16.パレードを行いました
大聖堂での結婚式が終わると王族であれば必ず行わなければならないパレードがある。
幌のない馬車に乗って王都中をぐるりと回って王宮へ戻るというものだ。
明日からは王族ではなくなるんだけどなぁ……というのは置いとくとして。
幌のない馬車にミアとともに乗り込む。
大聖堂の敷地の外にはすでに人が溢れていた。
「さあ、出発だ。笑顔で手を振らないとね」
「うん……ちょっとだけ恥ずかしい」
「王族として最後の務めだから……慣れないことさせてごめんね」
「……ジルは慣れてるの?」
ミアにじとっとした目で見られた。
「もちろん……ボクも慣れていないんだけどね!」
ボクの言葉にミアはくすくすと笑った。
こうして始まったパレードなんだけど、手を振り続けるのって結構大変なんだよねぇ。
右手が疲れたら左手、左手が疲れたら右手って交互に振っても疲れる。
途中でこっそり治癒術を使ったりして……そのたびにミアとくすくすと笑い合った。
そして、王都の中央にある広場に着いたとき、ボクは馬車を止めさせた。
御者のおじさんには説明してあったので、すぐに止めてくれた。
さあここで、ボクのワガママその二を行うよ!
「集まってくれたみんなありがとう! たくさんの祝福をありがとう! これはボクたちからのお返しだ」
ボクは広場にいた人に向かってそう叫んだ。
そして、その場で手を叩く。なるべく大きな音になるようにと柏手のような叩き方だ。
人々はボクの顔を見ながら、きょとんとした表情になりざわついた。
「なにかふってきたよ!」
どこからか小さな子どもの声がした。
みんなその声につられて、空を見上げると……上空からひらひらと花びらが降ってきた。
一枚や二枚ではない。まるでシャワーのような……そう、フラワーシャワーだ!
前世のフラワーシャワーは新郎新婦を祝福するために降らせるものだけど、どうせならみんなが喜ぶほうがいいんじゃないか? という話になって、こういった形になった。
広場にいた人たちから、「わぁぁぁ!」という歓声があがる。
「大成功だね!」
ミアがボクの耳に近づいてそう言った。
ボクは大きく頷いた。
種を明かすと……ヘキサとテトラの手によるもの。
花びらをたくさん積んだカゴを上空で逆さまにしてもらったのだ。
瞬間移動を駆使して十カゴ以上撒いてもらった。
こんなに喜んでもらえるなら、やった甲斐がある。
王都の人たちは降ってきた花びらを拾い集めて、嬉しそうな表情をしていた。
使った花は香りの強いものが多いから、乾燥させてドライポプリにするのもいいかもしれない。
「ジルクス殿下ー! おめでとう~!」
「ミア様、すてきー!」
「おめでとう~!!」
広場についたときよりもたくさんの祝福を受けながら、ボクとミアを乗せた馬車はゆっくりと王宮へと走りだした。
「こんなに喜んでもらえたんだし、あとで、ヘキサさんとテトラさんには甘いスイーツを用意してあげなくちゃね」
「マスターに頼んでケーキをワンホール頼もうか」
「それだったら、二つ用意しないとケンカになっちゃうよ?」
「それもそうだね……」
ボクとミアは王宮へ向かうまでの間、手を振りつつヘキサとテトラにどんなスイーツを渡すか話し合った。