02.鑑定は何でも見えるようです
熱も下がったので以前と同じように晩餐の席へ向かわなければならない。
晩餐の行われる部屋の入口真正面に、いわゆるお誕生日席の位置に父であるセリーヌ王国国王アシェットが座っている。
向かって左側にボクの母であり現国王の王妃でもあるリリアーナ妃。
向かって右側奥から側室であるシェライラ様、第一王子であり異母兄であるカーマイン王子、第一王女であり異母妹であるシルル王女が座っている。
すごく簡単に言えば、父と母と愛人と異母兄と異母妹が一つのテーブルを囲んでいるという気まずそうなやつだ。
どんなに不仲だろうが気まずかろうが、晩餐は必ず一緒に食べるようにと国王直々から言われているので、逃げることはできない。
「遅れて申し訳ありません」
一番最後に来たことを謝り、母の隣の席に着いた。一瞬、空気が固まったような気がしたけど、気のせいかな。ちらっと他の人の顔を見てみたけど、特に変わった風には見えなかった。
いつものように神に祈りを捧げ、国王の合図で食事を始める。
お皿の上には前菜として、前世のミニトマトみたいな実が乗っていた。いったい何の実だろう? と思ってじっと見ていたら、今まで見えていなかったものが見えた。
名前はチーズ入りトマッカ、トマッカの実の中心をくりぬきほろほろチーズが入った前菜、料理長作。
へぇ、トマッカっていうんだ~ってそうじゃない!物を見て名前がわかるとか……まるでゲームみたいなんだけど。
生まれる前は、恋人と一緒にオンラインゲームをやっていた。MMORPGでサーバーで一番大きなクランに所属してて毎週末にある戦争では、全城制覇ー!なんてこともしたっけ。職種はヒーラーで戦争時パーティでは、パーティメンバーを死なせない!が目標だったなぁ。
あ、話が飛んじゃった。
皿から目を離し、真正面に座る側室家族を見たら予想通り、頭上に名前が見えた。
横目で国王の頭上の名前をじっと見ているとさらに詳しいステータスが表示された。
職業は国王、32歳で健康か。君主としてやっていくのに必要そうな『情報収集』や『統制』などのスキルを持っているようだ。腹黒そうなスキルと慈愛に満ちてそうなスキルは、グレーで表示されている。これって隠蔽しているってことかな。
もう一度真正面に座るカーマイン王子の名前をじっと見てみた。
マイン兄上も国王と同じように健康なようだ。職業は第一王子、年齢は7歳。君主向きのスキル数は……国王よりも多く持っているっぽい。多くもっていると言っても大半がグレーで表示されていて普通に見たら、6個しか見えないかな。そのグレー表示の中にものすごいスキルが混ざってる。
『賢君』ってやつだ。
説明書きだと『玉座につくだけで国が豊かになる』って、なんだそれ便利すぎる!
なんとしてでも王太子になってもらって、ゆくゆくは国王についていただかねば。
一通り状況を把握した後、夕食を残さずキレイに食べた。口を拭いてもう一度真正面のマイン兄を見れば、状態:驚愕がついていた。何にそんな驚いたのだろうか。
食後のお茶が配られる。温かいお茶を口に含めば、ほのかに甘さが広がった。砂糖ではなく、お茶本来の甘味だろう。
そんなことを考えていたら、国王が言った。
「今日のジルクスは大人しいな」
大人しい?食事は静かにゆっくり食べるものだろう。食べ残しは許しまへんえ!
「ジルクスは病み上がりですから」
ころころと笑いながら答えたのは母だった。金色の髪に碧色の瞳……金髪碧眼ってやつでものすごく美人だけれど、吊り上がった目と笑みを手で隠した口元が性格の悪さを物語っているようだった。
母をじっと見れば、職業欄がおかしい。職業:セリーヌ王国王妃、呪術師……一体だれを呪うんだ……。
もちろん、呪術師はグレー表示になっていた。