表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/156

15.兄のせいでバレてしまいました

(1/2)

 ラフィリア嬢の件を片付けてすぐ、マイン兄とリュミリアナ嬢は婚約の書類を王宮へ提出した。

 まぁたぶん、すぐに国王がサインしてくれるだろう。

 婚約が正式に発表されれば、二人は堂々とイチャつける。

 ああちょっとうらやましいな。


 予想通り、国王のサインが早く済んだようで、婚約したと話が流れた。

 婚約式は二人が卒業してから行うらしい。

 卒業まであと3か月くらいだ。



「ジルクス~! カーマイン殿下が婚約したって聞いたかー?」

「少しだけなら」

「なんでも、5年も片思いしててやっと成就したんだって。俺にもチャンスが来ないかな」

「来年になったら来るだろう?今のうちに準備しておけよ」


 サイラスは相変わらずシルル王女一筋のようで、チャラ男イメージを完全に払拭したようだ。

 ボクはというと、相変わらずローテーションのお昼ご飯。

 お茶会と夜会のパートナーはお断り。

 ラフィリア嬢と2回踊ったけど、それっきりで縁が切れた。つながってても困るけど。

 こんな状態で、婚約者を見つけられるのかなぁって思ったりするけど、多少集団女子の気持ちもわかってしまうので、いい女を探すのは大変そうだ。


ドンドンドン


 寮の部屋の扉を叩き、いきなり人が入ってきた。

 よく見れば、マイン兄だ。状態:驚愕、激怒、動揺。え、何があったんだ。


「ジルクスー!!!」

「え? カーマイン殿下!?」


 マイン兄の入室にサイラスは驚いているようだ。

 そりゃそうだよね。いきなり、王族が部屋に入ってきて、同室の友達の名前叫んでるんだもんね。

 なんて、のんきなことを考えている状態ではなさそうだ。


「マイン兄、落ち着いて、はい深呼吸」

「え!?兄……」


 マイン兄はすーっはーっと大きく深呼吸をした。

 サイラスは口をぱくぱくとさせている。

 ボクはといえば、自分の口に人差し指を一本立てて、サイラスに向かってしーっとしていた。


「ミリアが攫われた」

「あーやっぱり、そんな雰囲気ですよね」

「お茶会で、ミリアがパウダールームから戻ってこなくて……!」

「わかったから、とにかく落ち着いて。マイン兄が落ち着かないと探せないから」


 マイン兄は深呼吸を何度も繰り返して、なんとか落ち着こうとしている。

 サイラスはとりあえず、放置。後できちんと説明しよう。


「マイン兄、リュミリアナ嬢の私物とかお揃いで持ち歩いてるものとかないですか?」


 マイン兄は首にかけているネックレスを取り出した。そこにはシルバーリングがついていた。


「これでいいか?この間、お揃いで買ったんだ……」

 

 くっ……イケメンがそんなことをしたら、ぶっ倒れるんじゃないか。

 リュミリアナ嬢の耐久度が高いことを祈る。


「ちょっと借りるね。えーっと、サイラス」

「……なんだ」


 あ、放置してたから、拗ねてるのかな。


「今からすごいことするんだけど、緘口令ね。守れなさそうなら、部屋から出てもいいよ」

「いや、俺は従う。そのすごいことも見たいし、決して誰にも言わない」

「じゃ、始めるね」


 サイラスの言葉にうんうんと頷くと、心を落ち着かせるように大きく深呼吸を一つ。

 手と手の合わせたその間には、マイン兄から借りたシルバーリング。

 今回探すのは人じゃない、物だ。

 対になるシルバーリング。

 意識を集中して、手と手を開く。


「……検索サーチ……拡大エクスペンション


 手の中のシルバーリングを中心に水の波紋のようなものが広がっていく。

 その波紋は対となるシルバーリングからも起きているようで、波と波がぶつかった地点が大きく跳ねる。

 詠唱する時間がもったいなくなって、無詠唱で、部屋の地面に学院内の地図を表示させる。

 現在地と波と波がぶつかった地点を線で結び、同一線上に同距離の線を伸ばせば、場所がわかる。

 場所は、いつもの個別談話室だ。


 マイン兄となぜかサイラスも一緒に個別談話室へ向かった。

 検索対象が途中で移動する可能性もある。

 向かいながら、魔法は解かずにシルバーリングをマイン兄へと返した。

 マイン兄は受け取ると大事そうにネックレスにつけた。

 個別談話室の扉の前までついたけれど、検索対象は動いていないようだった。検索の魔法を解く。

 3人で交互に見合って、マイン兄が扉を開こうとしたのだが、開かなかった。

 施錠か閉鎖、もしくは両方の魔法がかかっているようだ。

 サイラスが静かに首を横に振った。

 ボクはマイン兄と目を合わせて、大きく頷いた。


 扉を触った感じだと、これは施錠の魔法のようだ。


「……解錠アンロック


 カチリという音がして、扉の魔法鍵が解かれた。

 もう一度、扉を触ると、閉鎖の魔法ままでかかっているようだ。

 これはまたご丁寧に……。


コンコンコン


 一応、ノックをしてから、扉をバーンっと開いた。

 中を見ると口と手首とたぶん足首も縛られて正座をさせられているリュミリアナ嬢と…夜会の時にマイン兄の周囲にいた公爵家の令嬢2名とその従者っぽい男性が2名いた。

 開いた音に驚いたのか、全員、状態:驚愕が付与された。

 特に令嬢2名は目を見開いて驚いている。

 リュミリアナ嬢はといえば、状態異常:怪我(骨折・打撲・切傷)・驚愕……とかなりひどい状態のようだ。

 ちらりと横にいるマイン兄を見れば、いや、見なくてもわかるか。ものすごーっく怒ってる。


「ミリア!」


 マイン兄は閉鎖が解けていないため、入ることができないようで、しきりに見えない壁を叩いている。

 入れないのだと思った4名は急に態度を変えた。


「カーマイン殿下、わたくしたちはあなたのためを思って、この娘に罰を与えておりましたの」

「高貴な家の出でもない、美しくもない、普通の娘には殿下の隣に立つことは許されませんわ」

「さぁ、殺してしまいましょう。不釣り合いなのよ」

「そんな貧相な体でどうやって誘惑したのかしら」


これは何を言っても、聞かないパターンでしょう……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