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幻想と現実のパンドラ 作者:わい/三嶋 与夢

第六章

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戦う合コン

 ゲーム内の合コンとはどういう物だろうか?

 その内容はゲームによっても大きく違う事だろう。

 VRは体感型であり、画面越しのオンラインゲームとはまた違った内容になる。

 画面越しに相手を見るのと、実際に相手を見ているのとでは対応も変わってくる。

 さて、純潔の世界が解放され、結婚システムが見直されたことでパンドラ内には合コンやらお見合いが盛んに行われるようになった。

 相手に求めるのは種族や職業ではなく、どれだけのプレイ期間――ログイン時間があるのか。また、どれだけボスの討伐や、条件を満たしているのか、という事だ。

 ギルドに加入している。

 少数でボスを倒す、大規模討伐を行っている。

 攻略戦に参加した、イベントに参加した……様々な項目が用意され、条件を満たしていると結婚した相手に大きなメリットを与えられた。

 それはつまり、ゲーム内での努力を評価するシステムに切り替わったことを意味している。

「皆様お待たせしました! これより、第一回の合コン戦闘を行おうと思います!」

 集まったプレイヤーたちの数は非常に多く、それだけゲーム内の結婚に対して興味があるのが理解できる。

 パートナーを得るだけでメリットがあるのだから、興味のないプレイヤーも少ないだろう。

 真剣に攻略を考えているプレイヤーもそうだが、中堅勢やらエンジョイ勢もそれぞれ結婚に興味を示している。

 スーツ姿に髪をリーゼントで整えた司会者が、マイクを持ってプレイヤーたちの前に立っている。

 用意されたステージの上で盛り上げようと声を張り上げる中で、ポン助は周囲を見渡すのだった。

(う~ん、人が多いな)

 プレイヤーたちの多くは司会者を見ていた。

 美女、ネタキャラ、作り込まれたアバターに、サンプルデータを少し触っただけのアバターなどが集まっている。

 普段、メンバーに囲まれているポン助はいつもと違う集まりにワクワクしていた。

(というか、合コンで戦闘とかどうなんだろう?)

 ゲーム内で相手を見つけるため、モンスターを倒して相手とコミュニケーションを取るというのが目的らしい。

 ポン助はもっと合コンらしい物を期待していただけに、このイベントには驚いていた。

「まずはランダムで決まったパーティーを組んで貰います。番号札をこれから表示するので、指名されたらステージに上がってくださいね」

 ランダムで決められる四人組パーティー。

 会場から目的地を目指し、到着するとそこでまたパーティーの入れ替えを行う。

 最終的に会場に戻ってくる間に、色々なプレイヤーと交流を通して相手を知ろうというのだ。

(でも考えようによってはありなのかな? 戦闘とかリアルなその人の素も出るし)

