03.はっきり言って邪魔です
短いです
翌朝、準備が整ったので国王へ出発の挨拶をしに行った。
玉座の間で儀礼的な挨拶を交わしたあと、にっこりと微笑めば、父はなんだか複雑そうな表情をしていた。
父が何を考えているかはわからない。
セリーヌ王国が不利になるようなことはしないから、心配しなくても大丈夫なんだけどなぁ。
そんなことを思いつつ、馬車乗り場まで向かう途中で、面倒くさい出来事が起こった。
「ジルクス殿下!」
名前を呼ばれて振り返るとそこにはソフィア姫が息を切らせながら立っていた。
走ることなんてあるんだねぇ。
「どうしましたか? ソフィア姫も準備ができ次第出発なのでは?」
「……どうか、あたくしもジルクス殿下と一緒に向かわせてくださいませ!」
えええ……こんな面倒な人を一緒に連れて行くなんてイヤすぎる!
王家の大型の馬車を用意しているとはいえ、ソフィア姫を乗せたら定員オーバーだ。
馬車を別に用意してついてくるとなっても問題がある。
ボクたち一行は、荷物をすべてアイテムバッグに入れて、馬たちに治癒術を施しながら進んでいく予定なのだ。
アイテムバッグが使えるっていうことを見られるだけでも大問題だし、今回は瞬間移動のスキルも使う予定だから……。
知られるとさらに面倒くさくなるの間違いなしなわけで……。
「ソフィア姫は宰相と一緒の馬車で向かってください」
「いいえ、お母様の一大事ですもの。あたくしも早く帝国へ戻りたいのです!」
病床の母を置いて、家出してセリーヌ王国に来ている人がいまさら何を言ってるんだか……。
ボクはイラッとするのを堪えつつ答える。
「こちらは手段を選ばずに帝国へ向かいます。はっきり言ってソフィア姫には耐えられません」
「ミア様もいらっしゃるんでしょう? あたくしでも耐えられるはずです! どうか、あたくしも一緒に連れて行ってくださいませ!」
ソフィア姫はそういうとボクの腕を両手で掴んできた。
真剣な表情なのはわかるけど、時と場合を選ぼうよ……。
こんなことをやっているとどんどん時間が過ぎていくんだよ。
命が掛かっているから、手段を選ばずに向かうって言っているのに、理解できないんだろうか。
こうやって出発の邪魔をすることで、間に合わなかったらどうするつもりなんだろうか。
ボクは面倒くさいのとイライラが限界に来たのとで、ソフィア姫に笑顔を向けるのを止めた。
無表情のまま冷え切った瞳で睨みつけると、ソフィア姫は怯んだようでグッと言葉を飲み込んだ。
「一刻を争うって理解できないの?」
イライラを隠さずにそう言って、腕を思いっきり振り払った。
ソフィア姫は振り払われるとは思っていなかったのか、驚きの表情に変わり何度か口をパクパクと動かしたあと、何も言えずに下を向いた。
「ソフィア姫は宰相と一緒の馬車で向かってください。ボクたち治癒術師の一行は早急にパマグラニッド帝国へと向かいますので」
一気にそう伝えた後、体を反転させて待たせている馬車に向かって歩き出した。
ソフィア姫が追いかけてくる気配はなかった。
こんなやりとりがあったせいでミアとお互いに鑑定し合うことができなかったのが悔やまれる。
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