04.そろそろ教えてもいいでしょう
パマグラニッド帝国へ向かうメンバーは、ロックハンド領へ行ったとき一緒だったメンバー(ボクとミアとリザベラ、御者と護衛二人)にヘキサとテトラを足して八人。それからオール。あと、王族専用護衛の影が何人(?)……人かどうかも怪しいけど……がくっついているらしい。
国王の勅命で帝国へ向かうため、大型の王家の馬車を使うことになった。
セリーヌ王国の紋章が描かれた大型の馬車に乗り込み、すぐに出発となった。
「主様ー? どうして、あのお姫様を乗せなかったのー?」
馬車が走りだしてしばらくして、テトラが不思議そうな顔をしつつそう聞いてきた。
リザベラも不思議に思っていたのだろう。テトラの言葉に小さく頷いている。
「それは王都から出たら、瞬間移動のスキルを使ってロックハンド領まで移動しようと思っているから」
「それは、事前の打ち合わせで聞いたから知ってるよー」
「ああ、そうか。天使族だとどうかわからないけど、人の世界ではアイテムバッグや瞬間移動のスキルが使えると転生者だってバレそうだから……」
「「「え?」」」
あれ? テトラとヘキサには言ってなかったっけ? もう一人の声って、リザベラか。
「ジルクス様は、あの『岩も軽々と手で砕く』という『転生者』でございますか?」
「いやいや、『アンコ』を天使族にもたらした『転生者』でしょ!」
「……だから、アイテムバッグ……」
三者三様の返事があった。
ヘキサの言う『岩も軽々と手で砕く』って格闘漫画について話した転生者がいたのかな……。
テトラのいう『アンコ』って餡子のことかな? それとも暗刻? いや、甘いもの好きだし、餡子のはず。
……餡子あったら、和菓子作れるんじゃないか? 今度詳しく聞かないと!
リザベラはアイテムバッグが使えることを思い出して納得したようだ。
「天使界でどういう風に伝えられているかは知らないけど、ボクはこことは別の世界の記憶を持って生まれ変わった『転生者』だよ」
ボクがはっきりそう伝えると三人はそれぞれ驚いた表情、喜んだ表情、納得の表情のままうんうんと頷いた。
「人の世界では、アイテムバッグが使えるのは『転生者』と『転移者』くらいなんだ。それから、瞬間移動のスキルはヘキサとテトラを鑑定したときに、ステータスに表示されていたから、複製させてもらった」
「複製でございますか?」
「うん、『転生者』は鑑定したときに表示されているスキルを複製して自分のものにできるんだ」
スキルだけじゃなくて、魔法……魔術や治癒術、生活魔法すべても見るだけで覚えることが可能だ。
ボクの言葉に三人とも目を見開いて驚いていた。
ヘキサが驚くのは珍しいかもしれない。
「転生者特典の話は置いといて……。ボクたちは早急にパマグラニッド帝国へ向かわなくてはいけないから、手段を選ばずに行こうと思ってね。でも、ソフィア姫たちに『転生者』であることは秘密にしたいから置いていったんだ。わかった?」
リザベラは素直に頷いてくれたけど、テトラはまだ理解できないらしい。
「どうして、『転生者』であることを秘密にするのー? 主様は強いんだよー! って言っちゃえばいいのにー?」
「テトラ……人というものは強いと迫害の対象になる場合もある。我々、天使族とは違う」
迫害ねぇ……。
『転移者』ってだけでバートは口を聞いてもらえなくなってたし、ないわけじゃないけど、今回は少し違う。
「そのうち『転生者』だってことは言うけど、今じゃないってこと。切り札にしたいんだ」
「切り札……で、ございますね。……それはとても良い響きでございます。……フフフ」
にっこりと笑いながらそう言うとヘキサが目をキラキラさせながら薄く微笑んだ。
ヘキサのその笑い方は何か企んでいそうで、すごく怖い……。
「そういうわけだから、ボクが切り札として使うまでは黙っていてね」
そこでようやく、テトラが頷いた。
ヘキサはなんかどこか妄想の世界へいってるみたいで反応がないけど、まぁいいか。
……そういえば、ミアの反応がないけど、どうしたんだろう?
馬車の一番後ろの座席にミアは座っているはずなんだけど、反応がない。
この馬車は二人掛けの席が三列になっていて、中央の列の左右に扉がある。
護衛を兼ねているテトラとヘキサが中央がの列、前の列にボクとオール、後ろの列にミアとリザベラが座っている。
「ミア?」
ボクがそう、声を掛けるとリザベラが口元に人差し指を立てながら言った。
「お静かにお願いします」
……この状況で眠ってるの!?
もしかして、出発が楽しみで眠れなかったとかそういうことかな?
それとも治癒がうまくいくか心配でとか?
なんにせよ眠っているのなら、王都の外へ出るまで寝かせておいてあげよう。
ボクはリザベラに向かって大きく頷くと話すのを止めた。
サブタイトルは後で変更するかもです