02.弱点をつつきました
瞬間移動のスキルについて、詳しく理解できたので一人で頷いていたら、テトラが不思議そうな顔をしながら言った。
「えっと、主様ー? 今回呼び出したのって私たちに質問するためー?」
そういえば、きちんと説明していなかった。
「ああ、いやそれだけじゃないよ。実は、明日から帝国に向かうことになったから……」
「戦争でございますね……フフフ」
「やったー! 暴れるよー!」
「違うから! 帝国の皇妃が病気だから、治癒術師としていくんだよ。それで、最速で行く方法を考えていたんだ」
「違うのですか……」
「えええ……暴れられないの……」
ヘキサとテトラは戦闘種族である天使族なため、戦うことが大好きだ。
訓練の一環として、騎士団で模擬戦を行うことがあるんだけど、二人はいつも嬉しそうな表情をしながら参加する。
苦戦を強いられようが圧勝しようがいつも嬉々とした表情で戦っているため、騎士団の下っ端である若い連中からは恐れられ、上層部からはとても気に入られている。
この二人は戦う以外に大好きなものがある。
弱点と言ってもいい。
「戦うことばかり言ってるけど、帝国にだってスイーツはあるんだよ? どんなものがあるんだろうね?」
「スイーツ……フフフ」
「甘いもの食べたーい!」
そう、スイーツが大好きなのだ。
もしかしたら、戦うことよりもスイーツを食べるほうが好きかもしれない。
天使族は全員スイーツが好きなんだろうか? それともヘキサとテトラだけなんだろうか。
とりあえず、帝国と戦いたいっていう気持ちよりも見たことのないスイーツが食べられるってことをちらつかせて、大人しくしてもらう。
「今回はヘキサとテトラにも一緒に行動してもらうから、スイーツ食べられるかもね」
「本当でございますか? さすが、ジルクス様……フフフ」
「主様に召喚されてよかったー!」
その後もヘキサとテトラとどんなスイーツが食べたいかっていう話で盛り上がっていたら、ミアから念話が届いた。
【ジル~、前と同じ護衛の人たちが来てくれるって】
【よかった! それじゃ、ミアにもボクの案を説明するね】
【案?】
【最速で帝国へ向かう方法なんだけど……】
ボクはミアにも、瞬間移動のスキルを使ってロックハンド領まで行くことを伝えた。
【私も覚えたいな、瞬間移動のスキル】
そういえば、今度教えるねとは言ったきりだった。
【じゃ、明日出発前にお互いを鑑定し合おうか】
【それも久しぶりだね!】
ボクとミアは転生者なため、最上級の鑑定スキルと最上級の隠蔽スキルを保有している。
ボクが普通の人を鑑定した場合、ステータスをすべて知ることができる。隠蔽しているものもグレーで表示されるため、何を隠そうとしているのかまでわかる。
でも、ボクがミアを鑑定した場合、ステータスはミアが見せてもいいと思っている部分しかわからない。
つまり、最上級の鑑定スキルより最上級の隠蔽スキルのほうが強いと言った感じ。
もう一つ転生者特典として、覚えたいスキルや魔法を即座に複製して自分のものにすることが可能なんだ。
お互いに鑑定し合おうかっていうのはつまり、隠蔽スキルを使わずにすべてを見せ合って、お互いが新しく覚えたスキルをお互いに複製して覚えようってことにつながる。
【私、新しく裁縫や料理のスキルを覚えたけど、ジルも覚える?】
【覚えるよ。何でもできるほうがいいし……でも、どこで覚えたの?】
【それはね……】
結局、ミアとは晩餐の時間になるまでずっと話をしていた。
二日連続投稿とか、ひさしぶりすぎるっ