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08.閑話:ミアとリザベラ

「精一杯頑張らせていただきます」


 そう言ってスウィーニー侯爵家御用達の仕立て屋のマダムはいい笑顔を向けてきました。

 普段からミア様のドレスを作っているマダムだけど、今日の笑顔はいつもよりも深い気がする。

 ミア様が結婚なさるんですもの……しかも、そのドレスの制作を任されるとなれば嬉しくもなるわね。


「まずは採寸から始めましょう」

「この間行ったばかりだと思うんだけど……」

「ミアお嬢様は日々成長しておられますから」


 マダムの言葉にスウィーニー侯爵家の侍女とお針子たちが動き出す。

 ミア様が何か言っていますが、お胸のあたりが日々成長しているのだと理解してほしいものです。

 侍女たちの手によって、ミア様はあっという間に服を脱がされ下着姿になりました。

 ほんのり頰を赤く染めているあたり、恥ずかしいのだとわかります。

 ですが、採寸は大事なんです。

 すぐさまお針子たちがメジャーを持ち出してあちこちを採寸していきました。

 すべて図り終わるとすぐに侍女たちの手によってミア様は服を着られます。

 まだ頰は赤いけれど、何事もなかったかのように笑顔を浮かべられて……ミア様、成長なさいましたね。


「……お式は一年先でございますね?」

「ええ、来年の春です」

「まだまだ成長されそうですし、その部分の幅を持たせた作りにさせていただきます」


 マダムはあえてどの部分とは言いません。

 はっきりとお胸の部分だとおっしゃれば、ミア様も安心するでしょうに……。

 ミア様は苦笑いを浮かべながら小さく頷きました。


「それではお色をお選びくださいませ」


 マダムはミア様の髪色である黒と瞳の色であるガーネットに近い赤い色の布の切れ端をたくさん取り出しました。

 結婚式で着るドレスの色は、神の目に留まるようにと髪色か瞳の色にするよう昔から決まっております。


「それとこちらが、おっしゃっていた白でございますね」


 マダムは黒と赤……とは別に白い布の切れ端もたくさん取り出しました。

 真っ白なものやクリーム色っぽいもの、シルバーに近いものなど様々です。


「う~ん……たくさんありすぎて迷っちゃう……みなさんの意見を聞かせていただけませんか?」


 ミア様がそう言うと侍女やお針子たちが満面の笑みであれこれと意見を述べ始めました。

 話に聞いたところによりますと、他の令嬢のドレスを作るときは、マダム以外が話すことは許されないそうです。

 けれど、ミア様のときは本人たっての希望により、侍女やお針子たちが話す……意見を述べることを許されております。

 お針子たちからすれば、ミア様と会話ができるチャンスだったり、自分の意見がとおる場合があったりしますので……ミア様のドレスを制作したがるお針子は多いのだそうです。


「こちらの赤みがかった黒などいかがですか?」

「こちらの光沢のある紅色などはミアお嬢様の瞳に似ております」


 ミア様はいくつか勧められた布の中で、肌触りの良い紅色の布を選びました。

 とても肌触りがよく着心地がいいものになるでしょう。


「これで一着。あとは白い布からも選んでほしいの」

「白ですか?」

「それはね、披露宴のときに着る予定なの」


 先日、ミア様と婚約者であるジルクス殿下は、ドレスについて取り決めをしたようです。

 三親等以内の親族だけで行う結婚式では、従来どおりに髪や瞳の色のドレスを着ること。

 近隣諸国や貴族を招いて行う披露宴では、純白のドレスを着ること。

 ミア様は二つも着られるなんてステキね! と、とても喜んでおられました。


「あなたの色に染まりますっていう意味を込めて、真っ白なドレスにしようと思っているの」

「まあ、ステキですわ!」

「それならば、真っ白なものがいいでしょう……こちらはどうですか?」

「私もその真っ白なものがいいと思いますわ」


 ミア様がどうして白い色にこだわられているかを聞いた結果、満場一致で白い布は決まりました。


「結婚式用のドレスを二つも作るなんて大変でしょう?」

「いいえ! むしろ私たちはドレスを縫うことを生きがいと思っております!」

「ミアお嬢様の場合、見たこともないような形だったり、レースやフリルがついていたりでとてもやりがいがあります!」

「むしろ、二着も作れるなんて……とても楽しみなんですから~!」


 お針子たちが意気揚々と答えたため、ミア様はとても晴れやかな笑みを浮かべておりました。

 ああ、その笑顔はとてもステキです。

 画家に描かせるべきワンシーンです!


「ああでも、ベールは作られないんでしたっけ?」

「いいえ……侍女たちが作ってくれるの」


 マダムの質問にミア様は嬉しそうな笑みで答えました。

 ええ、そうなのです。

 私たち、侍女がミア様のベールを作るのです!

 デザインも決まっているのです!


「ベールをかぶるのは結婚式とパレードの間だけになるけど、よろしくね」

「「「はい!」」」


 ミア様の言葉に侍女たちは声をそろえて返事をしました。

 もちろん、私……リザベラもミア様のベールの一部を縫わせていただきます。

 楽しみにしていてくださいませ!

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