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03.どうやって潰すか考え中です

 ボクとミアとの仲を裂こうとするアホ男をどうやって潰そうかと考えていた時だった。

 ノックの音とともに重臣のうちの一人が応接室へ入ってきた。


「お話中のところ、失礼いたします。謁見の間で陛下がお待ちです」


 ボクはちらりとソフィア姫とバートたちを見ると少し驚いた顔をしていた。

 父が直接ここに来るとでも思っていたのだろうか。そうだとしたら舐めすぎた。



 全員で謁見の間へ向かうと、すでに父がムッとした表情を浮かべて退屈そうな態度で玉座に座り、その横に無表情のマイン兄が立っていた。

 

「帝国の姫君がたいした供もつけずに来るとはな」


 父がそう話すとソフィア姫はその場で淑女の礼を取り、話し始めた。


「アシェット陛下にお会いできてとても嬉しく思っております。この度、セリーヌ王国へ参りましたのはジルクス殿下にどうしてもお願いしたいことがございまして……」


 ソフィア姫は応接室の時と同じようにそこで区切ると、ニコニコとした笑顔を浮かべながらちらりとボクの顔を見た。

 背中がぞわぞわして気持ち悪い。


「あたくしがパマグラニッド帝国の唯一の後継者であるのはご存知でしょう?」

「ああ、知っている」

「あたくしもそろそろ伴侶が必要な年頃になりまして……帝国内でいろいろな方が候補に上がりましたわ。でもあたくし、前からジルクス殿下を伴侶にしたいと願っていましたの」


 今度はちらりどころかじっとボクの顔を見つめてきた。その顔はニコニコしているんだけど、なんだか粘着質な感じがするというか……ストーカーにでもなりそうというか……。


「もういい、わかった」


 もっと話したそうにしていたソフィア姫のことを父が急に止めた。父の顔を見ても相変わらずムッとした表情と退屈そうに片肘をついている。


「実は先ほど、帝国から正式な使者(・・・・・)が書状を持ってきた」


 父がそう言うと重臣のほうを向き、軽くうなずいた。

 うなずかれた重臣は手元にあった書状を開き、説明を始めた。


 今回、パマグラニッド帝国のソフィア姫は単独でセリーヌ王国へ向かったのだが、帝国としては意図したものではないこと。ソフィア姫はセリーヌ王国第二王子であるボクを婿として欲しがるが、帝国としては求めていないこと。


「書状の通り、帝国としてはジルクスをソフィア姫の伴侶にということは考えていないようだ。それにだ、ジルクスにはすでに婚約者がいる。他国の王族の婚約に口を出すというのはどういうつもりだ」


 父が少し怒気を含んだ声でそう言った。じっと見つめてみれば、状態:激怒になっている。横にいるマイン兄まで、状態:激怒になってるよ! 退屈そうにしてたんじゃなくて、怒ってるのを抑えていたのか! マイン兄は怒りすぎて無表情になってるってことか!


「あ、あたくしは帝国唯一の後継者ですわ! それぐらい許されるでしょう?」


 ソフィア姫は顔を真っ赤にしてそう言った。さきほどまでの淑女っぽい雰囲気が一変してただのわがままな姫にしか見えない。


 もしボクが転生者じゃなかったら、帝国に婿に行かせても王国的には問題なかったんだと思う。

 だけど、ボクが転生者だったから、帝国に婿に行かせるわけにはいかないのだろう。他国へ転生者を渡すなんて知識を失うだけじゃなくて、戦力も持っていかれるってことだもんねぇ。

 それがあるから、父とマイン兄はとても怒っているんだろう。


「許されるわけがない」

「あたくしの願いは未来の帝国の願いでもありますわ!」

「書状には迎えを寄越すと書いてあった。それまでは王宮で大人しくしてもらう」

「滞在中にジルクス殿下を口説いて見せますわ!」


 え、なにそれすごく嫌なんだけど! というかソフィア姫ってどれだけ前向き思考なんだ……。

 帝国がどうしてボクを婿にしないと言っているのか、ソフィア姫は考えているんだろうか。

 ボクとソフィア姫の間に子どもができたら、王国が帝国を乗っ取ることも可能なんだけどなぁ……。

 まぁ、いくらソフィア姫に言い寄られても、ボクはミア一筋だからねぇ。

 応接室でのバートの言葉もあるし、帝国に対しては今後の対応を考えないといけないねぇ。

父とマイン兄が怒っている本当の理由は、純粋にジルクスが家族として大事だから。

なんてことにジルクスは気付かないんだろうなぁ……。

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