06.魔法以外も習っています
魔法学院への入学試験を受ける条件に「中級以上の治癒術または魔術が使える者」というのがある。
つまり、授業内容は中級以上の魔法についてが主体となる。
魔法は大まかにわけると3つに分かれる。
■治癒術
自分や他人を癒す魔法の総称で、使える人はごく稀だ。1000人に1人と言われている。
信仰の厚い人が使えるようになるとか言われているが、真っ赤な嘘だ。
治癒や解毒、身体強化などがこれに分類される。
あとは、魔力の入れ具合などによって、初級魔法でも大きく結果が異なったりする。
一般的に、切り離された部位同士をつなぐことはできるけど、損失した部位は、傷をふさぐだけで再生しないらしい。
■魔術
攻撃する魔法の総称で、治癒術よりは使える人が多い。初級であれば10人に1人くらいは使える。
中級以上になってくると、100人に1人って感じで減っていく。
この世界では属性という概念がないみたいで、火属性魔法が得意!とか言う人はいない。
火を起こす魔法が得意!って言うらしい。
ミア嬢が求めている「お花を植えるために土に小さく穴を空ける」魔法も魔術のうちの1つ。
もしかしたら、魔術を攻撃以外に使うって考えがないのかもしれない。
■生活魔法
治癒術でも魔術でもないけれど、魔力を消費して事象を起こす魔法の総称。
これは、ほとんどの人が使える。
例えば、清潔の魔法とかが有名どころ。
隔離や閉鎖、検索とかも生活魔法に分類されている。
余談だが、魔法とスキルは全く別物だ。
スキルとは、詠唱することなく持続的に発動する。スキルは生まれながらに持っていたり、勉学に励むことで覚えたりする。
魔法は一定の時間しか効力を発揮しない。
魔法学院の授業で教わる魔法は、治癒術と魔術だけ。
魔法以外では、薬学や錬金術、魔道具についても学べる。
生活魔法は口伝か生活魔法書か、少しお金を払えば教会とかギルドとか役所とかで教えてくれるから、魔法学院ではそういった授業しないんだって。
でも、生活魔法も極めれば、面白いこといっぱいできるのになぁ。
今日の授業は、薬学。
前世は実習助手をしてたし、調合方法とかすぐ覚えられた。
薬として使う材料は、草花や昆虫、鉱石とかいろいろあるみたい。
草花や昆虫は生のまますりつぶすとか、乾燥させてからすりつぶすとか、乾燥させた後焼いて灰にしたものを使うとか…全く知らないことばかりで面白くて仕方なかった。
知らないことを知るって、ホント楽しいなぁ。
「鉱石を調合で用いる場合、まずは金づちで砕き、ある程度細かくしてからすりつぶします」
先生の話を受けて、鉱石を粉にすることになった。
これ、粉にしたやつを後で先生が使うんだろうなぁ。
実習助手やってた時、授業中に課題として生徒にやらせて、別の学年の授業で使うとかよくやったよ。
親指くらいの小さな鉱石だったんだけど、クラスメイトはみんな苦労してた。
それをぼーっと眺めていたら、先生に声をかけられてしまった。
「ジルクスくんもやってくださいね」
先生は、サボりはダメですよみたいな顔をしてボクを見ている。
まぁ、まだ手に金づちすら持ってないし、サボってると思われても仕方ないか。
ただ、どうしても不思議だったんだ。
なんで、魔術使わないんだろ?って。
「……岩破壊」
なるべく細かくなるようにと想像しながら、魔法を行使するとあっさりと鉱石は粉々になった。
ちらりと先生を見てみると口をぽかんと開けて、状態異常:驚愕になっていた。
やっぱり、攻撃以外で魔術って使わないっぽいなぁ……。
「粉々にしました。問題ありますか?」
先生は無言で首を横に振った。
そして、ボクが魔術で砕いた鉱石の粉をそっと触って、きっちり粉末になっているのを確認した。
「ジ、ジルクスくんが今やった生活魔法教えていただくことってできますか?」
先生の発言が中途半端に敬語になってるけど、まぁいっか。
「今のは、生活魔法じゃないです。中級魔術ですよ」
「……やっぱり聞き間違いじゃなかった…ジルクスくん、授業が終わったら職員室へ来てくださいね」
嫌という前に、授業終了の鐘がなり、この日の授業は終了した。
その後、職員室へ行き、何度も何度も魔法を使って見せる羽目になった。
先生方もボクの真似をして、岩破壊を使ってたんだけど、破壊対象を小さな鉱石に設定するのが難しいらしく、いろんな物を壊しまくってた。
ボクのせいじゃないですからねー!