01.まさかの姫来襲です!?
5章開始〜
書籍版の改稿直後なので、少し違和感あったらごめんなさい
ロックハンド領から戻ってしばらくしてからのことなんだけど、珍事件が起こった。
それは、王宮へと続く門前で始まった。
「あたくしを誰だと思っていますの! 今すぐにジルクス殿下をお呼びになって!」
近衛騎士たちに頼まれて、門前近くに向かうとそんな声が響いた。
どこかで聞いた声だと思いつつも近づいてみれば、豪華な服を着た若干ケバイ女性が近衛騎士にキャンキャンと文句を言っている。
あれって確か……。
「許可証をお持ちでない方は、たとえどのような身分であろうと通すわけにはいかないんです!」
「あたくしを誰だと思っているんですの! パマグラニッド帝国の……」
「ソフィア姫ですか?」
ソフィア姫の言葉に被せるように名前を呼ぶとすぐにボクの方を向き、満面の笑みを浮かべて突進してきた。
え? 突進!?
「ジルクス殿下! お会いしたかったですわ!!」
気がついたらボクは、ソフィア姫にぎゅっと抱きつかれていた。
ここは王宮へと続く門前……そんな場所で抱きしめられるとか、どんな罰ゲームなの!?
はっきり言って、紳士淑女が公衆の面前で抱き合うなんて、前世でも今生でもよろしくない。
「ソ、ソフィア姫! は、離れてください!!」
「あぁ! 申し訳ございませんっ……ジルクス殿下にお会いできたのが嬉しくて……つい……」
ソフィア姫はそんなことを言いつつもなかなか離れようとしてくれなかったので、ベリっという音がしそうな勢いで引き剥がした。
名残惜しそうな少し淋しそうな表情を浮かべて、ソフィア姫にじっと見つめられていると背筋がぞわっとしだした。
この感じは……そうだ、媚を売るってやつだ!
普通の男性だったら綺麗な女性に抱きつかれれば、多少なりともデレデレした態度になるし、甘い態度を見せられれば言うこと聞いてあげたいなぁ……なんてぐらっとくるやつ。
ソフィア姫の場合、ぐらっとくるだろうというのを見越して行動をしている。
鈍感系主人公だったら、こんなことされても気付かないでニコニコしていられたんだろうけど、あいにくボクは女性の気持ちもわかる。絶対腹黒いこと考えてる顔だろう、それ!
「お久しぶりですね、ソフィア姫。連絡もなしにいらっしゃったようですが、今日はどういったご用件でしょうか?」
ボクは苦笑いをすぐに隠してにっこりと微笑んで見せた。ソフィア姫は少しだけ照れた表情でニコニコとしている。
っていうかね、なんでこの人ここにいるんだ?
パマグラニッド帝国のソフィア姫だよ?
少し前まで、戦争を吹っかけようとしてるんじゃないかって噂になった国のお姫様だよ?
……もし今、戦争が始まったら捕虜にされるかもしれないんだよ!?
「あたくし、どうしてもジルクス殿下にお願いしたいことがございまして……」
ソフィア姫は上目遣いでボクの顔を覗き込んできた後、周囲をきょろきょろと見回した。
あ! 前にダンスしたときよりボクのほうが背が伸びてるみたい! ちょっと嬉しい!
って、そうじゃなかった。
周囲を見回すということは、ここでは話しづらいということだろう。
「こんな場所でお伺いするとは失礼いたしました。すぐに応接室へ案内しますね」
「ご配慮感謝いたしますわ」
そうソフィア姫が言うと、ニコニコとした表情のまま左手を差し出してきた。
つまり、応接室までエスコートしろということか!
帝国のお姫様だし、それ相応の対応をしないといけないってわかるけど、嫌な予感しかしない!
かといって無視して、両国の間にひびが! って問題視されるのも困る。
ボクは諦めて、ソフィア姫の手を取り応接室までエスコートした……。
発売予定日が公式に発表でました!
11月予定です(*⁰▿⁰*)