 体感型のゲームであるパンドラは、どうしてもプレイヤーの性格が強く出てしまう。

 臆病であれば前に出るよりも後方で魔法を放つ、サポートするというように、だ。

 協力的でなければ、仲間を無視して前に出るプレイヤーも多い。

 多少の協調性がない相手は困る。

 それを戦闘で見極めるという意味では、この合コンにも意味があった。

「それでは一組目!」

 アンティークのような電子掲示板に番号が次々に表示されていく。

 ポン助は自分の番号札を見ながら、表示されるのを待つのだった。





 会場から出発したポン助たち四人組は、なんとも驚きの面子になった。

 ――何しろ、全員が男だったのだ。

「……これ、合コンとして正しいのかな?」

 ポン助の言葉に、同じような疑問を持っていたプレイヤーたちも愚痴をこぼす。

「だよな。まだ中身が男でアバターが女性なら納得もするけどさ」

 アバターが男性。

 中身も男性という四人組。

 合コンの意味がない。

「グダグダしやがって。イベントを企画した奴ら、どうせ今回は試験のつもりだぜ。次回にもっと頑張ろう、って奴?」

「参加費を払って男と遊べとか笑えないって」

 ランダムで選ぶのは良いが、全員が男という組み合わせはどうにかしろと思う四人だった。

 一人が結婚システムの確認をしながら。

「うおっ! ……男同士でも結婚出来るらしいぞ」

「マジかよ!?」

 調べてみると、アバターの性別を無視して結婚も可能だった。アバターの中には男女の区別がない種族もいる。

 そういった種族への配慮と、現実世界での性別を重視するプレイヤーへの対応のため性別は関係なくなっていた。

 ポン助が片手で顔を覆う。

「……でもこれはちょっと」

 全員が野郎臭い男共だ。

 オークであるポン助を始め、無精髭の歴戦の猛者を思わせるプレイヤー。盗賊の恰好をした男。インテリ風の魔法使い。

 バランスは良さそうだが、全員が男である。

「……早く目的地に行こうぜ」
「そうだよな。出来ればアバターは女性が良いし」
「え? 現実世界で女の方が良くない? アバターはあくまでもアバターだろ」

 会話をしながら歩いているわけだが、そこにモンスターが出現する。

 泥で出来た人型のモンスターが次々に出てくると、全員が武器を持った。

 ポン助も大盾と大剣を取りだし、三人の前に出ると盾役を引き受ける。

 後ろから魔法使いが範囲攻撃を行なうと、盗賊スタイルの男が範囲から離れたモンスターに道具を投げつけていた。

 戦士風の男がそいつに攻撃を仕掛ける。

 ダメージを負ったモンスターたちの前に出たポン助は、攻撃を耐えつつ大剣を強く握りしめていた。

 大剣が強く輝くと、腰を大きく捻った大振りの攻撃を放つ。

 目の前にいたモンスターたちが斬られ、赤い粒子の光に変わっていく。

 後ろで魔法使いが。

「……オークは頼りになるな」

 盗賊もナイフをしまいながら。

「視覚的にも安心だよな。それにしても、最近オークが増えたんだっけ?」

 戦士風の男もモンスターを倒したので戻って来た。

「攻略組にオークを使っている奴らがいるからな。そいつら、ゲームの穴を突いて単独で攻略したらしいぞ。二匹目のドジョウ狙いって奴だ」

 盗賊風の男が首を傾げる。

「二匹目の何?」

 魔法使いの男が説明する。

「成功した奴を真似る、って意味だ。どうせ大型アップデートで修正も入るし、今からオークになってもきついだろうけどな」

 ポン助に視線が集まった。

「ポン助さん、やっぱりオークってきついの? 友人がアバターをオークにしたけど、すぐに心が折れたって言うんだよね」

 ポン助はそんな彼らの質問にどう答えるべきか悩む。

(多分……心が折れた、って言うのはNPCの対応かな? アレ、本当にビックリするよね)

