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18.閑話:ミアの心境

 私は今、ジルと一緒に馬車に乗って新居へ向かってるの。

 リズは『いろいろと準備がありますので先に失礼いたします』と言って、先に新居へ行っちゃった。

 一応、私にも前世の記憶があるから何の準備かはわかっているの。

 今夜はジルとの初めての夜だから……お風呂に入って磨き上げてもらって本番に備えるんだよね。

 そう、本番……!

 知識はあるんだけど、前世でも今世でも経験がないの。

 だから、想像だけが独り歩きしてドキドキしたり怖くなったり緊張したりを繰り返していたら、ジルに声を掛けられた。

 

「どうしたの?」


 馬車の中、向かいに座るジルが首を傾げてる。

 もしかして、私が何を考えているのか伝わっちゃった!?

 慌てて何かを言おうとしたけど、何を言っていいかわからなくて、口をパクパクしたあとに『なんでもない』という意味を込めて首を横に振った。

 

「言葉にしない時点で何かあるってことだと思うよ」


 ジルはそう言うと向かいから隣に移動してきて、腰に手を回してきた。

 さっきまでいろいろと想像したあとに密着されると……何かされるんじゃないかって身構えちゃう!


「言いたくないことだったら言わなくていいけど……」


 ジルは私の髪を一房すくって、髪にキスをした。

 直接触れないキスなのに、胸がぎゅっと締め付けられるみたいな感覚がして……なんだかクラクラしてきちゃう。


「具合が悪いってわけではないかな?」


 ジルはそういうと、今度は私の額に手を当ててきた。

 熱を測ってくれてるっていうのはわかるんだけど、ジルの顔がとっても近いの。ドキドキする!


「熱はなさそうだね。何かあったら言ってね?」

「……うん」


 ジルの優しさが身に染みる。

 だって私は、このあとのことばかり考えていたんだもの。

 すごく恥ずかしい!


 しばらくすると新居へ到着して……すぐにジルと私は別々の部屋へ向かったの。

 別々の部屋といっても、寝室を挟んで左右にある部屋で、そこで着替えたりお風呂に入ったりと寝る準備を整えるの。

 晩餐は披露宴のときにつまんだし、今日はもう眠るだけ。

 ……だけじゃないね……。


 リズに念入りに洗われてマッサージされて……普段よりもピカピカに磨かれたあと、透けそうで透けないネグリジェに着替えた。

 これは今夜専用の特別なネグリジェなんだって。

 中央にリボンがあってスルッとほどけちゃう……って、ああもう、恥ずかしい……。

 両手で顔を覆っている間に、リズや侍女たちがそそくさと部屋を出て行った。

 ここからは扉一つでつながっている寝室へ勇気を出して入るのみ。

 ああまたしても緊張してきちゃった。どうしよう……。

 扉の前でまごまごしていたら、別の扉が開いて閉じる音とジルの独り言が聞こえてきた。


「やっぱり、このベッドにしてよかった。広いし……多少寝相が悪くてもミアに迷惑かけることはなさそうだな」


 ジルの言葉に笑みがこぼれた。

 なんだか私だけが緊張してるみたい。ジルは平気そうだし……。

 そうだ、前世でも『女は度胸』って言葉があったよね……ちょっと違うかも?

 まあいっか!

 私は大きく深呼吸したあと、扉をノックして部屋に入った。


「えっと、お邪魔します?」


 疑問形なのは、言っている途中で私の寝室でもあるのに何を言ってるんだろう? と思ったから。

 私の言葉にソファーに座っていたジルがくすくすと笑った。


「いらっしゃい? っていうのもおかしいよね」

「うん。ここはジルと私の寝室だもんね」 


 ジルはすくっと立ち上がると私の姿を上から下へと観察し始めた。


「そのネグリジェ……すごくいいね」

「うう……恥ずかしいから見ないで~」

「恥ずかしがってるミアもかわいくていいね」


 身をよじって体を隠していたら、ジルが私のそばまでゆっくりと歩いてきた。

 ガウン姿のジルはなんだか妖艶で目が獲物を狙う野獣のようで……見ているだけで私の心臓が早くなっていく。

 ジルはにっこりと微笑みながら、私の腰に手を回して……そのままベッドへと連れて行かれた。

 そして無言のまま押し倒されて……体中のあちこちにキスをされた。

 もちろん唇にも、浅いものから深いものまでいろいろと……。

 だんだんと頭がぼーっとしてきて……緊張よりも心地よさに支配されて……。



 気がつくと朝になっていた。

 ベッドの中で昨日の出来事を思い出して、両手で顔を覆おうとしたら、後ろからぎゅっと抱きしめられていてできなかった。

 もそもそと動いて、向かい合わせになると……ジルは幸せそうな顔をして眠っていた。

 

「あ……おはよ」

「おはよう」


 じーっと見つめていたら、ジルが目を覚まして朝の挨拶をしてくれた。

 なんだか嬉しいと思って笑っていたら、ぎゅっと抱きしめられた。


「毎日ミアとおはようって言えるなんてホント幸せ……結婚してくれてありがとう……」


 ジルは普段よりゆっくりとした口調でそういうとさらにぎゅっと抱きしめてきて……力が緩まったかと思ったら寝息をたてて寝ちゃった。


「私もジルと結婚できて幸せだよ」


 そっとそうつぶやいたあと、私もジルと一緒に眠った。

 

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