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02.そこは聞こえないふりをすべきです

 父とマイン兄に言われて、結婚を意識したからだろう……前世の夢を見た。

 ウェディングドレスを着たボクは鏡の前で嬉しそうに微笑んで、そばにいた男性に声を掛ける。


『どうかな?』

『すごく似合っているよ。それにする?』

『うーん、さっき着ていたドレスも捨てがたいんだよね』

『どっちも似合っていたし、好きなほうを選びなよ。一生に一度なんだしさ』

『そうだね……もう少し悩む~』


 前世のボクは女性で、結婚式場やウェディングドレスの手配を済ませ、いつ婚姻届を提出しようか? なんて話し合っていた時期に亡くなった。……そしてこの世界に男として、第二王子として生まれ変わった。

 今はもう、身も心も男になっているから、男性を好きになるようなことはない。

 だから、夢の中の男性にも惹かれることはなかったんだけど……ウェディングドレスには目がいった。

 真っ白なウェディングドレスをミアが着たらすごく似合うだろうなぁ。

 想像しだしたら止まらなくなった。

 父とマイン兄に言われたのがきっかけだけど、ミアにプロポーズしよう。

 了承が得られたら、結婚式について話し合いたいなぁ。

 

***


 数日後、ボクはミアと一緒に孤児院に来ていた。

 ミアが王立学院の学生だったころから通っている孤児院なので、ボクたちが訪れると子どもたちはすぐに近寄ってくる。


「わーい! お兄ちゃんとお姉ちゃんだー!」

「もう来ないかと思ってたんだよー!」

「ちょっと遠くへ行ってて、帰ってきたばかりなんだ」

「はい、みんなにおみやげだよ」


 ボクは子どもたちに長くいなかった理由をぼかして伝え、ミアはおみやげのお菓子を配った。

 その後、いつものように遊んだり歌ったり、子どもたちや先生たちの怪我を治癒したりと過ごした。


 その帰り道、ついこの間まで通っていたティールームへと寄り道した。

 事前にマスターに話してあって、本日は貸し切りになっている。

 いつもの紅茶といつものスイーツ……今日はミルクレープ。

 それから、いつもの窓際の席。

 すべていつもの場所でミアと向かい合わせに座る。


「ここに来るのもひさしぶりだね」

「そうだね」


 ボクはミアに話しかけられても、言葉少なにしか返事できなかった。

 緊張しているんだってことが、自分でもわかる。

 大きく息を吸って吐く。何度か繰り返したあと、ボクは意を決してミアに話しかけた。


「ミア、聞いてほしいことがあるんだ」

「うん?」


 ミアはカップをテーブルに置き、姿勢を正した。

 ほんのり頰が赤くなっている……もしかしたら、これからボクが何を話すのかわかっているのかもしれない。


「ミアと出会って約五年……付き合って三年くらいかな……いろんなことがあったね」

「うん」

「これからもいろんなことがあると思うんだけど……その……」


 ボクはそこで言葉を区切って、ミアの目をじっと見つめながら言った。


「これからもずっと一緒にいてほしい。結婚してください」


 ノーという返事はない……はずだけど、それでも緊張で手が汗ばんでくるのがわかる。

 ミアはにっこりと微笑みながら強く頷いて……そして言った。


「私の答えはここで、三年前に言ったのと同じだよ。『ずっとそばにいてね。離さないでね』」

「よ、よかった~!」


 その場でテーブルに突っ伏すと、カウンターのほうから拍手が聞こえてきた。

 マスターはにこにこしながら、ウェイトレスは若干涙ぐみながら拍手していた。

 途端に顔が熱くなるのがわかる。

 そこは聞こえないふりすべきでしょ⁉

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