「……大変というか、ステータスとかの伸びは良いですけど、自分でカスタマイズが出来ないし、強化イベントをこなしていく必要があるんですよね」

 戦士風の男が首を横に振った。

「俺は駄目だわ。自分でカスタマイズするのが結構好きだし、それがないのはきつい」

 割と楽しそうに会話をしながら目的地を目指すポン助たちだった。

 目的地に到着後は、フレンド登録も行った。





『どうしてあの子の子供なのに才能が低いのよ!?』
『君と結婚すれば子供も才能があって当然だと思ったのに』
『君には期待していたのに残念だよ』

 一人のプレイヤーが沈んだ表情をしていた。

 彼女の名前は【ナイア】。

 リアルに疲れ、パンドラをプレイするようになったプレイヤーだ。

 彼女自身は優秀で、エリート街道を進んできた人物だった。

 しかし、お見合いで結婚をして子供を産むと、相手の家が求めていた才能を子供が持っていなかったとして冷たい態度を取られるようになった。

 同じエリート。

 家柄も良い家同士の結婚。

 才能を重視する世界では当たり前の結婚方法の一つだ。別に珍しい話ではなく、恋愛よりも子供の将来を考えて結婚を選ぶ女性は少なくない。

 そんなナイアは、合コンに参加する前日に言われた言葉を思い出していた。

 夫の両親は離婚と次の相手を探す事を考え、夫はソレに反対していなかったのだ。

『まったく無駄な時間を』
『でも、女の子ですから使い道はあるわ』
『次の相手はもう少し家柄もしっかりしたところが――』

 夫婦という感覚がない。

 まるで家政婦のような扱い。

 それが嫌になり、逃げ場所を求めた結果がパンドラだった。

 あまりゲームには詳しくないが、それでもプレイをしていればそれなりのプレイヤーになれた。

 ゲームの攻略には興味もないが、合コンに参加したのは憂さ晴らしの一環だ。

 しかし――。

「想像していたのと違う」

 もっと楽しい合コンを予想していたのに、蓋を開けてみれば普段やっている事を知らないプレイヤーとやっているだけだった。

 ナイアには何が面白いのか分からない。

 普段なら別に良いのだ。モンスターを義理の両親や夫だと思って斬りかかるのは最高だった。

 家事や育児の大変さから解放される時間も大切だ。

 現実で家事や育児の放棄をしようものなら大変な事になるし、おまけに合コンに参加したとなれば……夫は嬉々として証拠を用意し、離婚を迫ってくるだろう。

 そんな事を考えていたナイアは気分が沈む。

 パンドラ内では少し凶暴な戦士というイメージを持つ女性が、溜息を吐いていると。

「あ、もしかして五十八番の方ですか?」

 話しかけられた相手を見る。

「はい。五十八番のナイアです」

「良かった。僕はポン助と言います。次の組は一緒ですね」






 ――浮遊島。

 浮んでいる島を購入したギルド“ポン助と愉快な仲間たち”は、早速拠点作りに励んでいた。

 ブレイズたちが移動用のポータルから姿を現すと、待っていた生産職のプレイヤーたちが集めてきた素材を受け取る。

 ブレイズが周囲に雲が浮び、とても雄大な景色が広がっている光景を見つつ生産職のプレイヤーに話しかけた。

「随分と形になってきたね。というか、基礎工事から始めているの?」

 生産職のプレイヤーがアイテムを確認していた。

「あぁ、そうだよ。市販されているギルド拠点とか、大きく改造できないからね。それに、女性陣との話し合いで建物に関しては妥協することになったから」

 話し合いと言うよりも、互いに殺し合った結果の妥協。

 結局、浮島を購入して、女性陣の意見を聞き入れる形で決着がついた。

 そのため、浮島は大規模な改修が行われている。

 ブレイズは感心した。

「それにしても随分と余裕がありますね。しばらくカツカツのイメージだったのに」

 仲間たちも、自分たちの拠点に興味があるのかそちらを見ていた。

 生産職のプレイヤーが「うん、ノルマ達成」などと言いながら。

「ギルマス、基本的にギルドの資金やアイテムに手を出さないからね。というか、うちのギルマスは稼ぐから資金的には余裕だし」

 ポン助は自分が思っているよりもプレイヤー的に上位に位置している。

 プレイヤースキルを磨き、そしてそれを駆使して戦っており普通に強い。

 普段一緒にいるマリエラもアルフィーも、普段は酷いが上位プレイヤーだ。

 そのため、稼ごうと思えば稼げるのだ。

「ポン助君は真面目だからね。あの二人とは大違いだ。ところで……ポン助君は?」

 ブレイズがそう言うと、ポータルに光が発生した。

 そこから出て来たのは、武器を持ってメイン装備に身を固めたマリエラとアルフィーである。

 両手に禍々しいナイフを持ったマリエラ。

 雰囲気もあって、まるで暗殺者……危ない人に見える。

 金銀で装飾されたショットガンを構えているアルフィー。背中には、他にも銃火器を背負っており、一人で戦争でもする恰好だった。

「ソロリはどこだぁぁぁ!」

「野郎の頭をぶち抜いてやる!」

 出現するとすぐに駆けだした二人は、ソロリの名前を叫んで浮島を駆け回った。

 ブレイズが固まる。

「……え? 何あれ?」

 生産職のプレイヤーが髪をかく。

「いや、ほら……ギルマス、今日は合コンイベントに参加しているから、それでぶち切れたんじゃない? ソロリの奴、会場に殴り込みをかけようとした人たちに嘘の情報を教えていたし」

 ソロリは、女性陣にポン助が合コンに参加する情報を裏で流していた。

 ただ、同時に会場に関しても嘘の情報を流していたのだ。

「あぁ、それで二人があの状態なんですか」

 走り回っている二人に、ライターが仕事の邪魔をするなと文句を言っていた。そのままアルフィーに撃たれ、揉め事が大きくなるとプレイヤーたちが集まって喧嘩になっている。

「お前ら、朝から騒ぎやがって! こっちは忙しいんだよ!」

 ライターも怒っているようで、それがブレイズには気になった。

「ライターさん、何かあったんですか?」

「……それがさぁ」

 話をしていると、またしてもポータルが光を放った。

 そこから出現したのは、ガチ装備に身を包んだノインとフランだ。

 二人とも目が血走っていた。

「……ソロリ。あいつどこよ?」

「あの変質者は殺す」

 雰囲気が危ないノインと、怒気を放つフランにブレイズは冷や汗を流した。

 二人が争っているマリエラやアルフィーたちのところに向かうのを、ブレイズは止めることが出来なかった。

 というか、声をかけたくなかった。

 生産職のプレイヤーが笑っている。

「朝からあんな感じで騙された人たちが来るんだよね。それで暴れるから、ライターさんが怒ってさ」

 笑っていた生産職のプレイヤーも、どこか疲れた顔をしていた。

 ブレイズは思った。

(ポン助君……君は一体何をやっているんだ)
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