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05.瞬間移動は便利です

 謁見の間で話を聞いた後、ボクはソフィア姫から逃げるように自室へと戻った。

 あのまま残っていたら、いろいろと理由をつけられて付きまとわれたり引きずり回されるような気がしてならないからだ。


 結局、帝国からの迎えが来るまでの間、ソフィア姫は王宮の一室で過ごすことになった。

 他国の姫君なわけだし、賓客扱いなのは間違いない。

 ただ、アポなしで突然来たわけで部屋の準備はできていない。これから急ピッチで準備する侍女たちのことを思うといたたまれなくなる。


 ぼすんっという音とともにベッドに身を投げて、さっきあったことを考える。

 戦争を起こすはずだった帝国から単身で乗り込んできた姫の意図は本当にボクに対する求婚だけなんだろうか。それ以外に別の意図はないのだろうか……。

 いろいろと考えてみたけど……とりあえず、ミアに連絡したほうがいいだろう。


 ボクは耳につけているイヤーカフを通してミアへ念波を送る。魔石が熱を持ち、ミアとつながったとわかる。


【ミア、今って話しても大丈夫?】

【こんな昼間に念波って珍しいね! 大丈夫だよ】


 直接、頭の中に響いてくるミアの声にほっとした。


【あのね、伝えておかなくちゃいけないことがあって……】

【うん?】

【急に帝国のソフィア姫がきた】

【え? 戦争するんじゃなかったの?】

【戦争になるんじゃないかと思っていたんだけど、なぜか姫が従者数名と来たんだ】


 戦争するかも、なんてミアに伝えた覚えはないんだけど、ロックハンド領で話を聞いていたから、そう思っていたのかもしれない。

 そう伝えるとミアはしばらく無言になった。


【どうしたの?】

【そのお姫様って、カーマイン殿下の結婚披露宴の時にジルとダンスしてた人?】

【うん、そうだよ】

【どうして、ソフィア姫はセリーヌ王国へ来たんだろう?】


 今度はボクが無言になる番だった。

 ボクを婿にもらうためにやってきたなんてミアに伝えたら、どうなるんだろうか。

 マイン兄の結婚披露宴でダンスをした時だって嫉妬していたのに……。

 かといって、伝えないでいて後でバレたら……それはそれで拗ねるんじゃないかなぁ。

 拗ねた姿も可愛いかもしれないけど、今はきちんと伝えるべきだろう。


【えーっと、とても言いづらい話なんだけど……ボクに求婚しにきたらしいんだ】

【えええええ!?】


 頭の中に直接響く念波だけど、ものすごく驚いたからなのか、ミアの声が最大音量で響き渡って少しだけくらっとした。


【わ、私とジルは婚約中だよね? 婚約者がいる相手に求婚するとかおかしくない!? 政略結婚的な何かなの? もしかして、帝国の権力を使ってジルを手に入れようっていうの!? そんなの許さないんだから!!】

【ミア、待って! そっちに行くから!】


 ボクはそう言うと以前に覚えた瞬間移動のスキルを発動して、ミアの部屋へと直接飛んだ。

 ミアはベッドの端に座り拳を太ももの上に置いて、ムッとした表情をしていたけど、ボクの姿を見た途端、口をぽかんと開けた。


「え? ジル!?」

「一度、目にした場所へ瞬間移動できるスキルをヘキサとテトラから覚えたんだ」


 ミアの隣に座りそっと腰を掴むと、ミアは躊躇しつつもボクの肩に頭をこてんと置いた。


「そうだったんだー……って今はそんなことはどうでもいいの!」


 甘えるように頭を置いていたのも一瞬だけで、ばっと立ち上がってボクの方に向き直った。その顔は少し赤く口を尖らせているため、怒っているのだとわかる。

 瞬間移動のスキルってすごいと思うんだけど、どうでもいいのか……。


「ジルは私と婚約破棄して、ソフィア姫のお婿さんになるの!?」


 ミアの怒りゲージはどんどん上がっているようでボクの両肩を掴みつつ聞いてきた。


「ならないよ」

「ジルがならないって言っても、帝国の権力を使ってどうこうしてくるんじゃないの!?」

「それもないから。ソフィア姫とは別口で帝国から書状を持った使者が来て……」

「私とジルの仲を裂きにきたの!? こうなったら、魔法学院にある古文書の最上級魔法を覚えて……」

「ミアさーん、落ち着いてくださーい!」

「落ち着いていられるわけないでしょー!! ジルのお嫁さんになるのは私なんだから!」


 ミアはそういうと急に黙った。

 よく見ると顔を真っ赤にしているけど、怒っているというよりも照れた表情になっている。

 もしかして、言ってて恥ずかしくなってきたんじゃないかな……。やっぱりミアは、可愛いなぁ。


「使者が持ってきた書状によると、帝国としてはボクを婿にもらうつもりはないってさ」

「……え?」

「ソフィア姫単独行動だから、帝国の権力でどうこうっていうのないよ。そもそもボクはミア以外をお嫁さんにするつもりはないよ」


 にっこりと微笑んでそう言い、ボクの両肩に乗っているミアの手首を掴んで引っ張った。急に引っ張られたことでバランスを崩したミアを、ぎゅっと抱きしめてそのままベッドに倒れこんだ。まるでミアに押し倒されているような体勢だ。


「……邪魔する者が現れたら徹底的に潰すよ」


 そうだよ、ボクとミアとの間に割って入ろうとするやつは徹底的に潰さないとねぇ。

1ヶ月以上お待たせしてごめんなさい

書籍化の作業だけでなく、スランプというか筆が進まない状況が続いていました

なんとかよくなってきたので投稿再開します

今後も楽しんでいただけるものを書けたらいいなぁと思ってます

よろしくお願いします!<(_ _)>

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