14.新居はこんな感じです
結婚と同時に王族から公爵になることが正式に決まった。
王族でなくなるってことは王宮ではなく王都とか領地に屋敷を構えて暮らすことになる。
ボクの場合、外交と領地巡りを任されているから一応、王都に屋敷を構えたほうがいいらしい。
いつでも瞬間移動で王宮へ行けるから領地でもいいんじゃないか? って父とマイン兄に言ったら反対された。
新居の場所はあっさりと決まった。
もともとボクが公爵になったときに与える予定だった土地があるそうで、そこに新たに屋敷を建てることになった。
建てると言っても大きな屋敷になるから一年以上かかるんだよねぇ。
当分の間はその土地の一角にもとからある三階建ての小さな屋敷で暮らすことになる。
今日はミアとともにその屋敷を見学しに来た。
「うわぁ……広いね!」
「うん……思っていたよりも広いね」
建物を前にしてボクとミアはそう言った。
「この屋敷があれば、新たに建てる必要がないと思うんだけど……ミアはどう思う?」
「う~ん……私もそう思うけど……とりあえず、中を見てから考えよっか」
「そうだね」
ボクとミアは玄関ホールを進んだ。
掃除や修繕は済んでいるようで備え付けの家具や床が光って見える。
一階は広い調理場に広い食堂、それから客間やパーティルーム、テラス……他には侍女たちが働く場所などいろいろ。
「これだけの広さであれば、人材の確保が必要でございますね……フフフ」
「私は数に入れないでよー?」
ボクとミアの後ろを歩くヘキサとテトラがそんなやりとりをしている。
屋敷を構えるにあたって、執事が必要だろうということになった。
雇わないと……となったときに、ヘキサが立候補してきた。
執事業は趣味だそうで、ぜひともやらせてほしいってことでお願いした。
テトラは侍女ではなく、お針子になりたいらしい。ミアの服を思う存分作ると言っていた。
そしてリザベラは……。
「この屋敷の場合、庭師や厩番も必要です。そちらも確保してください」
侍女長になってもらうことにした。
ヘキサと対等に会話ができて、テトラを叱りつけることができるのってリザベラくらいだしねぇ。
「調理器具や洗い場、お風呂なんかは最新の魔道具を入れようか」
ボクがそういうとリザベラがすごく嬉しそうな顔をしたあと、ハッと我に返ったように口を引き結んだ。
普通に喜べばいいのにねぇ。
二階は主寝室と衣裳部屋、客室などの部屋で構成されている。
一階もそうだったけど、どの部屋も備え付けの家具……タンスや棚はあるんだけど、ソファーやベッドといった布製のものが一切ない。
「ソファーとベッドとカーペット……カーテンもかな、このへんを選ばないとだね」
「そうだね! 選ぶの楽しみ~」
三階へと続く階段は執事や侍女たちが待機するための部屋の中にあった。
侍女たちが階段を行き来する姿を客人に見せないためのものだそうだ。
「せっかくだし、三階も見よう」
「何かあるかな?」
三階に上がると八畳くらいの部屋がたくさんあった。
ここは侍女たちの部屋らしい。
たいていの者は帰る家がないので、主人側で部屋を用意するものらしい。
家族で暮らすために離れもある場合があるそうだ。
侍女たちの部屋の窓から外を見ると、少し離れた場所に別の建物が見えた。
前の持ち主は良心的な人だったのかもしれない。
「ここのベッドも雇う人数分必要だね」
侍女たちの部屋にも布製のものは一切なかった。
ボクたちは敷地内にある東屋へと移動した。
そこで何が必要だとかあれこれと話し合う。
「主寝室は今度、一緒に工房へ行って頼もう」
「うん!」
「他の部屋に関してはリザベラとテトラに任せていいかな?」
そう言って、リザベラのほうを見ると大きく頷いた。テトラはきょとんとした表情をしている。
「リザベラは使い勝手のいい魔道具を選んでくれ。テトラはソファーに飾るクッションを用意したくはないか?」
「ヒラヒラしていてもいいのー?」
「ミアが気に入るようなものであればいい」
「まかせてー!」
あれだけ喜んでいたんだから、魔道具選びはリザベラに任せたほうがいいだろう。
部屋の装飾関係はテトラに任せて……まあ、屋敷の中がフリフリヒラヒラだらけになってもいいかなぁ。
「人材確保はヘキサに任せる……とりあえず今はこんなところかな?」
「ウォン!」
ボクの言葉にオールが反応した。
「オールの部屋も用意してもらおうね」
「ウォン!」
ミアがそういうとオールはもう一度吠えた。