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07.指輪の制作を依頼しました

 その後、結婚式についての話し合いは順調に進んでいった。


「できるかぎりジルが願っていたことは実現しよう」


 ミアはそう言ってあれこれと提案してくれた。


「しきたりの関係で純白のウェディングドレスは着ることができないと思うの。でも、結婚指輪の交換は儀式とは関係ないから大丈夫なはず」

「マイン兄に確認してみよう」

「うん、お願い~」


 できることとできないことを分けて、再度確認することにした。


 後日、マイン兄に確認したところ、ボクとミアが想定したとおりの返事があった。

 簡単に言えば、結婚指輪の交換は行っても大丈夫だということ。

 それがわかったボクはその日の夜、ベッドの上でミアに念話を送った。

 イヤーカフが熱を持ち、ミアと念話がつながったことがわかる。


【ミア、今いいかな? 相談したいことがあるんだけど……】


 眠る前のこの時間に毎日、念話を送っているんだけど、ときどき眠る準備ができていない場合があるので、確認する。


【うん、いいよ~。相談って?】

【マイン兄に確認したら、結婚指輪の交換は問題ないって】

【そうなんだ~……やったね~】


 なんだかミアの声がゆっくり聞こえる。きっと眠いのを堪えて念話しているのかもしれない。


【どんな形がいいとか、宝石をつけたいとか希望ある?】

【特にないよ~……ジルにお任せする~……】


 それが一番難しいんですよー! っていう言葉をグッと飲み込んだ。


【本当にないの?】

【うん。ジルが選ぶものにまちがいは~……ないから~……】


 という言葉を最後に会話が無言になり……そしてイヤーカフが冷えていった。

 どうやら相当疲れていたらしく、ミアは寝落ちしてしまったようだ。

 まさか、念話中に寝てしまう日がくるとは思わなかった。

 誰もいない部屋でクスリと笑っってしまった。


 ミアの希望は特にないとして……ボクとしてはどうだろう。

 派手なものは好きじゃない。やっぱり、シンプルなほうがいい。生活してても邪魔にならないやつ。

 ぼーっと考えていたら、ふと視界に金色に輝く腕輪が見えた。

 ミアからもらった金色のブレスレット……ヘキサとテトラ、二人と契約するときに使ったものだ。


「これって、たしか身に着けたときに、手首にぴったりの大きさに変わったんだよなぁ……この金色のブレスレットはつけたときから神聖な感じがしてたんだよねぇ。これが指輪だったら?」


 独り言をつぶやきながら、思い返したところで閃いた。

 

「とりあえず、これを作った人物を探すところからだな」


 ボクはベッドの縁に座りなおしたあと、床に向けて魔法を使った。


「……地図(マッピング)……検索(サーチ)!」


 一メートルくらいの大きさの王都の地図を描いたあと、目的の人物を捜す。

 この金環を作った人物は……王都の南側、平民街に住んでいる人物のようだ。

 場所を把握したあと、床に描いた地図を消した。


 翌日、ボクは商人の息子風の服装で、その人物のもとへ向かった。

 平民街の金物屋が並んでいる一角に目的の人物は住んでいるらしい。

 そこを目指して歩いているだけであちこちの店番に声を掛けられる。

 

「らっしゃい……いいものあるよう!」

「よかったら、見てってねえ!」


 通りを歩くだけで店番に声を掛けられる。

 見た目が商人の息子風なだけあって、取引相手になるかもと思われているのだろう。

 すべてスルーして、古民家風の金物屋の前で足を止めた。

 この西洋ヨーロッパ風の異世界で古民家風って……転移者か転生者が関係してるとしか思えない!


「すみませ~ん」


 そう一声掛けて店の中に入ると、店の奥に一人のおっさんが座っていた。


「おう、らっしゃい。何か入り用かい?」


 清潔感はあるけどひげもじゃな筋肉ムキムキの白髪交じりの黒髪のおっさん……。

 すぐに鑑定してみると〈職業:鍛冶師〉と表示されている。

 あれ? 空白欄がないってことは、転移者でも転生者でもない⁉


「えっと、これを作った人物はここにいますか?」


 ボクはそう言って左手首の金色のブレスレットを見せた。


「おう? それは俺が作ったやつじゃねぇか。へぇ~?」


 さっきまでの営業スマイルから一転して、見定めるような表情になった。

 上から下までじっと眺めたあと、うんうん頷きながら言った。


「外せっつっても俺にゃあ、外せねぇぞ。なんせ、呪いの腕輪だからな!」

「若い子をからかうんじゃないよ!」


 おっさんがカッカッカと変な笑い声をあげていると、店の奥からふくよかな女性が出てきた。

 肝っ玉母ちゃんっていう風体の青い髪の女性は、おっさんの頭をバシンと叩いていた。

 あまりの出来事に驚いていると、女性はにっこりと笑いながら言った。


「外すのはあたしができるから、大丈夫だよ。それで何を作ってほしいんだい?」

「指輪を作ってほしいんです」

「ほ~?」


 女性を鑑定したところ、〈職業:デザイナー、・・・〉と後半部分が空白になっていた。

 前世の地球上に青い髪の人間はいなかったはずなので、この女性は転生者なのだろう。

 それをここで明かす必要はないと思って、そこには触れずにどういったものがほしいのかを伝えた。


「結婚式で指輪の交換したいだなんて……懐かしいこと(・・・・・・)するもんだね」


 女性はそう言うと紙にデザインを描きだした。

 いくつかのデザインの中からこれ! と思うものを選ぶと、叩かれて少し拗ねていたおっさんがちらりとデザインを見て呟いた。


「材料がそろったら作ってやるよ」

「そうね。その金環と同じような外れないものだったら、別の材料がいるから……遅くて半年かかるかもしれないけど、いいかい?」

「はい、お願いします」


 ボクは前金を渡して、結婚指輪の制作を頼んだ。

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