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03.父と兄にも会いました

今日は、母に会うだけが目的ではない。

国王とマイン兄にも会って、卒業と入学の報告をする。


国王だけだったら、堂々と謁見の間で報告もしくは、執務室でこっそり報告でもよかったのだけれど、今回はマイン兄とも会う。

何度も報告するのが面倒だったので、応接室で会うようにしてもらった。


紅茶を堪能していると先にマイン兄が現れた。


「ジルクス、久しぶりだな。元気そうでよかった」

「はい、マイン兄も元気そう……じゃないですね。何かありました?」

「あ……いや、たいしたことはない」


たいしたことないなら、そんなに疲れ切った顔してないと思うよ。

じーっと、マイン兄を見つめていると観念したように答えてくれた。


「い、いやな…高等学院は一か月前に卒業式が終わってだな…それからすぐ、宰相の元で勉学に励みつつ、政務をこなしたりと、充実した日々を送っているんだ……」

「それだけって感じじゃないです」

「……」

「マイン兄……ミリア義姉様ねえさまとはお会いしてないんですか?」


なぜバレた!って顔に書いてあるけど、そこは黙っておくとして。


「一か月もミリア義姉様ねえさまのことほったらかしですか?」


マイン兄の顔色は真っ青だし、滝のような汗が見えるけど、そこも気付いてないフリをするとして。


「まさか、一か月の間、贈り物や手紙の一つも渡してないとか言わないですよね?」


マイン兄の顔色はもう真っ青を通り過ぎて真っ白に燃え尽きているように見えた。

つまり、マイン兄は忙しさのあまりミリア義姉に贈り物もせず一か月放置プレイってことか。


「その……ミリアが口をきいてくれないのだよ……」


小学生のケンカか!っていう話だけど、本人は深刻なんだろうなぁ。

たぶん、ミリア義姉にはシェライラ様と女官長たちがついているから、少しくらい殿方を困らせる方法とかも学んでいそうだ。


「諦めたらそこで……いや、えっと、めげずに贈り物や手紙を渡していくしかないのでは……」


アドバイスになっていないアドバイスを言っていると国王も部屋へ入ってきた。


「待たせたか」


紅茶はすでに冷めているけれど、マイン兄と話をしていたので待った気はしなかった。


「いいえ。お久しぶりです、陛下」

「久しいな、ジルクス。今日は何用かね」

「今日は卒業と入学の報告でございます」

「ここは謁見の間ではないし、その堅苦しいのはやめにしようか」

「はい、わかりました。父上」


すぐに肩の力を抜いた。気楽に話せるようになってよかった。


「王立学院を無事卒業しまして、魔法学院へは首席で合格しました」

「おお、それはよかった」

「首席とは、さすがジルクスだな」


持ち直したマイン兄から褒められ、上機嫌になったところへ爆弾が降ってきた。


「ところで、ジルクスはそろそろ良い人は見つかったかね」

「……は?」

「カーマインもジルクスの年に婚約をしただろう。良い人がいなければ、こちらから……」

「父上待ってください。ジルクスにはもう少し時間をあげてもいいじゃないですか」

「だが、そろそろ候補を決めないと、大臣たちが暴れるのも時間の問題だろう」


気が付いたら、国王とマイン兄が2人で白熱した会話をしていた。

ボクを放置して相手決めようだとかまだ早いだとか言うのおかしくない!?


「あの!」

「「どうした、ジルクス」」


国王とマイン兄がシンクロして聞き返してきてちょっと怖いが、言うなら今だ。


「ボクにも気になる人が……」

「誰なんだ!」

「ジルクスにも春が!?」


2人は鬼気迫る勢いで聞いてきて怖かった。


「ま、まだ相手のことを詳しく知らないので、もう少し時間を」

「名前くらいはわかるだろう?」

「ジルクスのことだから、職業もわかるだろう、さぁ話せ」

「いや、あの……ホントまだ……」

「「……」」


この場でミア嬢の名前を出すわけにはいかない。

だって、本当にミア嬢のことはよく知らないのだから。

生前の話で盛り上がる関係だとか、言うわけにいかないし!


絶対に言わないぞと、口をへの字に結んでいると、マイン兄がため息をついた。


「ジルクスがこういう態度になると、いくら言っても話してくれないと思います」

「そうなのか……では、仕方ないな」


国王が諦めてくれたようなので、ふぅっと大きくため息をついたのだが……。


「ジルクスの相手がどんな人物かわからぬが、化粧の濃い女には気をつけよ」

「……は?」


国王の言葉で、またしても変な声を出してしまった。

その反応が面白かったのだろう。マイン兄まで変なことを言い出した。


「香りのキツイ女性もやめておいたほうがいいよ」

「露骨に肌を出している女も気を付けた方がよかろう」

「既成事実を作ろうと必死になってきて、見ていて痛々しいですよね」

「うむ。胸は大きければいいというものではないしな」

「父上は大きさじゃないないのですか」

「大きさよりも張りがあるかどうかだな」

「……」


2人が言いたいことはわかるけど、わかるけどさぁ!

化粧が濃い女性は素顔に自信がないからだし、香りのキツイ女性は体臭を気にしているのかもしれないし、露骨に肌を出している女性なんて相手の気を惹きたいからやってるのだし……って、女性側の気持ちもわかるから、聞いててつらいんだよう!

まして、胸の大きさなんて…本人の努力が報われないものの代表格だろう!

2人とも、女性たちが可哀想だからもうこれ以上はやめてあげて……。

なんて言葉を言えるはずもなく、その後も長々とこんな女性には注意だって話を聞かされた。



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