろう」


あまりにも遠い昔過ぎて忘れたのか、それとも今と昔ではルールが違うのか。

王立学院へ通う子息令嬢たちの年齢は10~12歳だ。

そんな子供を護衛もなしに日が暮れた時間まで外に出せるわけがない。

毎日護衛を付けて通わせるならば可能かもしれないが、教会が護衛を出すことはない。

聖女ならまだしも、まだ候補なのだから。

ジャイルは苦い顔をして言った。


「そ、それでは、毎週休息日両日とも教会で」

「それも無理だ」

「貴様には聞いていないと言っているだろう!」


ついに、ジャイルが状態異常:激怒になった。

ミア嬢が必死に笑いを堪えている姿が見えて、ボクは噴き出してしまった。


「何を笑っている!従者風情が!」

「ジャイル司教、落ち着いてください」


隣に座っているトラストさんが両手でジャイルを落ち着かせるような仕草をしている。


「強制的に祈りを捧げるってとこが間違ってると思わないんですか?」


ボクの一言でジャイルは黙った。

別に教会で祈りたくないっていう意味じゃない。


「彼女は毎週、魔法の練習をするので、実践をするときに教会によりますよ。もしそこで祈りたいと思えば祈るし、そう思わなければそれだけのことです」


ボクの言葉を聞いて、別方向から声が飛んできた。

聖女様候補のアデラインとクリスティーナだ。


「そんな祈りを疎かにする人が聖女様なはずがありません!」

「聖女様であれば、毎日の祈りを欠かすことなど考えられませんねぇ」


2人の言葉を聞いて思った。

聖女様の基準って何なんだろうね。




司教と少女2人があーだこーだと言い合っている間、ボクとミア嬢はボソボソと日本語で話をしていた。


『ミアは毎日、教会でお祈りしたい?』

『そこまでの信仰心ないですよー』

『ボクにもないなぁ。週1くらいなら、どう?』

『何かのついでなら、いいですよね。治癒術の練習のついでとか、お買い物のついでに教会でお祈り』

『お祈りがついでだって言ったら、ここの人たちもっとキレそうだね』

『でも、そんなものじゃないですかー?そもそも、私が聖女様とかありえないです』

『そうかな?ミアだったら、聖女様になれると思うよ』

『そ、そんなことないですってばー』


ミア嬢だったら、本当に聖女様になれると思うんだけどね。

もうちょっと魔力量を増やせば、上級の範囲治癒も使いこなせそうな気がするし。


司教と少女2人の言い合いが終わったようで、こちらを向いた。

全く聞いていなかったけれど、どうまとまったのだろうか。


「聖女様候補であることは、決定済みである。だが、しばらくは様子を見ることにしよう」


ジャイルはそう言うと、ふんっと鼻を鳴らした。


聖女様候補の件は様子見ということになったので、ミア嬢とは毎週、出かけるついでに教会へ行ってお祈りをすることにした。


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